3者の説明を受け、研究会構成員による質疑応答や討議が行われたが、その矛先のほとんどがドコモに集中した。
口火を切ったのは、研究会座長を務める東京大学名誉教授の斉藤忠夫氏。「SIMロックを解除すればiモードが使えなくなるというが、それは今までそうしたモデルでやってきた結果に過ぎず、理由にならない。そのようなことを言っていたら、ますます日本の端末メーカーの競争力がなくなる」と、ドコモのSIMロック解除消極論を一蹴した。
他の構成員からも、「本来、SIMカードは複数の端末を使い分けることでユーザーがさまざまな端末やサービスを享受できるように作られたものだが、他キャリアに乗り替えにくいようSIMロックをかけるなど諸外国に比べてネガティブな囲い込みが多い」「できないことよりも、できる可能性を探したほうが消費者に支持される」――など、ドコモの主張に対して矛盾を指摘する声が上がった。
これら主張に対して、ドコモの伊東氏は「キャリアとしてSIMロックの解除は可能だが、海外で盛んな50ドル端末が主体になればマーケットを縮小させることになるので、今のモデルでバランスが取れている」とさらに反論した。
次いで構成員から、MVNO協議会の福田氏に対して、「ここが変わればうまくいくという点を具体的に指摘して欲しい」と要請があった。福田氏はそれに応じて、通信料金の設定権が接続事業者側にないこと、そして音声と異なりIPネットワークに関しては携帯キャリアに接続に関する約款がないこと――の2点が大きな問題であると主張した。
「たとえば、MVNOと家電メーカーがモバイル電子ブック端末を出版社と組んで作ったとする。1クリックで書籍1冊を通信費込み300円でダウンロードできるようなにして、家電量販店経由で販売しようにも、今のままではそれができない。現状では、携帯キャリアが持っている通信部分を使わせていただけないからだ。通信料金の部分は、あくまでキャリアが『直接お客様から徴収します』ということになってる」(福田氏)。
福田氏の主張を受けて、座長の斉藤氏は、「ドコモのシステムが相互接続できないというなら、よほど出来損ないのシステムを使っているのだろう」とドコモ側を痛烈に批判。伊東氏はこれを受け、「固定網と携帯電話ではネットワークを作ってきた生い立ちが違い、さらにモバイルは固定以上に技術革新のスピードが早い」とした。この反論を受けて斉藤氏はさらに、「設備投資が必要と言うが、特権を持っているキャリアが他社には絶対にできないことをやっているのか」と糾弾した。
これまでの議論を総じて構成員の埼玉大学大学院教授である長谷川孝明氏は、MVNOについて「黒船はもうそこまで来ている。(ドコモが主張する)『事業者間のWIN-WIN』と、MVNO協議会が主張する『ユーザーも含めたWIN-WIN-WIN』は、まったく違うもの。事業者だけのWIN-WINというのはムラ社会・規制社会の論理」と、ドコモの主張をユーザー視点を無視した企業論理であることを示唆した。
最後に座長の斉藤氏は、「ライフスタイル、価値観、社会的成熟度が変わってきている。今は、人と違うことに価値を求める時代。そうした大局的な視点に立って判断して欲しい」と述べ、研究会の第2回をしめくくった。
研究会の第3回は、2月15日に開催される。次回は、オブザーバーとしてKDDIやインデックス、ACCESSなどがプレゼンテーションする。
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