2003年総集編--業界地図が激動した固定・移動体通信業界

永井美智子(CNET Japan編集部)2003年12月30日 10時00分

 2003年は通信事業者の業界地図に大きな変動が起きた1年だった。固定通信分野は企業再編が相次ぎ、移動体通信分野はNTTドコモが首位を独走していた携帯電話の市場シェアに大きな変化が起こった。

 まず固定通信の分野では、企業の買収、提携などによる業界再編が起こった。最も象徴的だったのは、8月に起きたクロスウェイブコミュニケーションズ(CWC)の会社更生手続申請だろう。CWCはIIJ、ソニー、トヨタ自動車の3社が設立した企業で、1999年より企業向けに高速バックボーンや広域LANサービス、データセンターの提供、管理・保守などを行ってきた。しかし通信料の価格競争が激化したことから業績は赤字が続いていた。

 CWCの再建に関しては、KDDIが支援に乗り出すという話もあった。しかし結局、同社の事業はNTTコミュニケーションズに営業譲渡された。また、この影響でCWCの親会社であるIIJはNTTおよびNTTコミュニケーションズからの増資を受けることとなり、NTTの連結対象会社となった。

 一方、2002年7月からIIJとの事業統合を図っていた東京電力系の通信会社、パワードコムは、2003年3月に協議を打ち切った。合意が得られなかったのがその理由という。その後パワードコムはフュージョン・コミュニケーションズに出資し、現在はフュージョンと電話事業の統合について検討を開始している。

 また、英Vodafoneの傘下に入った日本テレコムホールディングスは、固定通信事業を行う日本テレコムをリップルウッド・ホールディングスに売却した。株式譲渡による売却手続きは11月に終了し、米Sprint前COOのロナルド・ティー・レメイ氏が代表執行役社長に就任した。 なお、日本テレコムホールディングスは12月に社名をボーダフォンホールディングスに変更している。

携帯電話は月間契約純増数に変化---auがドコモを抜いて首位に

 移動体通信の分野では、携帯電話事業者のシェアに大きな変化が現れた1年だった。首位を独走していたNTTドコモの伸びに陰りが見え始め、代わってKDDIのauが月間契約純増数でトップを走るようになった。J-フォンから社名を変更したボーダフォンも、格安な料金プランなどを打ち出してシェア拡大を狙っている。国内の携帯電話加入者数は頭打ちになってきており、今後はシェア争いが激しさを増すことが予想される。

 今年最も勢いが目立ったのはauだ。3月31日付でPDC方式の携帯電話サービスを終了し、経営資源をCDMA方式に注いだ。特に第3世代携帯電話(3G)のCDMA2000 1xでは、最大144kbpsという高速データ通信を活用した新しいアプリケーションが契約者の増加に結びついている。着信を楽曲で知らせる「着うた」などのサービスがヒットしたほか、10月にはGPS機能を利用した歩行者向けのナビゲーションサービス「EZナビウォーク」を開始し、話題を呼んだ。端末面でも、折りたたみ式が主流の中、あえて投入した薄型のストレートタイプ「INFOBAR」が人気を集めた。

 また、10月には下り最大2.4Mbps、一部定額制のCDMA 1x WINも開始した。月額の定額利用料は4200円で、Eメールを含む同社のネットワークサービスEZwebの通信料が使い放題となる。対応機種やコンテンツはまだ少なく、今後のサービス拡大が注目される。

2004年は3G戦争勃発?

 NTTドコモは12月に発表したFOMAの次期モデル、900iシリーズで、auに独走を許した3G市場での巻き返しを狙う。900iシリーズは2004年2月より販売開始される予定だ。2Gと同程度の待受・通話時間や端末の軽さを実現すると共に、HTMLメールに対応するなど新たなサービスを打ち出した点が特徴といえる。またアプリの容量を拡大し、スクウェア・エニックスのドラゴンクエストやファイナルファンタジーなど様々なゲームを楽しめるようにしている。

 NTTドコモ iモード事業本部 iモード企画部長の夏野剛氏は、今後の新しいアプリケーションサービスはすべてFOMAから導入していくと語っており、auの戦略と同様に、新しいアプリケーションサービスでFOMAへの移行を促していく考えだ。

 J-フォンは10月、社名をボーダフォンに変更した。低価格なプリペイド端末の販売や、パケット割引プラン、週末・休日の格安な通話料を武器に他社からの移行を訴えているが、純増数では伸び悩んでいるのが現状だ。今後はボーダフォンも3Gへ注力し、海外でも使えることをアピールしたり、ボーダフォングループのスケールメリットを生かした端末開発を行っていくとしている。

 NTTドコモとボーダフォンが3Gへの取り組みを強化することもあり、2004年はいよいよ3Gが本格的に普及する年となりそうだ。電気通信事業者協会(TCA)の調査によると、2003年11月時点での3Gサービス加入者数は約1289万件、そのうちauの契約数は約1117万件と86.7%を占める。しかし、2004年度からはNTTドコモとボーダフォンが採用する3G規格、W-CDMAへの移行が急激に進み、2005年には国内出荷台数のうち半数以上が3Gになると電子情報技術産業協会(JEITA)では予測している。また、IDC Japanのアナリストは、NTTドコモのFOMAの出荷台数が2004年に1000万台を突破する可能性もあると語っている。

今後の注目は番号ポータビリティと新3G規格のTD-CDMA

 今年注目された移動体通信関連の政府の動きとしては、携帯電話事業者を変えても番号をそのまま利用できる番号ポータビリティ制度の導入と、新しい3G規格のTD-CDMA方式の免許交付の問題だ。いずれも今後のシェア争いに影響を与える可能性がある。

 番号ポータビリティについては、総務省は事業者の代表者や有識者を交えた研究会を開催した。ほとんどの事業者側は約900〜1500億円という設備投資が必要なことを理由に、導入に慎重な姿勢を示した。しかし、総務省はすでに番号ポータビリティの導入をほぼ決定しており、今後はどのように導入していくかが焦点となる。事業者側はシステム構築に2年ほど必要と話しており、制度の導入が決まっても実際の運用が始まるのは2006年頃となりそうだ。

 もう1つ注目すべき動きは、TD-CDMAのという3Gの免許交付だ。TD-CDMAは、下り回線と上り回線を同じ周波数で時間分割して伝送する方式で、データ通信のような非対称通信を効率よく伝送できると言われている。すでにNTTコミュニケーションズはマルチメディア総合研究所の子会社アイピーモバイルと共同で実証実験を行っている。また、イー・アクセスは12月に実験局の免許申請を行っており、ソフトバンクも同様の動きを見せていると言われる。各社は音声通信サービスではなく、IPベースの高速データ通信を中心とした事業展開を目指す考えだ。

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