KDDI小野寺社長、「NTTの月額基本料なんていらない」

藤本京子(CNET Japan編集部)2003年10月10日 19時43分

 固定通信からブロードバンド、携帯電話など、すべての通信サービスを1社でつかさどるKDDI。「この総合力が強み」と語るKDDI代表取締役社長の小野寺正氏が10月10日、幕張メッセにて開催中のCEATECで基調講演を行い、ユビキタス社会に向けた同社の戦略を語った。

ブロードバンドは「統合されたサービスで挑む」

 小野寺氏は、講演の前半でブロードバンド戦略について語った。ブロードバンドサービスにおいて重要となるのは、コンテンツ、プラットフォーム、回線、ネットワーク、端末などだが、同氏はこれら各事業が、それぞれ別の企業から提供されている点を指摘する。たとえばコンテンツは映像・放送事業者が、回線はISPが、端末は各メーカーが提供するといった具合だ。そこで同氏はヤフーBBを例に出し、「ヤフーBBがうまく行っているのは、これらをすべてトータルに提供しているからだ」という。

 KDDIの目指す方向も、統合されたサービスの提供だ。各ブロードバンドサービスプロバイダの競争が激化する中、同社の差別化戦略は、「テレビとセットトップボックス(STB)の組み合わせ」。今後光ファイバーによる通信が普及すると、高品質の映像コンテンツがブロードバンドで利用可能となるが、KDDIが試験サービスを行った際にユーザーから多く聞かれたのが、「やはり映像を見るならテレビで見たい」という声だったという。PCは個人で楽しむものだが、テレビは家族のもの。そうなると、映像を家族で楽しむにはテレビが不可欠というわけだ。小野寺氏によると、KDDIではテレビに接続して色々なサービスを受けられるSTBを開発中で、「将来的には、STBにハードディスクレコーダー機能を持たせるといったさまざまな機能を盛り込むことも考えている」という。

 KDDIではさらに、光ファイバー網を利用した電話、インターネット、TVのサービス、「光プラス」を同日より提供開始したばかりだが、このサービスも「同一のネットワークで複数のサービスを合わせて提供するため、効率のよいサービスが提供できる」と小野寺氏。特に「光プラス電話」では、「マイラインをすべてKDDIで登録しているのに、NTTに対して月額電話基本料金を支払わなくてはいけないのが納得いかない」というユーザーの意見を活かし、この仕組みをなくす方法として考えたものだという。「光プラス電話では、NTTの電話基本料金を支払う必要がなくなる。しかも、NTTとの契約を解約しても、現在使用している電話番号と電話機はそのまま使える。普及させるためには、ここまでシームレスな移行ができないと無理だと思った」(小野寺氏)

3G普及のカギは「サービス」と「端末」

KDDI代表取締役社長、小野寺正氏

 携帯電話の3Gサービスにおいて他社の一歩先を行くKDDIは、9月17日にCDMA2000 1x方式の加入者数が1000万を突破しており、9月末に100万という加入者数を発表したNTTドコモのFOMAとも桁違いの結果を出している。小野寺氏は3Gサービスについて、「誰もシステムには期待していない。ユーザーが望んでいるのは、サービスと端末だ」という。そして3Gサービスのユーザーは100% 2Gのユーザーであるため、「2Gで利用可能であったサービスはすべて3Gでも残さなくてはならない」という。

 小野寺氏は、同社の3Gサービスで大きな成功を収めている「着うた」について、「これはユーザーにとってもCDレーベルにとっても魅力的なサービスで、Win-Winの関係にあるため成功した」と語る。これまでの着メロの普及もあり、ユーザーが着うたを受け入れたことは自然に思える。一方CDレーベルにとっての魅力というのは、「着メロではメロディー配信のみなので、作曲者などに著作権料が入ってもCDレーベルにとっては1銭のお金にもならなかった。それが着うたではCDの音楽をそのまま利用しているため、CDレーベルの収入にもつながること」だという。「音楽配信サービスでここまで成功しているのは、AppleのiTunesと着うたくらいだ。著作権管理がしっかりしていれば成功する。今後対応端末も増えるので、着うたはますます伸びるだろう」と、小野寺氏は強気だ。なお、着うたのダウンロード数は、8月に700万件を越えている。

 小野寺氏はまた、「コンシューマー製品ではデザインも重要」だと語る。同社が今月6日に発表した新携帯端末INFOBAR は、まさにデザインを重視した端末。小野寺氏は、「従来の販売店以外でも“売りたい”と言われるほどの人気機種」と自信を見せる。「以前は独占企業であれば何もしなくてもお金が入ってきたが、そのような時代は終わった。ユーザーが何を望んでいるか把握し、それを実現させることが重要だ」(小野寺氏)

 講演の最後に小野寺氏は、ユビキタス社会に向けての意気込みを語った。「これからの携帯端末には、財布や鍵の機能など、背広の中に入っているものはハンカチ以外すべて搭載されるだろう。そして、携帯端末で人と人、人とモノがつながるだけでなく、モノとモノもつながるようになる。これまで人を介して操作していたモノが、モノ同士でつながり、例えば家に帰ってきたことを携帯端末がクーラーに伝え、自動的にユーザーの心地よいと感じる温度に調整するといったことが可能になる」。小野寺氏は、すべてのものがネットワークでつながるユビキタス社会において、あらゆる通信サービスを提供しているKDDIがまさに力を発揮できる場所だと語った。

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