IPv6への移行、「焦り顔のアジアとすまし顔の米国」

 世界各地でインターネットのIPアドレス枯渇が現実味を帯びる中、高みの見物を決め込んでいる国がある。米国などの豊潤なIPアドレスを所有する国だ。このため、現在のIPv4から新たなアドレスシステムであるIPv6への切り換えという、インターネットの歴史が始まって以来最大のオーバーホールにおいて、不協和音が生じる可能性が出てきた。

 全世界的にはIPv6に向かっていることは確かだ。IPv6では割り当て可能なIPアドレスの数が桁外れに増えるため、現行のIPv4の後継プロトコルとして大きな期待が寄せられている。特に今後数年間で、IPv4でのIPアドレスが枯渇するとみられるアジアや欧州にとっては死活問題だ。

 しかし、この枯渇問題が影響力の大きい米国のネットワークで生じると予測するアナリストはほとんどいない。それはIANA(Internet Assigned Numbers Authority)が米国に膨大な数のIPv4アドレスを割り当てたからだ。ネットワークの専門家らは「アドレス枯渇が切実な問題である国々は早々にIPv6への切り換えを希望しているが、枯渇問題とは無縁な米国は傍観者に徹する可能性がある」と語る。

 実際、アジアのIPアドレス枯渇はひっ迫した状況にある。英Ovumのアナリスト、Iain Stevensonは「アジアでは、2〜3年以内にIPアドレスが枯渇する可能性がある」と語る。「他の地域では今後4〜5年は大丈夫だろう。特に米国などでは、枯渇する可能性は全くない」(Stevenson)

 とはいえ、米国がIPv6を全く気にかけていないわけではない。先月には、米国防総省(U.S. Department of Defense)が「2008年までに、同省の全ネットワークをIPv6に移行する」と発表している。しかし、アナリストらは「米国防総省の計画はあくまで先行目標だ。米国がIPv6への変更を検討する理由は、主にセキュリティに対する不安からであって、IPアドレスの枯渇うんぬんの問題ではない」と述べている。

 現行のIPアドレス43億個に対し、米国などに割り当てられたIPアドレスは70%を占める。これに対し、IT大国と呼ばれるインドに割り当てられたIPアドレスはわずか200万個にすぎない。この43億個のうち、未使用のIPアドレスは約10億個。十分な数のように思えるが、ブロードバンド化が進む韓国や、中国、インド、欧州などが割り当て分のIPアドレスを使い果たしつつあるため、IPアドレス枯渇への懸念が高まっている。

この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。

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