ブランドを取り込めばネット広告は伸びる--グラムメディア創業者

鳴海淳義(編集部)2010年10月29日 18時52分

 米国や日本をはじめとしたグローバル市場で女性向けウェブサイトをネットワークしているGlam Mediaが業績を順調に伸ばしている。ブランディング目的の広告に絞ってビジネスを展開してきたことが好調の理由だという。日本では特にモバイルデバイスへの対応に注力しており、10月には女性のiPhoneユーザー向けアドネットワークサービスを開始した。Glam Media創業者兼CEOのSamir Arora氏と日本法人グラムメディア・ジャパンCEOの山村幸広氏に話を聞いた。

--Glam Mediaの近況はどうなっていますか。

Glam Media創業者兼CEOのSamir Arora氏Glam Media創業者兼CEOのSamir Arora氏

Samir Arora氏:2009年は不況の中でYahooやAOLが不調でしたが、Glam Mediaは売上高を35%上げることができました。オンラインメディアの中では非常にまれなことです。2010年は前年比で40%の成長が望めるでしょう。競合各社が15%くらいの伸びだと予想されていますので、好調をキープしていると言えます。

山村幸広氏:日本のグラムメディア・ジャパンは会社設立から1年半くらい経ちまして、比較的いい広告主に恵まれています。約200社ほどの広告主を獲得でき、特にファッション、コスメなど女性向けのラグジュアリーブランドの広告が多く出ています。2009年と2010年を比べれば、売上は倍以上になる見通しです。

--好調の理由は。

Arora氏:1つは我々のコンテンツネットワークが機能していることにあります。Glam Mediaは1番最初に個人のブログをネットワークし、メディア化した会社です。またGlam Mediaは元々、ディスプレイ広告の中の非常に単価の高いプレミアム広告やラグジュアリーブランドの広告だけにフォーカスしてきました。検索連動型広告のようなCPAをベースにしたものではなく、インプレッションベースだけで戦ってきたのです。そういう差別化をきちんとやってきたところが大きいと考えています。

 米国でもテレビや雑誌などのいわゆる既存メディアは70%〜80%がブランド広告で成り立っていますが、インターネットメディアの場合は逆で20%〜30%くらいにとどまっています。Glam Mediaはそのマーケットをどんどん拡大してきました。これらが好調の理由です。

--日本も同じ理由ですか。

グラムメディア・ジャパンCEOの山村幸広氏グラムメディア・ジャパンCEOの山村幸広氏

山村氏:そうですね。日本も外資系のLVMHグループやクリスチャンディオールなどの広告を扱ってきました。たとえば、化粧品で1番お金を使っているのは通販系コスメやドラッグストア系コスメなんですけど、グラムはそういったところはお受けせず、百貨店ブランドだけを扱ってきました。プレミアム広告だけにフォーカスし、新しい領域を広げてきたと考えています。

--不況のなかでパフォーマンス広告と一般消費財の広告主を捨て、ブランドだけを取りに行くのは勇気のいることなのでは。

Arora氏:パフォーマンス広告は不況の時にどんどん売上が落ちていきました。売上にひも付いて広告が成り立つ仕組みなので、売上が全体的に下がるとどうしても広告費も下がっていくのは当然です。

 ダイレクトレスポンスはブランドを持っている広告主にあまり有効ではありません。それは単純に、コカ・コーラが検索連動型広告を一切やらないのと同じことです。コカ・コーラが「150円のコーラを120円に値下げしました」という内容のDMやレスポンス型の広告を打ったとして、それが購入に結びつくかというと、おそらく結びつかないでしょう。そういうマーケティングをブランドはしません。Louis Vuittonが「景気が悪いので値段を安くします」というダイレクトレスポンスの広告を打ったりはしないように。

 ブランドは3つくらいのカテゴリに分けられます。AppleやLouis Vuittonのようにブランド広告のみをきっちりやる会社、Hewlett-PackardやPanasonicのようにブランドもダイレクトレスポンスもやる会社、それからDellや通販系のようにいわゆるインターネット系のオンラインマーケティングのみをやる会社。このうちインターネットは3つ目の広告だけを扱ってきました。だからインターネット広告は広告市場全体の8%くらいの非常に小さい割合にとどまっているのです。これを広げていかないと、ネット広告市場のパイは広がっていかない。将来的には1番目と2番目の広告の方が売上高が大きくなると考えています。

 その8%のインターネット広告のなかで50%は検索連動型広告で、ダイレクトレスポンスが25%くらいですから、ディスプレイ広告はまだ25%くらい。さきほどの1番目と2番目のブランディング広告を取り込んでいけば、まだまだ伸びると考えられます。

--今後の目標は。

Arora氏:1番重視しているのはテクノロジーです。ブランドマーケティングのために作った新しいアドサーバ「Glam Adapt」の開発を進め、あらゆるデジタル端末に対応できるようにします。そのため100人ほどのエンジニアを増強しようとしています。いま当社の社員数は300人なので、非常に大きな割合であると考えております。

 5月にフランスで新しいオフィスを立ち上げ、現在はドイツ、フランス、日本にオフィスを構えています。2010年中には新たに5つの国への展開を考えています。重要なのは現在の市場規模と成長率です。フランスの市場はいま非常に大きいですが、成長率はそれほど期待できない。そういう意味ではいまはアジアが高い成長率を期待できると認識していますし、特に中国、韓国、インドへの拡大を考えております。

 Glam Mediaは米国ComScoreのデータでトップ10に入り、Google、Yahoo、Microsoft、Facebook、AOL、FOX、Turnerに続いて8位につけています。米国だけで約8000万人へのリーチがありますが、いずれは1億人までリーチを伸ばしていけると思っています。2011年以降はディスプレイ広告でYahooにぶつかっていくでしょう。

 我々が目指すのはナンバーワンの女性向けターゲットメディアです。これが会社の創業時からのミッションで、すでにかなり近い位置にいます。ファッション、ビューティー、ライフスタイルのどのカテゴリでも女性に最もリーチできるサイトになる。これが最後の目標だと思っています。

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