ショッカソンの1日目は、まさに24時間ぶっ通しで開発が行われ、2日目の午後から審査が開始された。いずれもVRやHCI(ヒューマンコンピュータインタラクション)、エンターテインメント領域のエキスパートたちである4人の審査員が、参加チームの作品を厳正に審査した。
2016年の審査員はTechtile Tool Kitの開発者である慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科の南澤孝太氏、超音波収束装置で有名な東京大学星貴之氏、現実の室内空間を無限に歩くことができるVRシステム「無限回廊 – Unlimited Corridor」の研究で話題のユニティー・テクノロジーズ・ジャパンのやなせ洋平氏、国内の有名VRアトラクションを開発するハシラスの安藤晃弘氏。
「ショッカソン審査員は、電気刺激をビリビリ受けたり、遠隔キス体験をさせられたり、ひどい目に遭うことが分かった」と、2015年の審査員だった市原えつこ氏は話していたが、2016年の審査員も、デモ審査中に電撃で痛い思いをしたり、つらい思いをしたりと、かなり過酷な待遇を受けたようだ。
ショッカソンでは、このデモ審査と各チームのプレゼン後の質疑応答を重要視している。説明を熱心に聞き、時間をかけて体験している様子や、アイデアや技術について議論する審査員の姿が、熱量として会場にいた参加者全員に伝わっていた。
全チームのプレゼン終了後、審査員4人によって選定会議が開かれ、主催者3賞とスポンサー賞が発表された。
以下は、2016年の代表的受賞作品だ。
参加者の投票で決定されるこの賞は、チーム「ダムダム団」の「Ping-Pong-Air」に贈られた。振動による触覚フィードバックユニットをワイヤレスで実装した卓球のラケットと、富士通「Interactive Shoes Hub」を組み合わせ、実際のボールを打つことなく、卓球のラリーをしているような感覚を体験できる。
ステップを踏むとシューズと床がこすれるときのように「キュッキュッ」と音が鳴り、臨場感を高めるといった細やかな演出が施されており、実際に体験した参加者からの評価も高かった。また、本作品は合わせて協賛賞の3賞(富士通賞、TECHTILE賞、桃知みなみ賞)も受賞しており、全体的に完成度が高い作品であった。
審査員によって「最も触覚技術を生かしている」と評価されたチームに贈られるこの賞は、チーム「無言の圧力」による「無言の圧力インターフェース」が受賞した。首筋(僧帽筋)に身につけたデバイスのカメラで、背後にいる人の表情を読みとり、その人がネガティブな表情をしていると、それを「無言の圧力」として検知。デバイスから電気パルスを発生させ、本人に気づかせるウェアラブルインターフェースだ。
「空気を読む」といった、自分と他者との、その時々の関係性を「知覚」できるようにするというアイデアの面白さや、電通大梶本研の電気触覚ディスプレイとMicrosoft Azure Emotion APIを組み合わせた表情検知/フィードバック(無言の圧力)システムを短時間で実装したことが評価された。本作品も技術賞と合わせてmyThings賞も受賞した。
審査員によって「最も新しい触覚体験を作り出した」と評価されたチームに贈られる大賞は、チーム「ありあ」の「安眠ツールキット」に贈られた。これは、頸動脈付近を振動ユニットで刺激することによりストレスを緩和し、リラックスさせることで不眠症を改善するデバイスとして開発された。
マネキンの首を指で押さえつけると、取り付けられた圧力センサが感知し、自身が身につけている「首まくら」内の振動子が心地よく感じる強さで作動する。首を締め付けることでリラックスできるという体験と、これを実現するための安全な手法について、学術的なサーベイを行った上でハッカソン時間内に実装。触覚体験の質が圧倒的に高く、今後の可能性が大いに期待されることが評価され、Unity賞とのダブル受賞となった。
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