eBay、「伝統工芸」の越境ECを支援--京都市などと連携

 イーベイ・ジャパンは8月5日、地方の中小企業が製造する商品や伝統工芸品などを、eBay.comを通じて海外に販売する“越境EC”を支援する「小売・製造業者 海外展開支援プロジェクト」を立ち上げると発表。その第1弾として、京都市、京都商工会議所、中小企業基盤整備機構(中小機構)、PayPal、フォネックス・コミュニケーションズが共同で、京都の中小企業や伝統工芸の越境ECを支援する取り組みを開始した。

左から、イーベイ・ジャパン事業本部長の佐藤氏、ビジネス開発部長の岡田氏、京都市長の門川氏、中小機構の渡部氏、ペイパルジャパンの野田氏
左から、イーベイ・ジャパン事業本部長の佐藤氏、ビジネス開発部長の岡田氏、京都市長の門川氏、中小機構の渡部氏、ペイパルジャパンの野田氏

 今回の取り組みで、イーベイ・ジャパンとフォネックス・コミュニケーションズは、共同で京都の事業者への参入促進と出品・販売の支援(商品データ作成や翻訳など)をし、eBay.com上には「Born in Kyoto Collections」と題した特設ページを開設してプロモーションを実施。ウェブでは商品説明だけでなく、日本の歴史や伝統文化に触れることができる内容にすることで、商品だけでなく訪日観光への関心も喚起することが狙いだという。

「Born in Kyoto Collections」
「Born in Kyoto Collections」

 また、京都市と京都商工会議所は、地元の事業者に向けた啓発活動で協力し、PayPalも決済サービスを利用する外国人向けにメールマガジンなどによって告知をしていくという。また、今後この取り組みを他の地域にも拡大させるために、中小機構も支援していくとしている。

 この施策の背景について、イーベイ・ジャパンのビジネス開発部長である岡田朋子氏は、需要低迷、後継者不足、ライフスタイルの変化などを背景として、日本国内における伝統工芸品の生産額が、最盛期の5分の1程度の1040億円にまで減少していると説明。一方、増加を続ける訪日外国人観光客による“インバウンド消費”の拡大によって、グローバル市場における日本の伝統工芸品に対する関心が高まっていると語る。また、2015年度におけるeBayの日本の伝統文化に対する関心は増加傾向にあり、商品の取引額は400億円に達するなど、高い市場ポテンシャルがあるのだという。

プロジェクトのスキーム
プロジェクトのスキーム

 今回の取り組みを通じてイーベイ・ジャパンでは、伝統工芸品に関するeBay.com上での海外ユーザーのニーズに応えるとともに、訪日外国人観光客が訪れるショップに、eBayで商品が購入できる旨の告知を掲出することで、店内でeBay.comにアクセスして商品情報を英語で閲覧できる環境を提供する。また、帰国後の購買を促したりすることで、訪日外国人観光客の増加を、越境ECの取引拡大につなげたいとしている。「インバウンドをきっかけとして、外国人顧客がオンラインで継続的に商品を購入するような世界を目指したい」(岡田氏)。

訪日外国人観光客による伝統工芸品に対するニーズ
訪日外国人観光客による伝統工芸品に対するニーズ
eBay.comにおける伝統工芸品に対する興味関心
eBay.comにおける伝統工芸品に対する興味関心

 地元事業者への啓発活動などで協力する京都市長の門川大作氏は、「京都の街は国内外の観光客で大変賑わっている。一方で伝統工芸産業は厳しい状況に立たされている。京都には長い歴史によって培われた数多くの伝統工芸品があるが、たとえば京友禅は最盛期だった40年前の2.5%にまで生産量が落ち込み絶滅危惧種になっている。世界最高の織物と評される西陣織も(全盛期の)7%。文化財クラスの作品を生み出せる熟練の職人が、タクシー運転手などの副業をせざるを得ない状況が生まれている。これが現実であり、全国共通の課題だ。京都には全国の地場産業のものが集まり、日本ならではの文化を支えている。日本全国の文化や伝統産業を元気にし、地方創生の先頭に立つ責務があると感じている」と、伝統工芸品を巡る課題を挙げた。

 その上で、今回の取り組みについては「日本の伝統工芸を世界へと発信する取り組みの先頭に、京都が立てることを光栄に思う。京都には品質を徹底的に追求する一方で、対外的に宣伝やアピールを積極的にしない“老舗商法”という文化がある。これからの時代は、積極的に自分たちのモノづくりをアピールしなければ商品は売れない。今回の取り組みを通じて商品を海外にアピールし、購入者からの声が生産者にフィードバックされれば、伝統産業の新興、地方創生にとって大きな力になるはずだ。京都市も覚悟を決めて連携していきたい」と今回の取り組みへの期待を寄せた。

京都における伝統工芸産業の現状を語る、京都市長の門川大作氏
京都における伝統工芸産業の現状を語る、京都市長の門川大作氏

 イーベイ・ジャパンの事業本部長である佐藤丈彦氏は、「京都を皮切りに、日本の伝統工芸や地方の中小企業を世界の顧客とつないでいきたい。日本の伝統工芸ではこれまで“良いものは分かってくれる人が手にすれば良い”という風土があったが、これからはもっと積極的に良いものをアピールして知っていただく機会を作らなければならない。海外に日本の伝統工芸が注目されれば、国内需要の再喚起が期待できる。また、訪日外国人観光客に越境ECを通じて商品を提供すれば、そこから日本への関心をさらに高め、再訪日の動機を生み出すことも期待できるのではないか」と語った。

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