スマートドアホンで「民泊×IoT」に挑むインベスターズクラウド

 訪日外国人の増加にともなうホテル不足が懸念されていることから、空き部屋シェアサービス「Airbnb」を始めとする民泊サービスが注目を集めている。民泊とは、一般消費者の自宅などに旅行者を有料で泊めるもので、政府はこの民泊の全面解禁に向けた原案をまとめ、2017年の通常国会で新法を提出する予定だ。

 こうした民泊解禁の波にいち早く乗ろうとしているのが、土地のマッチングや施工、賃貸管理など、アパート経営に必要なサービスをワンストップで提供するアプリ「TATERU(タテル)」を展開するインベスターズクラウド。新たにIoT機器と連携したスマートアパートを作ることで、訪日外国人の民泊需要を取り込みたい考えだ。

スマートドアホン「TATERU kit」
スマートドアホン「TATERU kit」

 その第1弾として、ハードウェアビジネスを手がけるFORMULAと合弁会社を作り共同開発したのがスマートドアホン「TATERU kit(タテルキット)」。2015年12月からテスト運用を開始し、9月から関東圏の同社物件を中心にまずは1000台を導入予定だという。月額料金はセコムやアルソックの個人宅向けサービスと同等の5000~8000円程度にする予定。

室内タブレットで外出先でも応対--家電と連携も

 TATERU kitは、室内側のモニター画面がタブレットになっており、連動したスマートフォンを使って外出先でも来訪者に対応できる。履歴も残るため、不在時の訪問者を後からでも確認できる。また、室内タブレットにはカメラが搭載されているため、外出先のスマートフォンから自宅のペットの様子なども確認できる。

 現在はドアホンとしての利用が中心だが、将来的にはTATERU kitと、家の中のさまざまなIoT機器(スマート家電など)を連動させる計画だ。たとえば、専用のアプリを通じて、スマートキーの操作や、照明の明るさ調整、外出先からのエアコンの温度調整などを、どこからでもできるようにする。さらに、アパートの入居者が、TATERU kitと連動可能なIoT機器を購入できるECサイトも構築する予定だという。

「TATERU kit」とIoT機器の連動イメージ
「TATERU kit」とIoT機器の連動イメージ

 スマートキー領域では、すでに1月にQrioと技術提携し、TATERU kitにスマートフォンで鍵の開閉ができる「Qrio Smart Lock」の導入を進めている。これにより、家族や友達など、特定の人に特定の時間だけ鍵をシェアすることも可能。また、セキュリティ領域では、3月にホームセキュリティ「Secual」と提携。人感センサや窓センサと連動することで、侵入者がいるとスマートフォンアプリに通知が届くようになる。

「世の中になければ自分たちで作る」

 この事業の構想が生まれたのは2014年。アパートの入居者にIoTによって付加価値を提供したいと考えたが、当時はそれほど機能が充実した製品は国内になく、海外製品もサーバなどによる遅延の問題で満足には動かなかったと、インベスターズクラウドIT本部執行役員で、合弁会社の代表取締役を務める吉村直也氏は振り返る。そこで「弊社には『世の中になければ自分たちで作ろう』という社風があり、自社で開発することにした」(吉村氏)という。

インベスターズクラウド代表取締役の古木大咲氏(右)、同社IT本部執行役員の吉村直也氏(中央)、FORMULA代表取締役の西野充浩氏(左)
インベスターズクラウド代表取締役の古木大咲氏(右)、同社IT本部執行役員の吉村直也氏(中央)、FORMULA代表取締役の西野充浩氏(左)

 しかし、同社にはハードウェア開発のノウハウがなかった。また大手の機器メーカーに相談すると、プロトタイプだけでも数千万円かかると言われ、半年ほど試行錯誤する時期が続いた。そんな中、さまざまなITデバイスを手がけるFORMULA代表取締役の西野充浩氏(合弁会社では取締役)の存在を知り、連絡をとって想いを伝えることで協力を得ることができたという。

 「これまでも室内タブレットなどは他社が提供してきたが、利用シーンが提案しきれていなかったので流行らなかった。TATERU kitで、我々は住環境の一歩先を提供したい。いまはインベスターズクラウドのアパート向けに提供しているが、今後は外部のマンションなどにも広げていきたい」(西野氏)。

「TATERU kit」の本体。プロトタイプ(上)と比べて洗練されたデザイン
「TATERU kit」の本体。プロトタイプ(上)と比べて洗練されたデザイン

 TATERU kitは、通常のドアホンと異なり画面が大きく、表示できる情報量も多いことから、これまでポストに投函されていたチラシを表示したり、近所のスーパーの特売情報を知らせるといった、自宅周辺の情報に特化したデジタルサイネージのような使い方も可能になるかもしれないと、西野氏は話す。

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