最前線にいる研究者が語る、AI開発を取り巻く世界と日本の動き - (page 2)

世界が汎用人工知能の開発にシフトする理由

 世界もAGIの開発にシフトしており、Googleが参入を発表したり、チェコの資産家がGoodAI社を設立するなど、大きな動きが始まっている。競争も一気に加速しており、単独で開発競争には勝てないことから多様な専門家の協業が必要不可欠になっている。

 それに対する日本の動きとしては、高橋氏が理事を務める全脳アーキティクチャ・イニシアティブ(Whole Brain Architecture Initiative =WBAI)がある。慶應義塾大学や東京大学、国立情報学研究所、ドワンゴ人工知能研究所らが行う研究を、トヨタやパナソニックなどの企業が賛助するNPO形式で運営されている。

シンギュラリティ
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 また、AGIの研究開発には、認知科学と計算機科学と神経科学の3つが融合した開発コミュニティの形成や、さらに分子科学や解剖学といった生物学的なアプローチも必要されている。そしてAIに対する新しい視点と発想こそが競争の鍵となりうることから、高橋氏はそれらの分野に通じた「認知アーキティクチャ」という新しい職業を作り、人材育成を行うことも必要ではないかと提言している。

 AI開発は社会に与える影響が大きく、価値観の変換につながることから世界中から注目を集めている。知的労働を自動化するという、第四次産業革命ともいえる歴史的な分岐点になる可能性もあり、国家としても注目せざるを得ない状況になっている。

 特に科学の分野では、これまで人が行ってきた仮説やモデルの設計をAIが行うなど、AGIの出現でAI駆動型科学という第五の科学が登場する可能性も見えている。すでに、機械の物理法則については、力学的な動きをコンピュータにカメラで観測させるだけで発見さるようになっており、今後は人間の認知能力を超えるものをAGI発見できるかもしれないという。それこそが講演のテーマでもある”人類の再発明するために必要なこと”ではないかと高橋氏は説明する。

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 開発に関する具体的な動きもいくつか紹介された。理研が行っているBriCA(脳型基盤ソフトウエア)では、AIのコンポーネントを作ってOSとして動かし、ロボットOSの開発やビッグデータ解析基盤への応用にもつなげようとしている。最低でも2つのディープラーニングをつなげて相互学習させることや、バーチャル環境の中で実験マウスのように認知行動ができるAGIを来年中に創るのを目的にしているそうだ。

 また、高橋氏が設立に関わり、最高責任者を務めるロボティック・バイオロジー・インスティチュート社では、複雑化する生命科学の検証実験をプロトコール化してロボットにダウンロードし、世界規模で同時に行うことを目指しており、現在、6つの拠点で実証実験が行われている。

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