JASRAC都倉会長、TPP交渉で「歯がゆい思い」--JASRAC賞に輝いたのは

 一般社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)は5月20日、渋谷区代々木の本部で年次定例会見を開催した。

 来春の任期満了に伴い、今回が最後の定例会見出席となる都倉俊一会長は「死後保護期間延長や戦時加算などがTPP交渉のテーブルに乗ったことで歯がゆい思いをしている」と、会長就任以来取り組んできた課題がJASRACの手を離れた状況を憂慮。一方で「なんとか任期中までに一定の成果につなげたいという思いは依然としてある」と、交渉の前進に強い期待をのぞかせた。


JASRACの都倉俊一会長(左)と菅原瑞夫理事長(右)

 2014年度の使用料徴収額は1124億9000万円(前年同比101.5%)と横ばい。オーディオディスク、ビデオグラムなどの録音分野の縮小傾向に歯止めはかかっていないものの、コンサート、ライブハウスなどでの演奏系やカラオケ、また放送事業の安定に伴う放送などの徴収が好調に推移したことに伴い、3年連続での1100億円台を達成している。

 こうした市場の動向について、菅原瑞夫理事長は「人々と音楽との接し方が多様化する中、CD市場は縮小傾向にあるとはいえ、十分な規模は維持している」と評価。また、昨今のデジタルプラットフォーム立ち上げやハイレゾ音源配信に対する需要の高まりなど、音楽利用全体の市場についてはしぼんでいるわけではないとの考えを示した。

 先の最高裁判決に伴い再び注目を集める放送事業者との契約体制については、新たな契約における前提ともされる使用楽曲の全曲目報告が93%まで進んでいることを報告。100%の実現に向け、今後も放送局への要望を強めていくとした。

アニメ関連が各部門で上位「JASRAC賞」

 著作権使用料分配額の多かった作品を表彰する「JASRAC賞」は、AKB48のヒット曲であり、セールスに加えカラオケ、放送番組・CM使用など幅広く利用された「恋するフォーチュンクッキー」が金賞を受賞。また、銀賞の「進撃の巨人BGM」、銅賞「ルパン三世のテーマ‘78」、国際賞「ドラゴンボールZ BGM(TV)」、外国作品賞「LET IT GO」(アナと雪の女王)と、アニメ作品に関連した楽曲が各部門で上位を占めた。


著作権使用料分配額の多かった作品を表彰する「JASRAC賞」の金賞にはAKB48の「恋するフォーチュンクッキー」が選ばれた

 その他、国内ランキングでは、都倉会長作曲の「UFO」(阿久悠氏作詞、4位)や昭和初期の名曲「東京ブギウギ」(5位)がランクインするなど、放送使用・CM使用楽曲が上位にくる傾向が続いている。また「物語セカンドシーズンBGM」(6位)、「西部警察メインテーマ」(8位)など、銀賞・銅賞含めインストゥルメンタル作品が多くランクインした。

 いわゆるヒットチャートやシングル売上とランキング曲が合致しない傾向について、都倉会長は「徴収総額は変わっていないのに中身が激変しているのは、音楽市場においても技術革新、デジタル革新などの影響を享受しているものだと(クリエイターは)理解しなければならない。とはいえ、基本はいい楽曲を作ること。(自身の楽曲を含めた)かつてのヒット曲がランキングしていることについては、いつまでも皆さんに愛される楽曲を作り続けるべき、という激励の形と捉えている」と述べた。

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