クラウドワークス、赤字続くも契約額は“倍増”--「クラウド人材バンク」目指す

 クラウドソーシングサービス「クラウドワークス」を運営するクラウドワークスは5月15日、2015年9月期 第2四半期(2014年10月~2015年3月)の決算を発表した。売上高は前年同期比307.8%増の3億6500万円、営業利益は2億8300万円の赤字、純利益は2億9500万円の赤字となった。


クラウドワークス代表取締役社長の吉田浩一郎氏

 この一方で、仕事の総契約額は前年同期比97%増の6億5600万円、仕事を受注するユーザー数は1年間で257%増の58万人に増加した。上場して認知が高まったことや、大規模なプロモーションを実施した効果があり、大幅なユーザー増加につながったという。また、発注するクライアント企業の数も1年間で200%増の約9万社に拡大した。

 同日の事業戦略説明会で登壇した、クラウドワークス代表取締役社長の吉田浩一郎氏は、「(2014年12月に)赤字で上場して、クラウドワークスは大丈夫なのかと言われる中で、しっかりとした成績を残して、未来に一歩前進できた」と手応えを語る。現在は投資フェーズと考えており、黒字化の目処は、当初の計画と同様に2016年9月期としている。

与信インフラ「クラウド人材バンク」を構築

 クラウドワークスでは、2010年3月の創業から2年間、中小企業とクリエイターをつなぐ「プラットフォームサービス」を提供していたが、2014年1月からは同社が仲介して大企業とクリエイターをマッチングする「エンタープライズサービス」も提供している。トヨタ自動車やNTTドコモ、日本たばこ産業など、国内時価総額で上位にランクインする企業にも導入されているという。

 吉田氏は、正社員の比率が半数以下に低下している現代では、非正規雇用者の労働力をいかに活用するかが企業にとって課題になっていると語る。その一方で、個人の仕事実績はいまだに紙ベースの履歴書など“自称”であることから、対企業と比べると信用がなく、双方が満足いく形で仕事を受発注できる状況ではないと指摘する。

 その課題を解決できるのがクラウドソーシングだと吉田氏は話す。クラウドワークスでは、企業がクリエイターの受注実績や評価を閲覧できるため、オンラインで仕事を受けるための「個人の与信インフラ=クラウド人材バンク」の役割を担うと説明。従来の働き方に革命を起こせると語る。

 「評価データさえあれば企業も個人に仕事を頼みたい。この情報がたまれば、将来的には派遣会社や店舗に人を紹介することもできる。これは既存の人材会社はどこも持っていない。我々だけが個人の確かな仕事実績に基づいた評価データを持つ、クラウド型の人材会社になる」(吉田氏)

20年後には総契約額3兆円を目指す

 1998年に650億円だったEC市場は、2013年に15.9兆円へと拡大した。吉田氏は、2013年に215億円だったクラウドソーシング市場も、20年後には10兆円の規模に拡大すると予測。クラウドワークスを国内1000万人が利用し、総契約額で年間3兆円の仕事を提供するサービスへと成長させたいと語る。当初計画していた短期目標達成の時期を1年前倒し、2016年9月期に総契約額100億円を目指すとした。

 「(ソフトバンク代表の孫正義氏を引き合いに出しつつ)もう1人くらい、我々の世代から新しい夢にチャレンジする人を生み出していってもいいんじゃないかと思っている。今は『こいつ何を言っているんだ』と思われるかもしれないが、必ずやり遂げたい」(吉田氏)。

企業に常駐してアウトソーシング体制を構築

 同日には、クライアント企業のアウトソーシング体制を構築する新事業「クラウドワークス BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)」も発表された。

 企業のクラウドソーシング利用にあたっては、内部業務をクラウドソーシング化できる範囲には限界がある、一部の業務はオンラインでは物理的に不可能といった課題があった。そこで、同社のスタッフがクライアント企業に常駐して、業務内容を理解した上で、アウトソーシングに必要となる組織体制を設計する。

 これに加えて、業務の分解やアウトソーシングをする際のディレクションも担当する。アウトソーシングには、クラウドソーシングサービス「クラウドワークス」や、在宅での仕事を望むクリエイターと企業のビジネスマッチングサービス「クラウドワークステクノロジーズ」を活用する。

 同社ではすでに、モデル事業として電力関連会社をクライアントとしたBPOに着手しており、スタッフがクライアント企業への常駐を開始しているという。2016年4月に開始する電力小売全面自由化に向けて、補助金の申請や電力会社向けの接続申請、電力需給管理などのアウトソーシングを進めるとしている。

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