アドビが第3のクラウド「Adobe Document Cloud」--紙を完全デジタル化

別井貴志 (編集部)2015年03月19日 21時00分
記者会見でのデモを写真で振り返る。これが刷新されたAdobe Acrobat DCの画面。最近使用したファイル。

記者会見でのデモを写真で振り返る。これが刷新されたAdobe Acrobat DCの画面。最近使用したファイル。

 アドビ システムズは3月18日、クリエイティブソリューションの「Adobe Creative Cloud」、マーケティングソリューションの「Adobe Marketing Cloud」に続く第3のクラウドソリューションとして「Adobe Document Cloud」を発表した。これは、最新バージョンのアプリケーション「Adobe Acrobat DC」とクラウドサービス「Document Cloud」で構成され、30日以内に正式公開、提供開始する。

「ドキュメントはデジタル革命の最後の砦」とアドビ システムズの代表取締役社長である佐分利ユージン氏 「ドキュメントはデジタル革命の最後の砦」とアドビ システムズの代表取締役社長である佐分利ユージン氏

 アドビ システムズの代表取締役社長である佐分利ユージン氏は「PDFとAcrobatはアドビのDNAともいえる。1993年に『Acrobat 1.0』が登場してから22年経つ長い歴史のある製品で、当時はフロッピーディスクでの供給だった。2012年に現行の『Acrobat XI』を発表して以来2年半が経ち、特にモバイル環境が劇的に変わってきた。ドキュメントはデジタル革命の最後の砦と捉えており、こうした環境変化にも合わせ、Adobe Document Cloudによって、ビジネスでもプライベートでも、デスクトップやモバイル、ウェブにわたり、一気通貫してドキュメントの作業や管理などができるようになる」と語った。

 そして、新ソリューションを迅速に展開するために、今年度から新たにDocument Cloud事業開発本部を設置した。

 Adobe Document Cloudの核であるAcrobat DCは、デスクトップ版、iOS版(iOS 8.1以降でiPadのみ)、Android版(Android 5以降でタブレットのみ)が用意される。ユーザーインターフェースが一新され、これまで通りドキュメント(PDF)の作成、編集、管理ができる。最大の特徴の1つは、ドキュメントマジックと呼ばれるデジタル変換技術がある。Officeアプリケーションファイルをはじめ、PDF変換可能なファイルはすべてAcrobat DCに取り込んで編集などができ、取り込んだファイルフォーマットで出力することが可能だ。

 さらに、紙のドキュメントをタブレットのカメラで撮影してAcrobat DCに取り込むと完全デジタル化され、ドキュメント内のテキストや画像をOCR技術で認識し、それぞれを編集、管理できる。システムにないフォントであった場合は、より近いフォントをアプリが自動的に選ぶという。

 また、Adobe Document CloudとAdobe Creative Cloudの一部として、Acrobat DCのすべてのサブスクリプションライセンスで「e-Signサービス」(旧Adobe EchoSign)が提供される。これにより、受信したり、共有したりしたドキュメントにキーボードで打ち込んだテキストや手書きで入力、署名ができる。

 このほか、Mobile Link機能によって、モバイル端末でもドキュメントファイルの設定や作成、編集、注釈やコメント、署名の付与などが可能だ。

 一方で、法人向けに「Document Cloud for enterprise」もあり、企業に既にあるCRMや人事システムと連係、統合して活用できるようにする。また、マイクロソフトのSharePointとの連携を強化し、企業内でSharePointを利用している場合、そのリポジトリ(プログラムデータや設定情報、データの更新情報などが記録保管されている場所)にPDFを格納できる。今回はSharePointだけだが、将来的には企業内で利用されているさまざまなリポジトリやストレージとの連携を強化していく。

 アプリケーションは、PDFの表示やフォームへの記入、e-Sign、注釈コメント付与がOSやデバイスを問わずにできる「Acrobat Reader」が引き続き無償で提供される。Acrobat Readerから「Adobe Reader」と名称を変えたが、今回全面的に「Acrobat」ブランドを最大限に活用するという観点から名称を元に戻した。

 Acrobat Readerの機能に、PDFの作成、編集や保護、フォームへの自動入力機能などを追加した「Acrobat Standard DC」は、サブスクリプションライセンス版が月間1380円(年間契約)、永続ライセンス版が新規3万4800円、アップグレード1万8200円で提供される。さらに、Standardの機能に紙のドキュメントを編集可能なPDFへ変換する機能などを追加した「Acrobat Pro DC」は、サブスクリプションライセンス版が月間1580円(年間契約)、永続ライセンス版が新規5万4800円、アップグレード2万4200円で提供される。

 なお、Adobe Creative Cloudのメンバーシップで「コンプリートプラン」を利用しているユーザーは、追加料金などはなくそのままAcrobat Pro DCが利用可能だ。

 Adobeのソリューションズ シニア プロダクト マーケティング マネージャーである山本昌子氏は「オフィスに座って自分のPCだけで仕事をするという時代から、外出先でも同じような感覚で仕事を続けていけることが重要になってきている。今回提供するソリューションは、紙を排除したいわけではなく、紙とうまく共存する、紙をいかに簡単に電子化して、文書ワークフローを円滑にするかということに主眼を置いている。こうすることで、ビジネススピードも加速される。現実として申請書や契約書など、ありとあらゆるビジネス文書は仕事において核になっている。これをより迅速に簡単にどこからでも作業を簡潔できるようにする」とした。

 また、2年半かけて開発した中で、もっとも注力したのはユーザーエクスペリエンスだとし、「社内でのキーワードは“ナチュラル”を掲げ、既存ユーザーでも、新規ユーザーでも、iPhoneでもiPadでもPCでも、あらゆるデバイスから簡単に直感的に同じ操作感を味わえるように設計した」と述べた。

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