“言葉の壁”を超える新技術で外国人観光客の増加狙う--パナソニックとJR九州

 パナソニックとJR九州は3月3日、東京オリンピックで海外からの観光客の増加が見込まれる2020年を見据え、「観光立国・地方創生」をテーマにICTによって九州の魅力を発信する「WONDER JAPAN TRIP」を、JR博多駅(福岡県)の構内で開催した。


左からパナソニックの井戸正弘氏、JR九州の青柳俊彦氏、国土交通省の竹田浩三氏、放送作家の小山薫堂氏

 会場には、JR九州 代表取締役社長の青柳俊彦氏、パナソニック役員 東京オリンピック・パラリンピック推進本部 本部長の井戸正弘氏、国土交通省九州運輸局 局長の竹田浩三氏、そして今回の企画をプロデュースした放送作家の小山薫堂氏が登場した。

訪日外国人の課題は「コミュニケーション」

 外国人観光客が増加するなか、国は東京オリンピックが開催される2020年に訪日外国人2000万人の達成を目標に掲げており、今後は観光客増加によるインバウンド効果で地方創生、経済活性化などの効果が期待されている。そのような中で開催されたこのイベントは、2020年に向けてさらなる外国人観光客の増加に向けた課題解決を、テクノロジの面から模索するものだ。

  • 国土交通省九州運輸局 局長の竹田浩三氏

 国土交通省の竹田氏は、外国人観光客の増加による観光振興・地方創生の実現に向けた課題として、「観光庁の調査では、旅行で訪日した外国人が困ったことの1位は“フリーWi-Fi(がないこと)”だった。都市部では整備が進んでいるものの、まだまだ足りない。次に多かったのが、コミュニケーションの問題。観光庁では多言語対応のガイドライン整備や各地域での外国語ガイドの育成に力を入れている。そのような取り組みで言葉の壁を超えていければ」とコメント。インフラの整備や外国語への対応など「受け入れ態勢の整備」を外国人観光客の増加に向けた大きな課題として挙げた。

 会場には、竹田氏が挙げた“言葉の壁”を超える目的で開発された製品のプロトタイプを展示。パナソニックと独立行政法人情報通信研究機構(NICT)を中心に、産学官連携で開発した自動音声翻訳技術や、スマートフォンをデジタルサイネージやLED照明にかざすと、そこから発せられる信号を読み取ってスマートフォン上に情報が表示される「光ID」技術などがデモンストレーションされた。

“言葉の壁”を超えるICT製品

 自動音声翻訳技術は、話した言葉を設定した言語にリアルタイムで自動翻訳し、相手に伝えられるもので、会場では開発中の「据え置きタイプ」「ペンダントタイプ」「拡声器タイプ」の3種類が展示された。それぞれ、機器に向かって話すと、クラウドサーバを通じて翻訳された音声を相手に発信できる。翻訳のタイムラグは約2秒で、今後はさらなる高速化を目指している。中でも注目を集めていたのは拡声器タイプで、日本語で拡声器を使うと英語、中国語、韓国語にすぐに翻訳してスピーカーから発信できる。言語はスイッチで切り替えられるので、雑踏でのアナウンスなども円滑に多言語で行うことが可能だ。

  • 据え置き型の自動翻訳機。会話の内容に合わせて地図やネット上の情報を相手に表示させることができる

  • ペンダントタイプの自動翻訳機。現在は4カ国語に対応しているが、今後は10カ国語まで拡大予定

  • 外国人がデモンストレーションをして記者との会話を楽しんだ

  • 拡声器タイプの自動翻訳機は4カ国語に対応。通常の拡声器としても使用できる

  • 手元のスイッチで4カ国語を切り替えることができる

 光IDは、照明やデジタルサイネージのバックライトなどに使用されるLEDに特殊な信号(ID)を埋め込み、専用アプリを導入したスマートフォンがその信号を読み取ると、インターネットを介して特定の情報を受信できるもの。たとえば、九州の名物を紹介する展示では、その商品を照らす照明に光IDを組み込み、商品にスマートフォンをかざすと関連情報を表示する。九州地区を運行する特急列車を紹介するVTRでは、列車の映像が切り替わるごとに異なるIDをデジタルサイネージから発信して、その列車に関する情報をスマートフォンに表示させていた。

  • 光IDの例。デジタルサイネージにスマホをかざすと関連情報が表示される

  • 九州名物で光IDを活用した例。卓上に通信機器などはなく、商品を照らす照明の光の中に特殊な信号が含まれている

 照明やバックライトの光そのものに、特定の情報をスマートフォンに表示させるための“鍵”を内包している点が、BeaconやWi-Fiといったデータ通信とは異なる点で、光の波長が届く範囲であればどこでも情報を受信できる。パナソニックではこの光ID技術のために50以上の特許を取得している。

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