「光コラボ」で戦局は動くのか--携帯キャリア3社の決算を読み解く

 携帯キャリア主要3社の2014年度第3四半期の決算が出そろった。1~3四半期の累計を見ると、KDDIが好調を維持する一方、NTTドコモとソフトバンクが営業減益となるなど、前期と傾向は大きく変わっていないようだ。

 新料金プランや、NTT東西の「光コラボレーションモデル」による光ブロードバンドサービスの開始や海外事業など、好不調を表すトピックを中心として各社の決算発表内容を振り返り、今後の動向を分析してみよう。

新料金プランの影響が依然大きいドコモ、「ドコモ光」の評価は

 第2四半期に業績の大幅な下方修正を発表したドコモ。1月29日に開催された第3四半期の内容は、1~3四半期の累計で営業収益が前年同期比マイナス1.1%の3兆3267億円、営業利益が前年同期比マイナス14.7%の5871億円。同社は携帯電話事業専門であるとはいえ、従来大きく差をつけてきたソフトバンクだけでなく、KDDIにも売上面で追い抜かれるなど、非常に厳しい内容となっている。減収要因としては、やはり新料金プラン導入による音声収入の減少と、月々サポートの影響が大きいようだ。


ドコモのARPU。引き続きデータARPUは下落が続くが、音声ARPUは下げ止まっている

 一方で、いくつか改善に向かっている数値も見ることができる。現在最大の懸念材料となっている新料金プランについては、10~11月で底打ちし、12月からは回復傾向にあるとのこと。それにともないARPUも、データARPUは前期比で2970円から2890円と、引き続き80円もの落ち込みを見せているが、音声ARPUは1700円から1710円に増加するなど、ここしばらく継続していた大幅な下落トレンドが収まったとしている。

 これまで新料金プランの大きな減収要因となっていたのは、多くのユーザーが最も安価なパケット定額サービス「データSパック」を選択していたこと。ドコモ代表取締役社長の加藤薫氏はその理由として、料金体系が複雑になりパケットシェアの仕組みが理解されにくかったことを挙げた。そこで同社では「新たにLパックを作ったことで、Mパック以上を契約する人が50%増えた」(加藤氏)ほか、パケットシェアの手続きを簡易化するなどさまざまな工夫を実施することで、改善を進めてきたという。

 新料金プランの影響で大きく業績を落としているドコモだが、それ以外の数字は比較的堅調だ。3カ月間の純増数は217万と、同社から回線を借りている仮想移動体通信事業者(MVNO)の契約数増によるところが大きいとはいえ、3キャリアでは最も数を伸ばしている。さらに番号ポータビリティ(MNP)の利用者数もマイナス5万と、前期のマイナス9万からほぼ半減。キャッシュバック競争の停滞と、キャリア間の差別化要因の減少などもあって、競争力という面では大幅に回復してきているようだ。


MNPも3カ月でマイナス5万と、従来と比べ大幅に改善している

 新事業領域も好調だ。「dマーケット」の取扱高は528億と、前年同期比で30%伸ばしていることに加え、iPhoneを発売後しばらく停滞傾向にあった「dビデオ」「dヒッツ」などの月額課金サービスの契約数も、大幅に伸びて合計1000万契約を突破した。主に「dマガジン」と「dファッション」が売上の伸びをけん引しているとのことで、着実な成長へとつなげてきている。

 こうした数字を見ると、新料金プランがなければ順調な業績を得ていた可能性も高い。だが今後の成長を考えると、データ通信による収益を柱とした新料金プランへの移行が、重要な要素となってくるのは確かだ。1月には1400万会員を獲得するなど、ドコモは急速に新料金プランへの移行を進めているだけに、もうしばらく我慢が続くといえそうだ。

 ちなみに今回の決算発表の場では、今後の動向を占う上で注目される「ドコモ光」も発表された。サービスの詳細については割愛するが、ISP契約の有無によって“単独型”と“一体型”に分かれている点や、一体型でも契約するISPによって料金が変化する点、モバイル側の料金プランによって割引額が変化するセット割「ドコモ光パック」の仕組みが複雑だという声が多く聞かれるなど、新料金プラン同様ユーザーからすんなり評価されたとは言い難く、販売面での課題は残る。


「ドコモ光」はサービスの提供形態や、セット割の「ドコモ光パック」の仕組みなどが分かりにくいという声が多く、販売面での大きな課題となる可能性が高い

 ドコモにとって固定ブロードバンドサービスの提供と、セット割の実現は、ライバルにないものを揃え、差を少なくする上でも“悲願”といえるもの。だが、NTT東西の光コラボレーションモデルによって他社も光ブロードバンドサービス導入を実現していることから、今後固定・携帯のセット割に関する料金競争が加速し、収益性を落とすことも考えられる。加藤氏も「iPhone、光と揃えるものはそろえた。言い訳はできない」と話しているが、光ブロードバンドを武器として生かすには、同社ならではのサービス開発と価値提案によるユーザー獲得が求められるだろう。

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