ソニー、2015年3月期決算見通しを下方修正--2300億円の赤字に、1000人を削減

 ソニーは9月17日、モバイル・コミュニケーション分野の中期計画を見直し、2014年度第2四半期(7~9月)で同分野の営業権全額の減損約1800億円を営業損失として計上する見込みを明らかにした。

 これを踏まえて、7月31日に発表した2014年度の連結業績見通しを修正し、営業損益は1400億円の黒字から400億円の赤字に下方修正した。税引前損益は1300億円の黒字から500億円の赤字に、当期純損失は500億円の赤字から2300億円の赤字を見込む。売上高の7兆8000億円は据え置いた。

 2014年度の中間配当、期末配当を無配とすることも決定した。ソニーが無配となるのは、1958年に東証に上場以来、初めてになる。モバイル・コミュニケーション事業に従事する7100人の社員のうち15%にあたる約1000人を削減する計画も明らかにした。

平井一夫氏
ソニー 代表執行役社長兼CEO 平井一夫氏
吉田憲一郎氏
ソニー 代表執行役EVP CFO 吉田憲一郎氏

競争環境の変化で中期計画を見直し

 ソニーは、第1四半期(4~6月)決算でモバイル・コミュニケーション事業の売上高が前年同期比10.1%増の3143億円、営業損失が153億円減の27億円の赤字となったことを受けて、同事業の通期営業利益見通しを260億円減のブレイクイーブンに下方修正するとともに、スマートフォンの年間出荷計画も、年初の5000万台から4300万台へと下方修正した。

 さらに、「モバイル・コミュニケーションは、7月から中期計画の見直しに着手している。これにより資産の減損を行う可能性もあり、全社業績に影響する可能性もある。国ごとに戦略を考え、通信事業者との強固な関係を築くことに力を注ぎ、利益を出せる事業基盤を作る。規模ではなく、収益を重視した戦略とし、製品モデル数の削減にも着手していく」(ソニー 代表執行役エグゼクティブバイスプレジデント=EVPで最高財務責任者=CFOの吉田憲一郎氏)などとしていた。

 9月17日に本社で行われた記者会見で、ソニーの代表執行役社長兼最高経営責任者(CEO)の平井一夫氏が「従来のモバイル・コミュニケーション分野の中期計画では、売上高の大幅な拡大を目指し、将来的に大きな収益をあげることを目指していた。だが、今回策定したモバイル・コミュニケーション分野の中期計画では、モバイル事業の市場や中国スマホメーカーの躍進などにより競争環境が大きく変化したことを踏まえ、事業リスクや収益変動性を低下させ、より安定的に収益計上が見込めるようにモバイル・コミュニケーション分野の戦略変更を行っている」と基本的な考え方を示した。

 「地域展開では高い収益性が期待できる国や地域に経営資源を投下し、競合環境の観点から、収益性や成長性が乏しい一部の国や地域の戦略を見直す。商品戦略ではソニーの技術を積み込み、高い付加価値が提供できる商品ラインアップに集中するとともに、競争環境の激化により採算性の厳しい普及価格帯モデルを絞り込むことで収益性の改善を図る」(平井氏)

 平井氏はまた「ソニー・モバイルの構造改革にも着手し、2014年度中の完了を目指し、約15%の人員削減を目指す。より具体的に内容については、適切なタイミングで適宜報告する」と述べた。

円安ユーロ高が影響

 ソニーは、モバイル事業をイメージングやゲームとともに、「コア3事業」と位置付けている。平井氏は「イメージング、ゲームと並んで重要な事業であるという認識は変わらない。スマホ市場は20%以上の伸びをみせており、年間13億台の市場規模がある。長期的には、スマホ事業に取り組みながら、ポストスマホといえる新たなモバイル・コミュニケーション機器が登場した際には、ソニーとしての資産を活用し、打って出るようにしたい。その土台を作る上でも重要である」と位置づけた。

 無配については、「経営を預かるものとして、大変申し訳なく思っている。50年以上お支払いしてきたが、今日の取締役会で無配を決定した。この状況を重く受け止めている。不退転の決意で業績を回復し、復配し、ソニーを立て直す。これが私の責任。経営陣一同、構造改革をやりきることに人力を尽くす」と語った。

 吉田氏は、同分野の営業権全額の減損約1800億円を営業損失として計上した仕組みを説明した。

営業権計上の仕組み 営業権計上の仕組み
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 「Sony Ericssonの合弁体制から100%持ち分とした際に構成価値は14億ユーロと評価され、50%持ち分の対価は7億ユーロ。Ericssonとの知的財産権のクロスライセンスを締結し、重要な特許群を取得し、これらが3億5000万ユーロとなったことで、合計で10億5000万ユーロ(1072億円)を支払った。一方で、Sony Ericssonは6億ユーロの債務超過となっており、構成価値の14億ユーロとの差額である20億ユーロのうち13億ユーロが営業権、残りが無形固定資産として計上された。ソニーは、8年で償却している。当時に比べて為替が大きく変化しており、円安ユーロ高となっているため、現在のレートでみた営業権の残高は1800億円まで増加している」

 今回の通期見通しの下方修正は、営業権全額の減損について反映したものであり、モバイル・コミュニケーション事業の15%の人員削減に伴う構造改革費用については含まれておらず、「下振れるリスクなどについては中間期決算で説明する」(吉田氏)としている。

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