ポケラボ、アクセルマーク、みんなのウェディング--M&Aやスピンアウトを決断した経営者が体験した変化

モリジュンヤ2013年09月17日 14時00分

 起業家予備軍や若手起業家に向けて、インキュベイトファンドが開催した「Incubate Fund Days(以下、IF Days)」。「1日で学ぶ経営者への道」と題したConference Dayでは、創業期や成長期など、企業が成長する各フェーズについて、同社が支援する経営者らによるセッションが繰り広げられた。

 「M&A・スピンアウトという決断とその後の事業成長」というテーマで開催された5つ目のセッションでは、ポケラボ代表取締役の前田悠太氏、アクセルマーク代表取締役の尾下順治氏、みんなのウェディング代表取締役の飯尾慶介氏がゲストに登壇。モデレーターはインキュベイトファンド代表パートナーの村田祐介氏が務めた。

M&Aやスピンアウトを経験した経営者たち

 登壇したゲストたちは、M&Aやスピンアウトした経験を持つ経営者たち。前田氏はポケラボが2012年10月にグリーによる買収を経験。尾下氏はベンチャーキャピタルからモバイル検索サービス「froute.jp」を運営するエフルートへ出向し、エフルートの代表取締役社長に就任した後、セプテーニ・ホールディングス子会社で携帯電話向けコンテンツを展開するアクセルマークとの合併を経験し、合併後はアクセルマークの代表取締役社長に就任している。飯尾氏はディー・エヌ・エー(DeNA)で「ビッターズ」の運営を経験した後、社内の新規事業として「みんなのウェディング」の運営を開始。分社化して会社員から経営者となった背景がある。

 彼らがM&Aやスピンアウトを意識していたのは一体いつからだったのだろうか? 前田氏は「最初から意識していた」と語り、尾下氏は「最初はIPOを考えていたが、モバイルの検索エンジン事業が伸びなかったときにM&Aを意識した」と語った。

 M&Aではなくスピンアウトした飯尾氏は「マネタイズはうまくいっていなかったが、クライアントからの評判はよかった。2、3年経てば伸びる可能性は十分だと考えていたが、社内での評判はよくなかった」と説明。「サービスを開始してからすぐにスピンアウトを考えた。買ってでも自分でやりたいと思っていた」(飯尾氏)とした。

M&Aやスピンアウトにおける判断の決め手

 飯尾氏は「社外に出たほうが成長できると思っていた」と当時を振り返る。分社化についての話をもらったタイミングですぐに決断したという。「退職して自ら立ち上げるのではなく、スピンアウトにした理由は?」という村田氏の質問に対し、「CGMサイトはユーザーからの信頼があって初めて成り立つもの。成長させたサイトを1から自分で作るのは厳しい」とした。

 もともとIPOを意識していたという尾下氏。IPOが難しい状況になったところで、買収を検討するようになったという。「モバイルの領域であることと、エフルートのチームの在り方を残せることを重視した」(尾下氏)。投資家の人々から多様な意見をもらうことで、自分の中で大切にすべきことが明確になっていったと語った。

 もともとM&Aを意識していたという前田氏。その理由について「時短できることが最も重要だった」と語る。ソーシャルゲーム業界のスピードは早く、端末のリッチ化にともなってアプリもリッチ化していく。そうなると体力のある会社しか残っていくことはできない。そんな状況のポケラボにとって、グリーからの買収の話は想定していたものではなかったという。「グリーと組むことが一番早く成長できる道だと考え、決めた」(前田氏)とした。

ベンチャーキャピタリストの役割

 M&Aやスピンアウトなどが行われる際、ベンチャーキャピタリストはどのような役割を果たしたのだろうか——そんな村田氏の質問に対し、前田氏は「レファレンス(参照、参考)としての役割を果たしてもらった」と答えた。「当事者が言っても説得力のないことを(第三者の視点から)言ってもらえて助かった」(前田氏)。

 尾下氏は「自分の考えをブラッシュアップしていく上でのいい相談相手」だとした。ソーシャルゲームの開発に力を入れていきたいと考えていたセプテーニグループに対し、インキュベイトファンドの本間真彦氏が「ゲーム会社として成功するには作り手がのびのび作れる環境が大事。尾下さんはクリエーターと食い合わないマネジメントができる人」とコメントしていたことがレファレンスとなり、当時はまだゲームの開発実績がなかったエフルートの買収につながったという。

 大手企業からのスピンアウトを果たした飯尾氏は、分社化において投資家が果たした役割について「経営の素人である自分に対して、アドバイスをもらった」とコメント。「立ち上がりの一番苦しかったときに助けてもらえた」(飯尾氏)とした。

M&A後の経営面での変化

 飯尾氏は「DeNA内の新規事業としてサービス運営していた頃から、自分は経営者の気持ちでやっていた。だが実際に分社化すると、ありとあらゆることを考えなくてはいけなくなり、実際には100分の1も経営者としての仕事はできていなかったことがわかった」と、スピンアウト前と後での経営に対する考え方の変化を語った。

 「社長のコンディションが株価に影響することもある」(尾下氏)とし、未上場企業から上場企業の一員となって生まれた変化についてコメント。前田氏は、買収後グリー内でどのように一緒に開発を進めていくのかについて考えるようになったと、買収後の変化についてコメントした。

 セッションの最後は、これから起業を考えている人たちへのメッセージが語られた。前田氏は「バイアウトはあくまで手段。だが、手段を知っておくと可能なことが増える」「上場準備をちゃんとしておくと、M&A時にも有用」だと語った。

 尾下氏は会社経営を土俵に例え、「土俵際の会社は誰も買いたくない。小さめの土俵を意識して、危機感を持つようにしておくことが重要」とした。最後は「想いがあるのならぜひ起業して大勝を狙ってほしい」という飯尾氏からのメッセージでセッションは締めくくられた。

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