アプリシフトや投資、起業家マインド育成で”永久変革”掲げる新体制に--ミクシィ決算

岩本有平 (編集部)2013年05月15日 18時08分

 ミクシィは5月15日、2012年度通期決算を発表した。売上高は126億3200万円(前期比5.3%減)、営業利益は25億7400万円(同17.3%増)、経常利益は26億2900万円(同24.8%増)。純利益は16億5400万円(同120.7%増)となった。

 課金売上については、ディー・エヌ・エー(DeNA)と展開するスマートフォン版「mixiゲーム」のリニューアルを控え、新規タイトルのリリースを抑制したことため、第4四半期は前四半期比から減少した15億3300万円となった。また広告売上についても、スマートフォン広告が拡大する一方でフィーチャーフォンやPCが減少。前四半期比で減少した8億5600万円となった。2013年通期の業績予測については、売上高が120億~135億円、営業利益が10~20億円、経常利益は10~20億円、純利益は5~11億円としている。mixiゲームのリニューアルによる課金売上の増加を見込む。

 既報のとおり、6月の株主総会を経て代表取締役社長の笠原健治氏が取締役会長となり、新規事業に取り組む。同日開催された決算説明会で笠原氏は、2012年10月に打ち出した「ユーザーファースト」の取り組み、そして今の組織を生かせる体制作りについて検討してきたと説明。「(Find Job!やmixiなど)4つのサービスを立ち上げてきたが、新規事業を生み出すところに一番価値を出せる。会長として新しい体制をサポートすると同時に、新規事業を立ち上げることでよりいっそうの変革ができるチームを作る。引き続きご支援頂きたい」(笠原氏)と語った。

 また、新たに代表取締役社長となる朝倉祐介氏について「大手戦略系コンサルティングファーム(マッキンゼー・アンド・カンパニー)でコンサルタント経験を積み、ネットベンチャーでは社長を務めた。時に冷静に、時に情熱的に判断ができる。ジョッキー(騎手)を目指したこともあり、起業家精神も持っている。年も若く、魅力的な人物」(笠原氏)と評した。

 自身が立ち上げたネイキッドテクノロジーの買収によって2011年にミクシィに参画した朝倉氏。ミクシィとの関わりについて、「初めてmixiと出会ったのは学生の頃。笠原は東大の先輩でもあるが、それほど年齢も変わらない人間が世の中のコミュニケーションをかえるんだ、東大というエスタブリッシュなところからこんなサービスが出るのか、とあこがれと尊敬の気持ちを持っていた」(朝倉氏)と説明。新社長として「バトンを継いでいくことは、10年前を考えると不思議でもあり、重い責任を感じている。これからまだまだま成長を続けるぞ、というところを新しい経営陣でやっていく」(朝倉氏)とした。

「永久変革」の覚悟で3つの取り組みを進める

 朝倉氏は「永久変革」のキーワードを掲げて、新生ミクシィでの3つの取り組みを語る。1つめの取り組みは「SNS『mixi』内外での収益拡大」だ。

 これまでいいサービスを追求してきた一方、結果として想定した業績がついてこなかったというミクシィ。今後はmixiらしいサービスと利益の双方を追求できる体制を作ると同時に、mixiを運用してきたノウハウをmixi以外のサービスにも展開していくという。広告やマーケティング事業をとりまとめていた「パートナービジネス本部」を7月1日付けで「ミクシィマーケティング」として分社化。広告ソリューションやDSP事業、ポイント事業で社内外の取り組みを強化する。

 2つめの取り組みは「外部事業の積極投資」だ。投資子会社「アイ・マーキュリーキャピタル」を7月1日付けで設立し、50億円規模の投資を実行する。対象とするのはスタートアップからレイターステージまで。またITを中心としたオンラインの事業だけでなく、mixiのユーザーや、同社の資産とシナジーのあるベンチャーに対しての投資を進める。「基本的には短期でのキャピタルゲインを求めるのでなく、長期保有による利益を期待する」(朝倉氏)

 3つめの取り組みは、「アントレプレナーの輩出」だ。朝倉氏はこれこそが前述の2つの取り組みの実現に不可欠だと説明する。「Find Job!から始まったミクシィがここまで大きくなった要因はひとえに笠原のアントレプレナーシップ。一方でmixiの大成功で老成化したのは否めない。過去を断ち切って自分たちの価値を作るマインドセットに戻ることが重要」(朝倉氏)

 ミクシィ社内の優れた人材に権限を委譲し、社内でもアントレプレナーシップを育成していくほか、社内外を問わない人材の登用をしていく。「競馬に例えればG1、ダービーに勝てるような人材を育てたい」(朝倉氏)

SNS「mixi」はネイティブアプリ中心に

 また、ミクシィ取締役最高事業責任者となる川崎裕一氏は、SNSに「つながりをつくる」ためのものと「つながりを強める」ためのものがある中、mixiが「スマートフォンのネイティブアプリでつながりをつくる」という方向性に特化すると説明。ネイティブアプリの開発者を4倍に増やすほか、単一機能のアプリを複数公開。現状2本のアプリを50本まで拡大するとした。LINEに代表されるメッセージングサービスについても提供する可能性を示唆した。

  • 取締役会長となる笠原健治氏(左)と新経営陣(中央が取締役社長となる朝倉祐介氏)

 この“ネイティブアプリシフト”に合わせて、重要とする指標を「アプリ会員数(アプリダウンロード数)」と設定。「MAU(月間アクティブユーザー)やDAU(日間アクティブユーザー)の重要性も感じているが、大きい成長の余地としてはスマホ(スマートフォンアプリ)の数を重視していきたい」(川崎氏)とした。

 約1年前に、一部報道で身売りについても言及されていたミクシィ。笠原氏は現在も50%強の株式を持つ筆頭株主のままだ。同氏は今後保有比率を下げる可能性について質問を受けたところ、「特に(売却の)予定はない」と回答した。

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