ネット選挙解禁で考慮すべき脅威(前編)

 マカフィーは4月19日、自社のブログ「McAfee Labs ブログ」にて、ネット選挙解禁にあわせて「ネット選挙解禁で考慮すべき脅威(前編)」という記事を公開している。

 このブログは、サイバー戦略室 シニア・セキュリティ・アドバイザー、佐々木伸彦氏が執筆しており、以下がその内容だ。

 先週12日に衆議院本会議で可決されたインターネットを利用した選挙活動を解禁する公職選挙法の改正法案が、本日19日、参議院本会議で可決、成立しました。これにより、これまで日本で規制されていたインターネットを利用した選挙活動(ネット選挙)か解禁されます。

 ネット選挙解禁により、政党や政治家は選挙期間中でもインターネットを利用した積極的な情報発信が可能となります。また、情報の取得や比較が容易になることや直接対話の可能性が広がるため、政治への関心が高まり、投票率(特に若年層の投票率)が向上することなどが期待されている一方で、インターネットならではの脅威にも注意が必要です。

 ネット選挙の先進国である米国では、ネット選挙に関する規制はほとんどなく、1992年に民主党の大統領候補ブラウン氏が予備選挙で電子メールを利用して選挙活動を展開したことが最初と言われています。これ以降、選挙活動における電子メールやネット広告は徐々に重要視されていき、クレジットカードによるネット献金が可能になると、資金力に貧しい候補者であっても、インターネットを活用することで多額の資金を集める候補者もでてきました。インターネットの活用が盛んになると、やはり、ネットならではのサイバー犯罪も発生するようになります。2004年に行われた米国大統領選挙では、民主党候補のケリー陣営を装ってネット献金を募るフィッシング詐欺が発生しています。

 今日、フィッシング詐欺は珍しいものではなくなりましたが、サイバー犯罪者は、あらゆる手段を利用して、いかにして金儲けをしようかと常に企んでいるため、インターネットを利用して情報を取得しようとする有権者は、誤った情報に騙されないよう、メール送信者やWebサイトの安全性などについて十分な注意する必要があります。

 韓国では、去年、ネット選挙が全面解禁になっています。去年行われた韓国大統領選挙では、投票率が前回と比べ13%ほど上がり、若年層の積極的な政治参加につながったと言われています。2002年の盧武鉉氏の当選に象徴されるように、韓国では、これまでもインターネットを活用した選挙活動が積極的に展開されてきました。しかし、ネット選挙が盛んになるにつれ、過度な誹謗中傷やネガティブキャンペーンが増加するなど、社会的な問題になっていたため、2005年の公職選挙法改正によって、「インターネット選挙報道審議委員会」「サイバー選挙不正監視チーム」が設置され、ネット選挙に関して一部規制が行われていました。

 また、2011年に韓国で行われたソウル市長補欠選挙では、中央選挙管理委員会のホームページがDDoS攻撃(*1)を受け、サーバが一ダウンする事件が発生しています。この事件は、与党の国会議員秘書が投票率の引き下げを目的に外部業者にDDoS攻撃を要請していたことが判明し、事件後に逮捕されています。去年の総選挙(国会議員総選挙)でも、中央選挙管理委員会のホームページが再びDDoS攻撃を受け、一時的に閲覧できない事態が発生しています。

 今回の改正では、なりすまし(禁固2年以下/罰金30万円以下、公民権停止あり)やメール送信者に対する氏名、電子メールアドレス等の表示の義務付け(怠った場合は禁固1年/罰金30万円以下、禁固の場合に公民権停止あり)など、懸念されている問題に対する罰則も盛り込まれています。インターネットの世界では様々なサイバー犯罪が日々発生しており、最近ではSNSやサービスサイトのアカウントに対する不正アクセスが数多く発生しています。アカウントの乗っ取りやフィッシング詐欺などにあわないために、日頃から、基本的なセキュリティ対策を徹底することが重要です。

(*1)DDoS攻撃=多数のコンピュータから標的とするサーバ等に大量の通信を送信することで、サービスを提供できない状態にする攻撃。

この記事はMcAfee Blogネット選挙解禁で考慮すべき脅威(前編)からの転載です。

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