優秀なエンジニアを正しく評価し、育てる環境を--新経済サミットで起業家やRuby生みの親が提言

 新経済連盟は4月16日、「新経済サミット2013」を開催した。ベンチャー起業家や大企業の関係者など1500名以上が集まる中、米国を中心としたIT業界の起業家や、LINEやサイバーエージェント、GMOインターネット、楽天などの国内企業が講演やパネルディスカッションをおこなった。

 第2セッションでは、「日本から破壊的なイノベーションを起こすには?」というテーマのもと、MIT Media Lab所長の伊東穣一氏、LINE代表取締役社長の森川亮氏、グリー代表取締役社長の田中良和氏、Ruby開発者のまつもとゆきひろ氏、GMOインターネット(GMO)代表取締役会長兼社長でグループ代表の熊谷正寿氏が登壇し、パネルディスカッションを繰り広げた。モデレーターは、日本経済新聞社の関口和一氏が担当した。

事業計画は作らず、走りながら考える

 まず、伊藤氏がプレゼンテーションをし、「インターネット登場によって情報伝達速度が上がり、予測不可能な時代となった」と説明。これまでの事業計画を立て、プランを実行するというルールに沿った事業の進め方が通用しなくなったとした。「テクノロジーの進化によって、イノベーションコストも下がってきている。その中で、中央管理型の組織から、無秩序でカオス型の組織になり、そこからイノベーションは生まれてくる」(伊藤氏)

 現在では、全世界1億4000万人に使われているLINE。リリース当初はメッセージ機能に特化していたが、これからのスマートフォン時代において、コミュニケーションのあり方が変わってくることに着目したからだ森川氏は説明する。

 LINEのこれまでの急成長も、事業計画を作らずスピード感をもって対応したことが要因だと語る。「戦略を発表せず、目標をあいまいにすることで、社員の中で『何かを生み出さないと生きていけない』というカオスな雰囲気が生まれた」(森川氏)とし、計画実行も大事だが、計画を作るとそれを壊すことはできないため、成功のために柔軟な動きが求められているとした。

 かつて楽天創業期に社員として勤めていたグリーの田中氏。「これからの社会は変わる必要がある。そのためにITという新産業はこうあるべきと語るのではなく、実例をもって社会を変えていくことが大事だ」と、新経連理事でもある楽天代表取締役会長兼社長の三木谷浩史氏と大学生時代に話した内容を、今も思い出しながら考えることが多いという。日本で始めたサービスで世界に挑戦することこそ、イノベーションを生み出すアントレプレナーシップだと語る。

 プログラミング言語の「Ruby」の生みの親であるまつもと氏も伊藤氏の意見に同意し、予測不可能な世界だからこそ、事業計画よりも「まずは自分で作ってみる」ということの重要性を主張した。「1人のエンジニアが作ったものが全世界に評価され、世界を変える可能性がある時代になった。しかもその変化のスピードは年々早くなっている」(まつもと氏)。今の時代を生きるためにも、世界を変えるエンジニアは、まずは何かを自分で作ることから始めるべきとした。

 ドメイン事業やサーバー事業など、インターネットの仕組みを支えるGMOは、55カ年計画という超長期計画を立てているが、一方では、個々のサービスには計画を持っていないのだという。「イノベーションコストが下がっているからこそ、失敗を許容してやってみることが大事。走りながら考えるくらいのスピード感をもってリスクを取るべきだ」(熊谷氏)。また日本という経済規模に満足することなく、日々リスクを背負って挑戦することから、イノベーションが起きるとする。

優秀なエンジニアをどう集めるか

 いかにして日本で破壊的イノベーションを起こすかについて、話題は移行した。教育システムの転換を起こすべきと語る伊藤氏は「これまでは組織やシステムに適合する教育内容だったが、これからはクリエイティブを創発する教育の拡充が必要」と語り、既存の教育システムの脱却から、イノベーションは生まれるとした。

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