最新SEMは複数デバイスを横断するユーザーへの意識が必須

 デジタルマーケティングのイベント「ad:tech Tokyo 2012」が10月30日~31日に開催された。2日目のカンファレンスの中から、ROIトラックの「変化するサーチマーケティング:サーチのノウハウと知見がマーケティングの基本を作る」の様子をお伝えする。

 このセッションでは、絹田義也氏(ヤフー マーケティングソリューションカンパニー プロモーション広告本部 スポンサードサーチ シニアディレクター)がモデレータを務め、ロンダ・ハンソン氏(Concur Sr. Director, Global Search Marketing)、渡辺隆広氏(アイレップ 取締役CSO SEM総合研究所 所長)、小野雄高氏(グーグル アカウントストラテジー&プランニング 統括部長)、ケヴィン・ライアン氏(Motivity Marketing CEO)が、サーチマーケティングの現状について語った。

 冒頭で絹田氏は「サーチの世界が変わりつつある。従来のPCの世界から、スマートフォンそしてタブレットの世界へと変わっている。さらにPCの世界が、どういう風に変わっていかないといけないか議論したい」と述べた。

 これを受けてハンソン氏が、広告市場における近年の成長はオンラインマーケティングが担っており、さらに現在のインターネットデバイスのシェアは、PCが大半を占めるもののスマートフォンとタブレットが急激に成長していることを各種調査データで示した。

 さらに「過去1年のトラフィックの変化を見ると、ユニークユーザーでスマートフォンは2倍に、タブレットは291倍にもなっている。デバイスが増えたことで、全体のトラフィックは伸びているものの、それぞれのデバイスに最適化していかないと、全体のコンバージョンが落ちていく」と、デバイスシフトへの対応が急務であると警告した。

 さらに、モバイルデバイスではPCと比較すると検索結果ページのファーストビューで見える情報量が少ないことから、より目につきやすくするため「リスティングやSEOでの競争が激しくなるだろう」と予測する。

 これを受けてグーグルの小野氏が、日本でも同様にスマートフォンでのクエリーが前年比で200%も伸びているが、業種によってはそれ以上の伸びを見せていることを明らかにした。そして、「不動産や自動車など高額な商材はタブレットのトラフィックが多い。タブレットのユーザーが、情報に敏感な高額所得層に偏っている」という、デバイスごとにユーザーの傾向に違いがあることを示した。これに対して絹田氏も「今は自然増がまだ多い時期で、全体で伸びているものの、業種によって傾向が違ってきている」と賛同した。

 「検索のシチュエーションが変わってきており、何かを見ながら、誰かと話をしながら、街を歩きながら検索している。特に、業界で見ると飲食業の伸びが圧倒的に高い。全体でクエリーが伸びているが、スマートフォンでのサーチにマッチした業種が頭ひとつ伸びている」(絹田氏)

 渡辺氏からは、ユーザーエクスペリエンスの観点からスマートフォン時代のサーチエンジンマーケティングに、多くの企業が対応できていないとの報告がなされた。

 「ある検索タスクを達成するにあたって、同じユーザーが複数のデバイスを使い分けることがある。ホテルの宿泊予約をする場合や、商品の買い物をする場合は、スマホだけで検索が完結する人は少ない。気になる商品を自宅で調べて、店頭に行ってスマホで価格を比較したりレビューを確認して購入する。スマホで検索したことを、帰宅してからPCで検索するし、その逆もある」という。最近のユーザーの検索に関する行動が、デバイスを横断したものになってきているわけだ。

 その上で「広告主が検索マーケティングを考える上で、PCのサイトとスマホサイトをどう統合していくのか。どういうユーザーエクスペリエンスを実現するのか、全体を統一して考えることが重要。日本市場を見ていると、そこの観点がまだなく、ユーザーエクスペリエンスを考えた設計がなされていない」と指摘した。

 例として、ユーザーエージェントに基づくリダイレクト設定が不適切なため、公式の商品情報ページがPCからは検索結果に表示されるのに、スマホから検索すると表示されなかったり、レスポンシブデザインを採用したもののPCとスマホでのユーザーのニーズの把握が不適切なため、スマートフォンからは使いづらいページになっていたり、といったケースを紹介した。

 ユーザーの行動が変化し、多様化していることについてはライアン氏からも「PCとモバイルとでの傾向は、国やデバイスごとに異なっている」と指摘があった。

 さらに「ユーザーの行動がマルチデバイスで、マルチウィンドウを前提にしたものになっている。テレビを見ているユーザーの77%が、同時に他のデバイスを操作しているという調査結果もある」と、ユーザーの情報との接点が一義的に定義しづらい状況にあるという。

 さらに渡辺氏の指摘と同様に、ユーザーは複数のデバイスから同じキーワードで検索しているが、状況に応じて求める情報が異なってきており、企業はそれに対応しなければならないと述べた。

 「デバイスだけが存在しているわけではなく、そこには必ずユーザーがいる。デバイスを横断したユーザーの行動を理解しなければ、ユーザーの行動を途中で分断してしまい、最終的な購入やエンゲージメントに至らない」と、単なるスマートフォンやタブレットへの対応という点だけに注目しがちなマーケティング担当者に警鐘を鳴らした。

 デバイスの多様化によって、ユーザー行動が複線化、複雑化しているとの各パネリストからの報告を受けて、最後に絹田氏から「ユーザーのコンテクストにあわせてマーケ手法を変えていくということは、もちろんテクニカルな面もあるが、ユーザーエクスペリエンスを考えることがなにより大事」だと、まとめた。

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