シャープ次期社長の奥田氏は実務派、現場主義者--会見詳報

 シャープは、2012年3月14日午後4時から大阪市天満橋の帝国ホテル大阪で、片山幹雄社長と奥田隆司次期社長が出席する記者会見を開催した。

 会見の冒頭に片山社長は「2008年におきたリーマンショックにより世界経済が低迷し、エレクトロニクス業界の競争環境も大きく変わった。当社では、地産地消戦略やソーラーエネルギーカンパニー戦略、液晶の事業構造改革などに取り組んできたが、本年度は過去最大の赤字となる見通しを発表した。株主をはじめシャープを支援してくださる方々に対して、経営者として大変申し訳なく思っている。欧州の金融危機や歴史的な円高、さらには東日本大震災やタイの洪水被害などの外部要因もあったが、業績悪化の主因は主力商品の市況悪化にタイムリーに対応できなかったことによるもの。この対策については、改めて説明する機会を持ちたい」と挨拶。

 続けて「私が社長を退任して会長に就任するのは、エレクトロニクス業界を取り巻く環境の変化が激しく、社長一人で目配りをするのが難しいことに加え、当社の対外業務も多忙になっているため。新社長に奥田を指名し、二人三脚でビジネテモデルの変革に取り組むことにした」と語った。

 さらに「奥田はAVシステム事業本部の本部長としてAQUOSを世界ブランドに育てたほか、海外での調達、生産、販売、そして他社との提携を担当するなど、国内と海外の第一線で経験を積んできた。ひとことで人物を評すると、現場に詳しい実務家といえる。シャープのこれからの新たな成長には、これまでの事業構造を見直し、グローバルで戦える仕組みづくりが不可欠であり、その指揮を執るのに最適な人物として、現場に精通した奥田を指名した」と語った。

 また「この時期に発表した理由は、次年度の予算審議を新しい体制で行い、4月1日から始まる事業年度での執行スピードをあげて取り組みたいとの理由からである。代表取締役としての承認は6月の株主総会および、その後の取締役会後となるが、6月末を待つことなく新体制での事業構造改革にあたりたい」と理由を説明した。

 片山社長は「社長の5年間は大変厳しい経営環境だったが、懸案であった液晶の事業構造改革や、太陽電池や液晶の地産地消の推進により、グローバルで戦える基盤が作れた」と自らの社長としての成果を振り返った。

「海外事業の強化に本気で取り組めば、十分にビジネスチャンスがある」

 一方、奥田次期社長は「3月初めに片山から『次を頼む』との言葉で、社長就任を打診された。驚きのあまり言葉を失い、自分が適任だろうかと悩んだが、『シャープの成長には、ビジネスモデルの変革とグローバルで戦う仕組みづくりが必要だ。自分もサポートするので思い切ってやれ』との力強い言葉で覚悟を決めた。これまで国際資材本部、シャープマレーシア、AV事業本部をはじめ、海外での生産や戦略市場開拓、事業全般を統括するなど、国内外での様々な部門を担当してきた。その際、生産現場、販売現場にまで入り込み、社員の創意を引き出す仕事の仕方をしてきた。立場が変わっても現場を巻き込んだ仕事を心がけたい」と語った。

 また、「当社には液晶や太陽電池のほかに、健康環境機器においても独自の技術がある。その応用範囲も広く、特徴のある商品を生み出すDNAもある。今後、国内外の社員を巻き込んでビジネスモデルを変革し、グローバルで戦える仕組みを作ることで、新たな成長のドライバーにすることは可能であり、そこにこそ、私の役割があると認識している。ここ数年、海外の最前線で仕事をしてきたが、シャープが海外事業の強化に本気で取り組めば、十分にビジネスチャンスがあると確信を持っている」と語った。

 さらに、「シャープが業績と信頼を回復し、社会の期待に応えていくためには、片山と二人三脚で財務体質の改善やビジネスモデルの変革を進めるとともに、誠意と独自の技術をもって新しい市場を創造するような商品を次々と創出していきたいと考えている。全社員一丸となって、業績を必ず立ち直らせ、シャープを支援していただいているみなさまの期待に応えられるよう、粉骨砕身で努力したい」と述べた。

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