「円高は一企業の努力でカバーできない」エルピーダ社長の会見 - (page 2)

別井貴志 (編集部)2012年02月27日 23時36分

 このような経緯説明の後、記者からの質問に答えた。以下がその主なやり取りだ。

--なぜ今日なのか。日本で唯一のDRAMメーカーとして今後どう考えているのか。半導体事業自体は。

 最終的に決めたのは今日の15時。今日までにいろんなところからオファーがあって、最終結論が出るということがあったので、それを待っていましたけれども、具体的な案は出なくて、このまま自力で事業を継続し資金繰りが破綻した場合、エルピーダの企業価値は著しく毀損し、それともう一つは長期的なキャッシュフローを見たときにはかなりリスクがあるということで、結論を出した。今後についてはあるべき姿についてこれから詰めていきたいと考えております。

--約1カ月前の10~12月期の決算会見の時は、資金繰りは3月末まで問題ないと発言していたが、この1カ月で資金繰りが急激に悪化するようなことは何かあったのか。たとえば金融機関からリファイナンスに応じないと最後通告があったのか。

 資金繰りについては3月末までは大丈夫だと我々は考えておりました。しかし、その先を見てみますと、やはり資金がショートしてくるだろうと、並行してリファイナンスは非常に難しいと理解しておりましたので、いまがベストのタイミングではないかと判断して申請しました。

--リファイナンスはすべての銀行がだめだということだったのか。

 そこについては具体的にお答えすることはできません。

--半導体がここまで厳しくなったのはなぜだと思うか。DRAM自体がすでに儲からなくなってしまった理由は?

メディアに不満をぶつける場面もあったエルピーダ代表取締役社長 兼 CEOの坂本幸雄氏 メディアに不満をぶつける場面もあったエルピーダ代表取締役社長 兼 CEOの坂本幸雄氏

 半導体が非常に苦しくなっていることは、日本の半導体シェアを見てもらえばみなさんよくおわかりになると思います。日本の占有率は過去70~80%いっていたのに、いまは15%ぐらいしかない。一番大きな部分というのは、為替がやはり円高に振れていること。これは、我々の会社で見ますとリーマンショック前と今とでは、韓国のウオンと70%もの違いになるんですね。為替での競争力が完全になくなってしまった。70%の差はいかんともしがたいです。エルピーダのDRAMの利益率は、リーマンショック前よりも圧倒的にいいんです。やはり1年間で起きた為替変化は一企業の努力ではカバーしきれない。そのぐらいのところまで来ていると思います。

--外部環境が苦しいのは理解できるが、公的資金を日本政策銀行まで入れながらこういうかたちになって、経営責任はどう考えているのか。自身は辞めるのか。また、DRAMを日本でやる意味はあるのか。

 私自身はある程度会社の行く末をちゃんと見届けなければ、ということを考えています。責任とって辞めなさいというのは非常に簡単なんですけれども、やはり経営者としてきちんとしてから覚悟を持ってやっていきたいと思っています。

 DRAMを日本で作る意味があるかどうかは、あまりにも性急な話で、たとえば為替が1年後にどう変わるんですかって質問されたら、おわかりになりますか?(と、質問した記者に問いかけ、記者は「なかなかわからないですけど為替は厳しい状況が続くんじゃないでしょうかね」と答えた)。その程度しかわからないでしょ。為替についてはわからないんです。

 DIP型(破綻企業の経営陣が退陣せずに更生計画などに関与する会社更生手続き)というのは会社更生においても経営陣が退陣せず、引き続き経営を担って債権者の方々へのご迷惑を最小限に抑えるというもので、本件もまさにこのとおり。これは、半導体業界の専門制にあります。何もしらない素人の管財人が再建できるのかということを考えると、引き続き担っていただく方がいいというわけです。

--再建して、かなり規模を拡大しないと同じことを繰り返す気がする。DRAM事業をやっていく上で、シェアや設備投資はどのくらい必要か。

 DRAM業界で生き残っていこうとしたらシェアとしては30%ぐらいないとだめでしょう。その算段はいまは申し上げられません。投資金額については年間400億円ぐらいかかるでしょう。ただし、リーマンショック以降にエルピーダはローコストの設備を有したため、今後大きな設備投資が必要になるということは考えづらいです。

 いろいろなオファー(その内容は話せない)があるということで、私たちは期待していたのだが、残念ながら具体的な話にはならなかった。

--韓国に負けたということだと思うが、日韓両政府の為替支援体制などについてはどう考えているか。

 いまはそれを言っても負け惜しみになりますので。経営判断が誤っていたと思いますけれども、いまほど為替が円高に振れることは考えられなかったです。

--早めに海外へ進出するなど手があったのではないか。

 今回の円高もさることながら我々の売上の85%~90%は海外。利益率が高くても売上が極端に落ちたということが我々の経営を圧迫しました。

 --日本はDRAMで破れ、システムLSIで破れ、こういう現状で、それでもなおDRAMを続けるということは敗戦を繰り返すことにはならないのか。

 たぶん技術を見ていただければよくわかると思うのですが、20ナノメートルのDRAMをまともに作れる企業は世界にエルピーダともう1社しかいないんです。30ナノぐらいから技術が変わってきており、世界中の顧客がエルピーダ頑張ってくれと言っていることも事実です。更正法の適用を申請したことについても、世界中の顧客から頑張って再生させて欲しいといわれ、あなた方の製品がないと我々は製品を作れないということをおっしゃっている顧客がほとんどです。

--今後も社長が経営していくということで、どうやって再建させるといえるのか、その担保はなにかあるか。今後どのように再建していくのか、もっと具体的にわかりやすくいってもらわないとわからない。

 我々の進んでいる道を見ていただいて、言葉では何とでも言えますので、行動を見て欲しい。みなさんは常に時間だけが勝負のような記事の書き方をしているんですけれども、たとえば、我々がいろんなところと提携の話などを進めるとみなさんがすぐ記事を、我々がまだ何も決まっていない、相手と秘密事項の契約も結んでもいないのに、どこからか聞いてきた話をすぐに記事にしてしまう。そういうことがですね、どれだけ我々の提携関係を阻害しているか。日本の会社は知りませんけれども、世界中の会社の人たちは、そんな記事が載ったらもう提携の話はしないです。みなさんも、提携の話だとかそういうことはですね、もっときちんとしたデータなどがわからないうちにですね、どんどん記事を書くということは、ある意味では、日本のメディアの人たちは相当レベルが低いと思います。

--従業員のリストラは?

 いまは考えておりません。

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