中国アリペイを巡る問題が決着--アリババと米ヤフー、ソフトバンクが合意

別井貴志 (編集部)2011年07月29日 22時43分

 Alibaba(アリババ)傘下のオンライン決済サービスAlipay(アリペイ)の所有権が移転された問題を解決するために、アリババとその株主である米Yahoo、ソフトバンクが交渉を重ねてきたが、それが決着した。

 アリババグループは1999年に設立された中国最大のEC企業で、世界第大規模のBtoB電子商取引の一角であるAlibaba.com、中国最大級のショッピングサイトを運営するTaobao(タオバオ)、クラウドコンピューティングサービスを手がけるAlibaba Cloud Computing、ポータルサイトを運営するヤフーチャイナなどで構成される。

 Alibabaは2010年8月にグループ傘下のオンライン決済企業であるアリペイに、中国で新たに制定されたオンライン決済事業のライセンスを取得させるため、その株式をアリババのCEOであるジャック・マー氏ほかが株主となっている中国企業に譲渡した。これによって2011年3月31日にアリペイはアリババの連結子会社から外れたが、その譲渡に伴いさまざまな混乱があった。アリババの筆頭株主であるYahooは2011年3月31日まで、その譲渡については何も聞かされていなかったと主張する半面、アリババ側は連絡をしたと主張するなど対立も見られていた。2011年5月にアリペイは、中国人民銀行より中国で事業を行うライセンスを取得している。

 混乱や対立の後、関係者らで協議を重ねてきたが、その結果7月29日付けでアリババグループ、Yahoo、ソフトバンクの3者の名前で公表された内容によると、「アリババが、今後のアリペイの財政的成果(アリペイの上場や株式譲渡などを含む)を共有し、分かち合うことで合意に至った」としている。この合意は、交渉の結果、当事者間で合意した以下2つの方針に沿ったものだという。

  1. タオバオを含むアリババグループの価値を維持し続けるために、アリペイとタオバオの協力関係を構築すること
  2. アリババがアリペイの価値に見合った補償を受けること

主な合意内容は以下のとおり。

  • タオバオとアリペイは、現在の協力関係を維持する。またアリペイは、同社が提供する決済サービスをタオバオを含むアリババグループに優先的条件で提供し続ける。
  • アリババグループは、アリペイに対して一定の知財ライセンスを付与するとともに、アリババグループが保有する各種技術やソフトウェアサービスをアリペイとその子会社に提供する。アリペイは、その対価としてアリババグループに対し、ライセンス料やソフトウェアサービス料(当初はアリペイとその子会社の連結税引き前利益の49.9%相当)を支払う。
  • アリペイの上場または株式譲渡などに際しては、アリババは最低20億ドルから最高60億ドルの範囲で、実際のアリペイの企業価値に37.5%を乗じた金額を受領する。

 また、合意内容の公表に伴い関係者らもコメントを発表している。

アリババのCEOであるジャック・マー氏
この数カ月、私たちはパートナーであるYahooとソフトバンクと協調して交渉を続けてきましたが、各社の意向に沿った形で合意に達することができました。この合意はアリババとそのお客様、従業員そして株主などの各ステークホルダーにとっても好ましいものです。さらに、もっとも重要なことは、アリペイの事業継続に必要なライセンスを獲得できたことです。
YahooのCEOであるキャロル・バーツ氏
このたびの合意は、Yahooやその株主、また各社にとっても、良い結果となりました。今回の建設的な協議の結果、この合意でタオバオの価値を維持し、アリペイの利益分配を受けるとともに、アリババがアリペイの上場や株式譲渡等に関与する仕組みが出来上がりました。アリババとその経営陣はあらたな価値を創造するすばらしい実績があり、そのアリババとアリペイの更なる成功に引き続き関与していくことを楽しみにしています。
ソフトバンクの代表取締役社長である孫正義氏
このたびの合意に至ることができたのは、アリババ、ソフトバンク、Yahooのトップ同士の長期に渡る強固な信頼関係があったからだといえます。この合意は、ジャック・マー氏の力強いリーダーシップのもとで目覚しい成長を続けるアリババグループの基盤となるものです。アリババグループは世界で最も大きく、また最も早い成長を遂げている中国のインターネットビジネスにおいて明確なリーダーであり、アリペイとの密接な関係は、これからのアリババグループの業界トップの地位を強化するものになるでしょう。

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