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“21世紀版街頭テレビ”デジタルサイネージ市場の可能性を探る
デジタルサイネージは街頭テレビ以来の公共メディア――。1兆円規模を目指すサイネージ市場だが、ディスプレイやネットワークの標準化、コンテンツの権利問題、人材など突破しなければならない課題は山積みのようだ。日本独自で発展した場合、またガラパゴス化と言われないためにはどうすればいいのか。
6月7〜11日に開催されたイベント「デジタルサイネージ ジャパン(DSJ)2010」で、「街角に入り込むインターネットとデジタルサイネージの挑戦」と題したパネルディスカッションが行われた。パネリストとして、村井純氏(慶應義塾大学環境情報学部長教授)と、元マイクロソフト社長の古川享氏(慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授)が登壇。モデレーターは、中村伊知哉氏(慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授)が務めた。
パネルディスカッションの様子。(左から)中村伊知哉氏、村井純氏、古川享氏
中村氏は冒頭で、「サイネージはテレビやPC、携帯電話に次ぐ新しいメディアとして、産業、文化、コンテンツに注目が集まっている。早期に1兆円規模にしようと取り組んでいる」と述べた。中村氏が理事長を務めるデジタルサイネージコンソーシアムは現在、会員企業150社で構成。サイネージに関する技術の開発、広告の指標、実証実験などを進めている。
サイネージも標準化に期待
古川氏
DSJでは、大型ディスプレイや3D対応ディスプレイ、電子ペーパーといったさまざまなサイネージ端末が展示されていた。「一昔前はディスプレイを折り曲げたりできなかった。これから先、人間の想像をはるかに越えるディスプレイが登場するだろう」と古川氏はコメント。
一方で、「ディスプレイのサイズや色の表現方法、設置場所など、端末ごとにフォーマットを編集していては大変」と課題を指摘した。どのサイネージ端末でも問題なくコンテンツを表示できるようにすることが、新たなディスプレイを生むことにつながるとしている。
ネットワークの観点から、村井氏も標準化を強調。村井氏によると、ネットのトラフィックは現在ビデオが大半を占めているという。村井氏は、次世代HTML仕様「HTML5」に大きな期待を寄せている。
「ブラウザベースで分散処理ができ、ビデオの表示などがブラウザベースで実現する。これまで独自のシステムで制御されていたディスプレイが、標準化でどのような変化をもたらすか相当な希望がある」と村井氏は述べている。
サイネージ向けコンテンツの可能性とは
議論はサイネージ向けコンテンツにも及んだ。古川氏は、「コンテンツの分野でも日本にチャンスはある」と述べた。ここで同氏が強調するのはサイネージのインタラクティブ性だ。
古川氏は、「これまでのサイネージは、ムービーを動かすことばかり考えていた」とし、「インタラクティブ性をどのように作るか、そのためにどのような記述言語で書くかなど、シンプルなインタラクティブ性の中でどのように人々の着目を得るか」といった課題を掲げている。
古川氏は、iPad版「Wired」誌を手にして、指で画面に触れるとレゴが組み立てられるコンテンツを紹介。「インタラクティビティはムービーが流れて音が出るといったことだけではなく、ゆったりとした生活の中でひとつずつページをめくるような感覚で触って、少しずつ変化を楽しむようなもの。これができたら面白い」と期待を寄せている。
村井氏
村井氏は、サイネージ向けコンテンツを制作するデザイナーの視点で自身の見解を述べた。「コンテンツが作りやすい標準プラットフォームを提供することで、デザイナーはコンピュータの性能やプログラミング言語を気にせずデザインに集中できる」としており、「ウェブのコンテンツが進化したのはプラットフォームの進化によるもの。これがないとサイネージは発展しない」と強調した。
続いて中村氏は、「サイネージは広告メディアとして期待されているが、日本広告市場はこの2年で7兆円から6兆円へと1兆円減ってきている。サイネージの今後の発展の可能性は」と両氏に問いかけた。
古川氏は、「サイネージへの興味が増し、さまざまな場所で見かけるようになったが、発展の一番の障害は著作権」と回答。「サイネージ向けコンテンツのために音楽や映像を使う場合、最大で9つの管理組合や団体に許可をもらわないと編集にすら取りかかれない」とし、「クリエイターは技術が分からないのではなく、権利処理がややこしくてもがいている」と語った。古川氏は、「管理組合がそろえたライブラリーの中で、コンテンツによっては自由に編集できるようなものがあればいい」と提言した。
村井氏もまた、「サイネージ情報がどの地域でどのような権利があるのか。また間違った情報を配信した場合、どのような影響があるのか。官の規制が入らないためには、業界にきめ細やかなガイドラインなどが必要」と主張している。
日本のサイネージは世界でどれだけ戦っていけるか
古川氏は、「普及というレベルではiPhoneなどが登場する中では厳しいかもしれない。ただ、コンテンツ産業やサービス産業の中で提供すれば、まだまだチャンスがある」とし、「たとえばサイネージを使って街頭や自宅でショッピングができたり、ニュースや災害情報を流す街角の端末として使ったりできる」と述べた。
村井氏は、「サイネージは街頭テレビ以来のメディア。公共空間でのメディアを誰が責任を持って、誰がどのように作るか。その時に何をやるかという責任は、ものすごく文化に密着している」とコメント。「マーケットは世界中にあるが、力道山やゴジラのように人気を獲得できるコンテンツはある。ここをターゲットにサイネージは進むべき」とする一方で、「ガラパゴス化のリスクはある。このために日本で生まれたコンテンツをグローバルなサイネージ市場でどのように開拓できるかが課題」としている。
中村氏
最後に中村氏は議論をまとめて、「サイネージの話は拡散するばかり。これがサイネージの可能性を示している」とコメント。「コンテンツや設置場所、広告発注、ビジネスモデルなど足りないものはたくさんあるが、なかでも総合的に産業をプロデュースする人材がまだまだサイネージには足りない。これが業界の重要課題になっている。今後もビジネスや文化、社会を切り開いていきたい」と述べた。
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