FujiSankei Business i.
2008/10/14 11:09
世界を揺さぶり続ける米国発の金融危機は、1世紀にわたって自動車業界の頂点に君臨してきた米ビッグスリーものみ込んだ。最大手のGM(ゼネラル・モーターズ)とクライスラーというビッグスリー同士の合併交渉が表面化。さらに、フォード・モーターもマツダ株の大半を売却する方針を固めた。一部の米メディアは「GMがFRB(連邦準備制度理事会)に異例の融資要請を行う可能性がある」とも報じる。“崖(がけ)っぷち”に追い込まれたビッグスリーが、日本メーカーも巻き込んで大型再編に突入する可能性が高まっている。
◆交渉成立 可能性50%
11日付の米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)によると、GMは、クライスラー株の大半を保有する米投資ファンドのサーベラス・キャピタル・マネジメントと1カ月以上前から合併の予備協議を開始したという。関係筋の話として「交渉成立の可能性は50%」とも伝える。実現すれば世界販売台数が約1200万台(単純合算)と、GMに肉薄していたトヨタ自動車を引き離す巨大メーカーが誕生する。
一方で、サーベラスは日産自動車・仏ルノー連合などにもクライスラー株売却を持ちかけているようだ。ただ、米ウォールストリート・ジャーナル(電子版)はGM−クライスラーの合併交渉の事実は伝えたものの、「金融市場混乱を受けて協議は中断した」と報じており、事態は流動的。GMはこれに先立ちフォードにも合併を持ちかけていたと米メディアが11日報じた。しかし、フォードは独立した経営を望み、9月に交渉を終了したといわれる。
そのフォードは経営再建に必要な手元資金を確保するため、保有するマツダ株33.4%のうち20%程度を売却する方向で検討中だ。マツダ自身のほか、マツダと取引関係がある住友商事や金融機関なども引受先候補に浮上している。ただ、フォードとマツダは米国やタイなどで合弁生産するなど、つながりが深く、フォードは今後も筆頭株主の立場を維持する考えだ。
◆破綻説相次ぐ
ビッグスリー再編が表面化したのは「金融危機以前から危険な状態が続いていた」(日系メーカー首脳)からだ。ガソリン高で主力の大型車が極度の販売不振に陥り、米サブプライムローン問題の影響で金融事業の収支も大幅に悪化。そこに追い打ちをかけたのが米証券大手リーマン・ブラザーズの破綻(はたん)に端を発する金融危機だった。
かつて業界の盟主といわれたGMはいま、深刻な経営状態に陥っている。2005年以降の累積赤字は約700億ドル(約7兆円)に達した。直近の4〜6月期決算では154億ドル(1兆5500億円)の最終赤字を計上した。株価下落にも歯止めがかからず、今年2月に30ドル近くまで持ち直したが、今夏以降「破綻説」が流れるたびにズルズルと下がり、10日の終値は5ドルを割り込み、資金繰り不安は消えない。
フォードも同じだ。4〜6月期決算は86億6700万ドル(約8700億円)の最終赤字。今年上期の世界販売台数は独フォルクスワーゲン(VW)に抜かれて世界4位に転落した。
ファンド傘下で再建に取り組むクライスラーはなおさらだ。ビッグスリーで最も規模が小さく、常に売却説がくすぶる。先月24日には「世紀の大合併」のパートナーだった独ダイムラーが残る19.9%分のクライスラー株をすべてサーベラスに売却する方向で協議していると発表。サーベラスの完全子会社になれば、他の自動車メーカーは買収に動きやすくなる。
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■日本勢の出方カギ
ビッグスリーを中心にした業界再編の動きは、日本メーカーにも直接・間接の影響を及ぼしそうだ。フォードが検討するマツダ株の売却は、マツダが持つ技術や人材が流出する恐れもあるため、マツダとその周辺企業への売却となる公算が大きく、現時点では日本の同業他社が買い手となる可能性は低そうだ。だが、6月にフォードから英ジャガーとランドローバーを買収した印タタ自動車など、潤沢な資金を持つ新興国メーカーが交渉のテーブルにつく可能性も否定できない。
GMとクライスラーとの合併交渉の行方にも注目が集まる。合併すれば、部品コスト削減や環境対応車の研究開発費など負担を大幅に軽減することが可能。日本勢にとって再び脅威となる可能性もある。一方で、低迷が続く両社が合併しても「負け組連合にすぎない」(業界筋)との指摘もあり、交渉決裂という事態も考えられる。
その際、クライスラーの相手に浮上するのが、すでに小型車などのOEM(相手先ブランドによる生産)供給で提携関係にある日産・ルノー連合だ。
「北米事業拡大のためのパートナーは必要」。両社の社長を務めるカルロス・ゴーン氏はかねてこう発言してきた。同氏にとって自動車業界初の「日米欧連合」の実現は悲願。実際、2年前にはGMとの提携交渉を進めた(結果は破談)実績もある。日産は「市場環境が悪すぎる」(幹部)と現時点ではビッグスリーと資本提携に踏み込むことに否定的だが、最有力候補には変わりはない。
米国でGMと合弁生産しているトヨタ自動車が再編に関与する可能性も指摘されている。05〜06年には、GMが放出した富士重工業といすゞ自動車の株式を取得した経緯もある。
バブル崩壊以降、日産やマツダ、三菱自動車などの自動車メーカーが金融機関の不良債権処理のあおりを食い、欧米メーカーの出資の受け入れを余儀なくされた。しかし、米金融危機で完全に“攻守”が入れ替わった日米メーカーの関係が、今回の大型再編のカギを握っていることは間違いない。(田端素央)
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≪自動車メーカーの主な提携≫
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