FujiSankei Business i.
2007/12/04 15:41
大人数の輸送が可能な電車でありながらバスのように地上の街中を走り、お年寄りにも、買い物袋を抱えた若者にも優しい次世代路面電車「ライトレール(LRT)」が、富山などで中心市街地を活性化しています。先月、東京大学生産技術研究所の千葉実験所(千葉市)に国内の大学で初となるLRTの「鉄道試験線」が敷設。ライトレールの進化に向けた研究が進められています。(原田成樹)
≪東大が本格実験≫
ライトレールは、高齢者などに優しく、都市の大気汚染解消にもつながる切り札として欧州の都市などで導入されている。日本に最初に導入されたのは熊本市で、1997年、路面電車の軌道にドイツ製の車両が導入された。2006年4月に開業し、国内で初めての本格的ライトレール線となった「富山ライトレール」(富山市)の車両もドイツの技術が使われている。日本勢は、民間企業8社で発足した「超低床エルアールブイ台車技術研究組合」が01年に研究を開始し、その技術が広島市路面電車の新型車両に導入されている。
東大の試験線敷設を推進したのは、千葉実験所所長でもある東京大学生産技術研究所の須田義大教授。鉄道のほか、自動車、ITS(高度道路交通システム)などを専門にしている。開通式には、文部科学省や国土交通省のほか、鉄道会社、車両会社、自動車メーカーの関係者らが集まり、試験線に高い関心を示した。
須田教授は「ライトレールの普及には、低床化、高速化、架線レス、運賃のやりとりの高速化」などが必要と指摘する。
低床化は、鉄道では常識の車軸を外し、左右の車輪を独立させて実現する。車輪を独立させると安定度が下がるが、須田教授は、これまでに千葉実験所に設置した10分の1模型を使って、「2輪1ユニット方式独立回転車輪台車」「パワーステアリング台車」などの技術を開発。これにより、都市の交差点などで安定した小回りが可能になり、計算上は曲線半径33メートルの急カーブを高速で曲がれることが確認されている。試験線は全長95メートルで、曲線半径は48・3メートル。ここで実車台を用いた研究開発を始める計画だ。
高速化は、車速アップとは違い、「止まらないようにする」というのがテーマ。路面電車やバスでは、停留所に止まるたびに降車客と運転手の釣り銭のやりとりがみられる。また、渋滞による遅延もあり、こうした“のろさ”が都会の交通機関としてのネックだった。
料金収受は電子マネーによって解決できるとみられるが、遅延の解消では信号がライトレールにあわせて点灯間隔を調整し、ちょうど青になるようにする公共交通優先システム(PTPS)の導入が期待される。
PTPSをライトレールに導入した場合に、信号間隔をどの程度までなら変更しても事故につながらないか−。こうした人間工学は実物で試す必要がある。
須田研究室では、加速度や回転なども実感できる自動車運転シミュレーターと、渋滞シミュレーターを接続して「人間をシミュレーターの世界に入れる」手法を開発し、道路で急に車を止めると渋滞が発生するなどの危険な実験を可能にしている。昨年には実物の信号を千葉実験所に設置しているが、今回の鉄道も連携して、仮想空間と現実空間を組み合わせた人間工学システムを充実させていく考えだ。
架線レスは、蓄電池の能力アップなど自動車にも使われるバッテリーの技術が生かされる。先月19日には、技術研究組合の1社である川崎重工業が電池によるライトレール「SWIMO」を公開し、来年度の実用化計画を発表した。ライトレールを普及させるための一つの切り札とみられ、試験線の開通式にはこうした技術を開発している自動車メーカー社員の姿もみられた。
≪感覚にこだわり≫
「東京でも、都電荒川線の池袋までの延伸や東急世田谷線の延長などを唱える人もいる」(須田教授)など、ライトレールのポテンシャル(潜在需要)は高い。江東区でも構想が持ち上がっている。
単なる鉄道走行技術の開発に使うというのではなく、人、自動車、道路、信号機、ライトレールが共存する次世代交通社会を研究できるというのが、試験線のポイントだ。鉄道の敷設費用は一般に1メートル当たり十数万円といわれるが、千葉実験所も千数百万円かかったという。
「どうして鉄道にこだわるのか、道路を走るならバスでもいいのでは」。須田教授に率直な質問をぶつけたら、こう返ってきた。「道路に線路があると安心感が全然、違うんですよ」
千葉実験所は、東京で実施困難な研究を行う付属施設で、長さ20メートルの水槽や地震の揺れに対する建物強度を実験する振動台など大型の装置が設置されている。実物大でこそ生まれる「感覚」を大事にする、社会工学のこだわりがそこにはあった。
車道兼用でライトレールの研究が可能な国内大学初の鉄道試験線と、京阪電気鉄道から寄贈された実台車。スピードアップなどライトレールの普及には欠かせない技術が研究される=千葉市の東京大学生産技術研究所千葉実験所
2007/09/20 14:00 [ リリース ]
2007/11/07 17:24 [ エディターズレビュー ]
2007/04/25 00:00 [ リリース ]
2009/03/10 10:00 [ リリース ]
2008/07/23 13:00 [ リリース ]
メンバー限定サービスをご利用いただく場合、このページの上部からログイン、またはCNET_ID登録(無料)をしてください。