「いつかツケがまわってくる」--R・ライシュ元労働長官、米国社会に警鐘

文:Elinor Mills(CNET News.com)
編集校正:坂和敏(編集部)
2006年03月09日 15時28分

 米国は、原油価格の高止まりや巨額の財政赤字、消費を続け貯蓄を行わない消費者、依然低い所得水準、住宅価格の高騰、労働人口の高齢化など多くの問題を抱えており、「最後の審判の日」が近づきつつある、とClinton政権で労働長官を務めたRobert Reich氏が警鐘を鳴らした。

 同氏はカリフォルニア州サンノゼで開かれた「IDC Directions」カンファレンスの基調講演で、「(消費者の貯蓄の減少や財政赤字に関連して)米国経済の構造調整が必要不可欠であり、それを実行しなければ世界全体が損害を被ることになる」と指摘した。Reichは経済学者で、現在はカリフォルニア大学バークレー校ゴールドマン公共政策大学院の教授を務めている。

 米国は、経済全体の大幅な成長とITビジネスの復調により2001年の不況から回復しつつあるが、現在、水平線上に3つの嵐雲があり、向こう1、2年の間に激しい嵐に襲われる可能性がある、とReichは語った。その3つの嵐雲とは、原油価格の高騰、4000億ドルもの財政赤字、消費者による支出の記録的な高さおよび貯蓄率の記録的な低さだ。

 Reich氏は、原油価格は今後も低下しないと予測しており、その理由として「(インドと中国の)成長があまりに早すぎるため、世界の原油供給能力がエネルギー需要に追いつかない」ことを挙げた。「(原油価格は)今後も高水準を維持する。それはまさに経済全体に課される税金のようなものだ」(同氏)

 その一方で、米国民は身分不相応の生活を続けている。Reich氏によると、米国は1日当たり20億ドルの割合で外国から借金をしており、その大半はアジアからのものだという。

 金利は上昇し、他国の通貨に対する米ドルの価値は「暴落する」とReich氏は警告する。「世界経済の不均衡や海外からの借入は永久には続かない。いずれ最後の審判の日が訪れる」(同氏)

 Reich氏によると、米国のGDPの7割を占める個人消費については、消費に使われる金額が多く貯蓄にまわされる金額が少ない状況にあるという。長年耳にしてきた「大きな吸い込む音」の主は、「消費を続ける米国の消費者たち」だ、と同氏は語った。

 「現在、米国の消費者が世界経済を牽引しているが、まもなくその役目を終えることになる」とReichは予測する。平均所得は減少しており、人々は住宅を担保に借金をしてきたが、その住宅価格が横ばいか下降に転じれば、消費を控えざるを得なくなるからだ。

 「私は経済についてやや楽観的な見方をしているが、(米国民は)3つの嵐雲に注目すべきだ」とReich氏は警鐘を鳴らした。

 Reich氏は基調演説後に行われた質疑応答で、仮にバークレーで購入したいと思える住宅を見つけたらどうするかと問われ、今までそのような経験は一度もないが、もし購入を決断したら変動金利型住宅ローンを組むだろうと答えた。また同氏は、「(今なら、ベイエリアでは)住宅は購入するより借りる方がより理にかなっている」と付け加えた。

 またReich氏は、将来的にIT分野の好機となりうる3つの傾向について論じた。その傾向とは、グローバル化、技術の変化、人口構成の変化の3つだ。人口構成の変化については、現在、米国ではベビーブーム世代が定年を迎えているが、彼らはわずかな貯蓄しか持っていないという問題がある。

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