ソフトバンク、“無理せずに”通期で5年ぶり営業利益が数百億円に

別井貴志(編集部)2005年08月10日 22時48分

ADSLは先行投資の回収期に

 ソフトバンクは8月10日、2006年3月期の第1四半期(4〜6月)連結決算を発表した。代表取締役社長の孫正義氏は発表の冒頭に「5年ぶりにトンネルを抜けそうだ」と述べ、通期で数百億円の営業黒字になる見通しを示した。予想どおり営業利益が通期で黒字化すれば、2001年3月期以来5年ぶりとなる。

 まず、第1四半期の売上高は2586億3700万円と前年同期比75.6%に大幅増加した。2004年7月に日本テレコムを買収したことから、前年同期にはなかった固定通信事業で886億400万円を計上した。広告やショッピングなどのインターネット・カルチャー事業の売上高は、Yahoo!の大型広告などが寄与し、同64%増加の135億6500万円と伸張した。

 また、ブロードバンド・インフラ事業の売上高は、Yahoo! BB ADSLサービスの課金者数と加入者1人あたりの平均収入(ARPU)が順調に拡大したことで、同33%増の150億3000万円だった。

 こうした中、ソフトバンク・インベストメント(現在SBIホールディングス)が連結対象子会社から持分法適用関連会社へ異動したことに伴い、第1四半期からイーファイナンス事業の売上高(前年同期は159億600万円)が計上されなくなった。

 営業利益は、31億9000万円の損失となったが、前年同期に比べて損失額は6億2900万円減少した。これは、ブロードバンド・インフラ事業において、売り上げが増加したことに加えて、顧客獲得コストが削減できたためだ。ADSLの獲得コストは、前年同期の300億円から186億円に38%減少し、「ADSLは先行投資を回収する時期に完全に入った」(孫氏)と言う。しかし、固定通信事業においては、日本テレコムの「おとくライン」の初期投資費用が負担となり、140億8900万円の営業損失を計上している。

 また、経常利益は130億1700万円の損失で、前年同期に比べて損失額は13億4800万円拡大した。ソフトバンク・インベストメントの異動などで持分法による投資損益が改善したが、その半面で、有利子負債が増加し、為替差損も計上した。

 純利益は、111億5300億円の損失で、前年同期に比べて損失額が67億2200万円縮小した。借入金借り換え関連費用として31億5300万円を特別損失として計上した。その一方で特別利益として、ソフトバンク・インターネットテクノロジー・ファンド1号と2号や、米Morningstar株式の売却益が218億2700万円あった。

6月から単月では営業利益が拡大

「営業黒字化のめどが立ったことで、ソフトバンクに対するこれまでの過小評価がかならず変わるだろう」と業績復活に自信を示す孫氏。

 このように利益は赤字が続いているものの、営業利益と純利益は損失額を縮小させた。そして、連結の営業利益は、2005年6月単月で5億円の黒字を達成したという。単月ベースでは、4月が37億円の損失、5月が損益ゼロだった。孫氏は「7月、8月はさらに営業利益を拡大させており、こうした傾向からすると単純に5億円×12カ月=60億円という通期の額ではなく、数百億円規模が達成できる」と自信を見せた。

 この自信の背景には、経営・事業方針の変更もある。これまで孫氏は「Yahoo! BBとおとくラインを合わせて650万回線の獲得を目指す」としてきたが、「数値目標の達成よりも、利益を着実に出すことのほうに力点を置くことにした」と戦略を変えた。

 特に、おとくラインの個人向け販売では、「おとくラインを受注したあと、NTTに接続を依頼するが、固定電話回線を一番最初に契約したときの名義人に了承を得ないと開通できないなどのルールがあるので、顧客が何十年も前に契約した名義人の名前が思い出せずに、結果的にNTTから接続を拒否されたり、何度もやり取りをしているうちに顧客からキャンセルされたりするケースがいまでも非常に多い」(孫氏)ため、営業努力をして受注しても「現在の回線接続ルールを踏襲すると割に合わないので、個人向けは無理しないことにした」(同)と言う。

 この状況は業績にも表れており、おとくラインの営業体制見直しに伴って、約70億円の特別損失を第2四半期(7〜9月)に計上する見込みだ。

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