フジテレビ、一挙にニッポン放送を子会社化する計画発動--堀江氏は緊急声明

別井貴志(CNET Japan編集部)2005年02月24日 05時12分

きっかけはー「ニッポン放送の新株予約権の発行決議」

 ニッポン放送の経営権をめぐって連日繰り広げられているフジテレビジョンとライブドアの争奪戦だが、ついに2月23日にフジテレビが最終手段とも受け取れる対策を講じた。このままいけば、ライブドアの敗戦は濃厚だが、ライブドアは法的手段に訴えてでも徹底的に争う姿勢を見せており、法廷の場に持ち込まれれば長期の泥仕合になる可能性も高い。

 ニッポン放送は2月23日の取締役会で、第三者割り当てのかたちを採り、フジテレビを割当先として新株予約権の発行を決議した。新株予約権とは、企業が新たに発行する株式を一定の価格で取得できる権利のことをいう。この権利を行使すれば、新株を引き受けることができる。決議された新株予約権の総数は4720個で、権利を行使した場合には4720万株の新株式に相当する。ニッポン放送の現在の発行済株式総数は3280万株なので、新株の数はこれを1.4倍上回り、合計で発行済株式総数は8000万株(現在の2.4倍)になる計算だ。

 現在のニッポン放送株式の保有割合(発行済株式総数3280万株に対して)は、大量保有報告書などによればライブドアが2月21日時点の株数ベースで37.65%(1234万9840株)保有している。ただし、2月23日時点の議決権ベースではすでに40%超を取得していると表明している。

 一方のフジテレビは、2月17日時点で12.39%(406万4660株)を保有している。しかし、3月2日までの公開買い付け(TOB)で413万5341株を買い付けることを狙っており、このTOBが予定どおり達成すれば25.06%(約820万株)保有することになる。ただし、フジサンケイグループのサンケイビルが保有するニッポン放送株2.4%をTOBでフジテレビに売却する意向を示すなど、TOBの進展や他の安定株主の賛同などにより、TOB終了後にフジテレビは議決権ベースでニッポン放送の約33%取得をほぼ確実にしたという情報が2月22日に出ている。

 今回発表された新株予約権をフジテレビがすべて行使すると、こうした保有比率が一変する。既述のとおりニッポン放送の発行済株式総数は8000万株になり、その際のライブドアの保有割合は2月21日時点の取得済み株式数ベースで15.4%、フジテレビの保有割合は2月17日時点の取得済み株式と新株を合わせて64%(5126万4660株)と過半数を超える。確実に保有している株式ベースでこう計算すると、圧倒的な差となるのがわかる。

 なぜ保有比率が重要かと言えば、商法の規定により影響をおよぼす水準が変わったり、東証のルールに抵触して自動的に上場廃止になる可能性があるからだ。

 ニッポン放送はフジテレビ株式を現在22.51%保有しているので、双方が株式を持ち合っている状態だ。商法の規程では、たとえばA社とB社が株式を相互に持ち合っている際に、A社が4分の1を超えるB社株を保有した場合にB社はA社に対して議決権を行使できないと定められている。つまり、フジテレビがニッポン放送株を25%超保有すれば、ニッポン放送はフジテレビに対して企業の利益や資産、経営権などに関する取り決めを決議する権利が消滅する。これにより、ライブドアがニッポン放送の大株主として間接的にフジテレビへ影響をおよぼすことができなくなる。

 また、商法では発行済株式総数の3分の1を保有する株主になれば、株主総会で取締役の任期途中の解任や定款変更、合併などの重要案件に対して拒否する権利を持つ。そのため、好き勝手な経営判断を相手にさせないようにするために、ライブドアもフジテレビも33%超の保有比率にこだわる。

 さらに、東証の上場廃止基準では少数特定者の持ち株(大株主10者と役員の持ち株、自社株の合計数)比率が75%を超え、1年以内にその状態が改善されない場合には上場廃止となり、90%を超えれば1年を待たずに即上場廃止となる。このため、たとえば大株主のライブドアとフジテレビが保有比率を高め合うことが続けば、このルールが適用されて上場廃止となるリスクもつきまとうのだ。

ライブドアを排除して得た資金用途は?

 ところで、今回の新株予約権の発行の理由としてニッポン放送は、「第1に企業価値の維持」としている。「中核事業のラジオ部門にかぎらず、子会社のポニーキャニオン社の音楽映像事業やその他イベント関連などでフジテレビに大きく依存しているが、フジテレビとフジサンケイグループはニッポン放送がライブドアの子会社となって支配下に入れば、直ちにニッポン放送とその子会社との取引をいっさい中止する意向を表明している」として、収益に多大が影響が出ることを懸念したためだ。

 そして、「第2にマスコミとして担う公共性の確保」を挙げている。「ライブドアによる株式の大量取得は、公開会社の株式買収にあたっては透明性や公平性を確保すべしという公開買い付け規制の主旨に明確に反するうえ、違法の疑いもある取引であると考える。このような手段を躊躇なく用いるライブドアが支配株主になることはマスコミとして担う公共性と両立しないと判断した」と痛烈にライブドアを批判し、拒否している。

 そのうえで、ニッポン放送は「フジテレビのTOBには当初から賛同しており、ライブドアの大量買い付け開始後に発生した事情に影響を受けることなく、賛同したフジテレビによる子会社化という目的を達成する手段として新株予約権の発行を決議した」と、あくまでも新株予約権の発行目的はライブドアによる支配を封じて拒否する方策であることを強調した。

 ただし、新株予約権を発行することでニッポン放送は資金を調達することになる。新株予約権の発行日は3月24日で、権利行使期間は3月25日〜6月24日、新株予約権の発行総額は約159億円(権利1個につき336万2731円、1株あたり336.2731円)となっている。すべての権利を行使した際の払い込み総額は約2808億円(1株あたり5950円=TOBの価格と同額)なので、フジテレビがすべて行使する際には合計約2967億円が必要となり、この金額をニッポン放送が調達することになる。

 資金を調達するため、ニッポン放送はその使途を明確に示す必要がある。同社では、「権利の行使はフジテレビの判断によるため現時点での払い込み総額や時期を資金計画に織り込むことは困難だ」としたうえで、「臨海副都心スタジオプロジェクト(仮称)への整備資金に充当する予定だ」としている。

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