2004年総集編--業界地図が変わる高機能ルータ市場

藤本京子(CNET Japan編集部)2004年12月29日 10時00分

 ネットワーク関連企業の業界地図が塗り替えられようとしている。2004年は同業界で、買収や事業提携が活発に行われた1年となった。大手ネットワークベンダーのCisco SystemsやJuniper Networksが相次いで企業買収に動いたほか、国内でも海外企業に対抗すべく、大手ベンダー同士が合弁企業を設立するという動きがあった。

Juniper、Ciscoがセキュリティ関連企業を買収

 まず2月に発表されたのが、JuniperによるNetScreen Technologiesの買収だ。約34億ドルの株式交換で実現したこの買収によりJuniperは、VPN関連技術やネットワークトラフィック管理など、幅広いセキュリティソフトウェアおよびハードウェア技術を獲得した。4月に行われた電話会議にてJuniperの最高経営責任者Scott Kriens氏は、買収の目的が製品ラインアップの強化よりも、むしろ両社の長所を組み合わせることにあると述べている。また同氏は、両社製品を統合させるとしており、統合された製品はネットワークとセキュリティの両面で最高水準をめざすとしている。なおNetScreenは、2003年10月にSSL-VPN製品で高いシェアを誇っていたNeoterisを買収したばかり。買収後のJuniperはまず6月に、旧NetScreenが提供していたOS「NetScreen Screen OS」をIPv6に対応させ、販売を開始している。

 一方Cisco Systemsは、昨年11月にNetwork Associates、Symantec、Trend Microなど大手アンチウイルスソフトウェアベンダーとの協力の下、機器がネットワークに接続する前にウイルス感染していないかチェックできるソリューションを発表するなど、セキュリティ分野に注力していた。こういったセキュリティ戦略に基づき、同社は2004年数多くのセキュリティ関連企業を買収した。

 まず3月中旬にCiscoが現金500万ドルで買収したのはTwingo Systemsだ。TwingoはSSL-VPNのセキュリティソリューションを提供する企業。その約1週間後CiscoはさらにRiverhead Networksというハードウェアベンダーを約3900万ドルの現金で買収すると発表した。Riverheadは、DDoS攻撃からネットワークを保護するハードウェアを提供する企業で、Ciscoはこの買収で侵入防止関連製品の製品ラインアップを強化することになる。

 さらにCiscoは、10月にネットワークのアクセスコントロール製品を開発するPerfigoを現金約7400万ドルで、また12月にセキュリティソフトウェアベンダーProtego Networksを現金約6500万ドルで買収すると発表している。それぞれの買収は1月29日までに完了する見込みだ。

ハイエンドルータ市場で火花を散らす国内外企業

 ネットワーク機器に関しては、日本においてもCiscoやJuniperなどが優勢とされていたが、こういった海外ベンダーに対抗すべく、国内では日立製作所とNECが共同で、基幹系ルータ/スイッチの開発や製造・販売を行う合弁企業を設立した。

 6月に両社が合意に達し、10月1日付けで設立した会社はアラクサラネットワークス。両社の開発・設計部門を統合し、元日立製作所IPネットワーク事業部長の和田宏行氏を取締役社長として約320名の従業員でスタートした。

 基幹系ルータ/スイッチ市場において、日立とNECの合計売上高は2004年で約300億円、国内シェア約10%となっているが、アラクサラとしての2005年度の目標は、売上高400億円、国内シェア17%となっている。同社は12月、アライドテレシスホールディングスと提携し、同社製品のOEM提供や販売・技術サポートなどで協力すると発表している。

 アラクサラ設立に向けての発表がなされた6月、海外ではProcket Networksの身売り話が大きな話題となっていた。Procketはハイエンド市場をターゲットとしたルータメーカー。創業メンバーにはCiscoやJuniperで主力製品の開発に関わったToni Li氏などが存在していたこともあり、ベンチャーキャピタルから3億ドルを集めるなどして注目を集めていた。しかし実際には製品開発までの期間が長引いたほか、多くの顧客を手に入れることもできなかった。

 同社の買収には、NTTを顧客に抱えているという共通点を持つFoundry Networksが有力候補とされていたが、実際に8900万ドルの現金にてProcketを買収したのは Ciscoだった

 Ciscoは当時、Procketの製品と競合するハイエンドルータCRS-1を発表したばかりで、競合技術を持つ企業の買収は行わないとしていたCiscoにとってこの買収は異例とも思われる。Procketの買収に至った理由についてCiscoのルーティングテクノロジーグループ担当シニアバイスプレジデントMike Volpi氏は、Procketに所属する130人の優秀なエンジニアを手に入れることができるためだとしており、「会社ごとまとめて買ったほうが、チームも維持できるので、1人ずつ獲得するより良い」と述べている。なおCiscoは、Procketのルータ製品を販売する予定はないとしているが、ソフトウェアデザインの一部をCRS-1シリーズの各製品に統合するとしている。

 12月にはそのCiscoが、国内ベンダーとの提携を発表した。同社と共同でハイエンドルータのマーケティング、サポートはもちろん、開発までを手がけることで合意した国内ベンダーは、1998年よりCiscoとのグローバルなSI契約を結んでいた富士通だ。この提携により両社はまず、Ciscoのハイエンドルータ向け最新OS、IOS-XRを共同開発することになる。

 富士通では、現時点で同事業の黒字化が厳しい状況だという。単独で事業を続けるか他社との提携で事業を進めるか議論した結果、この提携に至ったと富士通 取締役専務の伊東千秋氏は述べている。また、発表会場では特に目立ったコメントはなかったものの、日立・NECの合弁会社、アラクサラを意識していることは明らかだ。

 このように、国内外のネットワーク関連企業で業界編成が見られた1年だったが、この数々の企業合併・提携で、どこが勝ち組となっていくのか。その答えが見えてくるのは来年以降になりそうだ。

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