やはり半導体…「線引き」急務 エルピーダ、資本注入検討

FujiSankei Business i.2009年02月05日 11時23分

 大手半導体メーカーのエルピーダメモリは4日、公的資金を使って一般企業に資本注入する新制度の活用を検討すると発表した。政府が今通常国会に提出する産業活力再生特別措置法(産業再生法)改正案の成立後、申請する。同社は2008年9月中間期に400億円の連結営業赤字に転落するなど業績が著しく悪化しており、資本増強により財務体質を強化する考え。

エルピーダメモリの株価

 新制度の活用に名乗りを上げたのは同社が初めて。資本増強は、優先株を日本政策投資銀行に発行する形となる見通し。申請額は今後詰めるが、数百億円程度になるとみられる。

 急速な経営環境の悪化によって09年3月期に大幅な赤字を予想する企業が続出する中で、一般企業への資本注入制度についてはすでに経済産業省に企業からの問い合わせが相次いでおり、同制度を活用する企業が予想以上に増える可能性が出てきた。同省でも具体的な企業名も念頭に利用の可否を検討しており、改正産業再生法案が早期に成立すれば、4月にも始まる同制度スタート直後から注入企業が続出しそうだ。

 ≪再編後押しも視野≫

 具体的な対象企業として想定されるのが半導体業界。あらゆる電子機器に使われることから、「産業のコメ」とされる半導体は「日本経済にとって必要不可欠」(経産省幹部)として資本注入が認められる公算が大きい。

 業績が急落しているのはエルピーダだけではない。東芝は半導体事業の分社化を念頭に、NECの半導体子会社と統合に向けた交渉を始めた。富士通の子会社も、日立製作所と三菱電機の事業統合で発足したルネサステクノロジも業績が悪化。単体での生き残りは困難とみられており、経産省も「できることはすべて検討している」(同)と、資本注入による再編の後押しも視野に入れている。

 自動車や家電の需要減退の影響を受けているのは半導体だけではない。自動車部品や電子部品メーカーの一部は、3月期決算を前にメーンバンクなどと事業再生計画の作成に着手しているとされる。

 乗客数の減少に見舞われている航空業界も注入対象と見込まれている。ただ、「注入の是非を検討する際の指標の一つになり得る」(同)という利益剰余金は、日本航空、全日本空輸とも潤沢とみられる。日航は「資金繰りに問題はなく、注入制度の利用の検討はしていない」としており、流動的だ。

 ≪倒産なら公的負担≫

 資本注入制度は、注入先企業が倒産すれば多額の公的負担が発生する。「原則3年後の収益性向上」の経営改善計画策定が注入の条件となるが、それだけではさらなる経営環境の悪化に対応できず、結果として公的負担が増加する可能性も指摘されている。

 改正産業再生法の活用は、複数企業が事業部門を統合させる共同事業再編や、持ち株会社にする事業再構築などが前提。事業規模などの条件はないが、出資制度には何らかの条件がつく見込みで、経産省のある幹部は「“左前”の企業すべてを救うわけではない」としている。

 エルピーダの株価は4日、急上昇した。しかし、制度活用の候補企業として取りざたされ、対象から外れれば失望売りを招きかねない。それだけに、経産省には注入の可否を決める明確な基準を示すことが求められている。(飯塚隆志)

一般企業向け公的資金制度

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