IT業界でキャリアアップするとはどういうことか--業界人が議論 - (page 2)

IT業界の職種細分化は必要?

 第2部は司会を橋本氏が引き継ぎ、「IT業界の職種細分化は必要?」というタイトルで進行した。職種細分化とは、たとえばプログラマーをシステムプログラマーやアプリケーションプログラマー、ウェブアプリケーションプログラマーなどに分けて管理するというもの。この問題に関しては、ほぼ全員が見積もりを出す際には便利だが、現実的に不要であるとした。

 ただし溝口氏によれば、細分化によって職種をランク分けし、スキルアップの具体的な目標とすることをドワンゴで行っているという。

 橋本氏は、面接の時に細かい職種を聞くことがあるかを質問した。これに対しては、「本人が何をやりたいかを聞きますが、その希望に合わせて職種を細分化するようなことはしていません」(木村氏)、「細分化はしていませんが、ソリューションビジネスを希望する人はいます。要は営業なのですが、エンジニアが普通にできる仕事ですよね」(溝口氏)

 ただし一部の職種については、専門家育成の観点から細分化されることがあるという。竹岡氏が「私のところは細分化しています。職種というよりアプリケーションレイヤやグラフィックスなどといった分野ですね。そしてそれぞれのスタッフがプロフェッショナルになっていきますので、職人の集団という様相を呈しています」と述べると、溝口氏も「その意味では、ドワンゴでもH.264などのコーデックの専門スタッフがいます」とした。

 会場に来ていた学生に職種細分化についての意見を聞くと。職種細分化のために本来自分がやりたかったことに手が届かず、分野は同じだが別の道を目指していることにストレスを感じるという意見が出た。これに対しては、「自分の得意分野を持っておくことは大事。その上でお互いの知識を交換することも身になると思います」(吉村氏)、「私たちも、たとえば医療のシステムを作るなら医療に関するそれなりの知識が必要になりますが、決して医者にはなれませんよね。ただ、そういう歩み寄りは有効だと思います」(木村氏)との回答だった。

 「入り口はいろいろありますから、あまり専門にこだわることはないと思います。まずは選んだ道を極めて、そうしたら別のことを極めればいいんです」(竹岡氏)

慶應義塾大学の学生である八巻渉氏 慶應義塾大学の学生である八巻渉氏

 「まだ学生の私が言うのもなんですが、私は『穴掘り』を極めたんです(笑)。子供の頃ですが、庭に穴を掘って自分の背丈まで掘れたら成功という。極めたことで、どこを掘ればいいのかという場所選びや、最後までやり抜くことなどを学びました。たぶん、これはすべてのことに共通すると思うんですよね」(八巻氏)

 また、別の学生は「文系の学生でもIT系の仕事に関わっていけるのか、またそもそも関わる必要があるのか」という質問をした。これに対しては、「理系も文系も関係ないと思います。実際に、中国語を専攻していた人が1年後にはIT企業のマネージャーをしていたなどという話はたくさんあります。要は自分のやりたいことが大事です」(吉村氏)、「理系でも文系でも、何かを極めて欲しいと思います。何かを極めた人は強いです」(木村氏)とのことだった。

 橋本氏は「極める」をキーワードとして、極めるためのモチベーションや、極めるものを見つけるための努力についてパネラーに意見を求めた。

 「モチベーションが下がる原因は、常に意識していたいですね。やめてしまうことは、最初に自分が信じていたものを捨てることになりますから」(木村氏)

 「すでに人のいるところには行かないことですね。人のいないところに行くと、ライバルもいないし、一番になれたりします」(竹岡氏)。「人が少ない方が、全体の弱いところを補い合うこともできます。モチベーションは人それぞれですから、まず自分を分析することも必要でしょう。勉強会に出席することもひとつの方法だと思います」(溝口氏)

 「よく人の多いところは『渋滞する道』に例えられますが、人と同じことをせずに別のルートを探る、開拓していくことも重要です」(八巻氏)。「そもそも今、自分が好きなことをしているか自問自答してみるといいと思います。好きなことでなければ、どんな理由をつけてもモチベーションは維持できません。大義名分ではなく、まずは自分が楽しめることを見つけるべきでしょうね」(吉村氏)

 IT業界で働く技術者の地位向上についても話は及んだ。「職人が低く見られがちなのは残念です。エンジニアはこれから社会を作っていく立場になっていくので、地位向上を目指したいですね。難しい話は抜きにして、エンジニアは楽しいですよ(笑)」(吉村氏)。「私は未だに、いわゆる大手ITゼネコンを選ぶ理由が理解できないでいます。歯車のひとつになるより、ベンチャーのとがった部分で中心になっていくことも楽しいものですよ」(溝口氏)、「IT業界の給料は、決して安くないと思います。ただ、組み込みソフトは最近になって産業として認知されましたし、これからはソフトウェア職人の地位が重要な位置を占めていくと思います」(竹岡氏)

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