エレコム、独サプライ企業を子会社化、欧州市場の攻略にらんだ拠点に

 昨年11月にJASDACに上場したエレコム(葉田順治社長)は、ドイツのPCサプ ライ・IOデバイスメーカーであるednetAG(エドネットアーゲー)を2月27日に 100%子会社化、欧州市場攻略の拠点とする。これまでの、現地法人を核とし た欧州路線を変更、現地の有力企業を傘下に収めることで、欧州の商習慣に合 った営業展開を進めて販路を拡充する。今後数年間で販売エリアを全欧州に拡 大、世界市場を見据えたエレコム戦略を展開する。

 ednetAGは、100年を超える歴史を持つ独Boeder社を起源とするPCサプライメ ーカー。05年12月期の売り上げは1930万ユーロ(約30億円)で、欧州のトップ グループとは差があることが、エレコム子会社の道を選択した要因だ。

「グローバル化が進む中、世界市場で通用しないメーカーは生き残れない」 (葉田順治社長)との判断から、エレコムは03年には英国、ドイツ、イタリア に現地法人を設立するなど、海外進出に積極的な姿勢をみせてきた。しかし 「日本と欧州との商習慣の違い」もあり、期待通りの成果を上げることなく昨 年7月には現地法人をオランダに集約するなど、海外戦略が行き詰まりをみせ ていた。

 今回のednetAGの子会社化によって、同社の販売ルートを活用しながら全欧 州へと販路を広げるエレコムの新欧州戦略がスタートする。ednetAGは、サプ ライやIOデバイスなどPC関連商品で600種類のアイテムを持ち、子会社化後も これらednetAG商品を主力とした販売スタイルを継続する。

 エレコム商品については「商品特性や製造コストその他、さまざまな要素が 欧州市場に合うかどうか見極めた後、勝算の高い商品分野で攻勢をかける」方 針だ。見極めるまでの期間については「4−5年かけて十分に検討する」として おり、「目先の利益確保を目的とするM&Aとは本質的に異なる」ことを強調す る。

 現在のPC周辺機器の世界市場は約13兆円。このうち米国市場が約39%を占 め、欧州市場は約28%、アジア・太平洋は約26%の割合とされる。米国の人口 が3億人弱、欧州はEU加盟27か国の人口だけでも4億5000万人を上回り、ロシア など東欧諸国やトルコ、北アフリカなどの周辺地域を含めると、今後大きな成 長が期待できる巨大市場であることは間違いない。

 さらに欧州市場には「リスクが分散できる」メリットがある。EU加盟27か国 をみてもそれぞれの言語と文化があり、米国市場とは大きく異なる。ビジネス においても「一度失敗すると全米市場を失うことになりがちな米国市場に対し て、さまざまな地域文化が複雑に絡む欧州市場では、一地域での失敗が他地域 では成功につながることも少なくない」という。つまり「市場の成長が期待さ れ、しかも地域ごとにリスクが分散できる」ことが、エレコムが米国ではなく まず欧州をターゲットとする理由だ。

 しかし日本市場と欧州市場では商習慣以上に文化も違う。新商品の投入が相 次ぎ商品サイクルが短くなる一方の日本に対して、ednetAGが本社を置くドイ ツでは「新商品の投入サイクルが極めて長くゆったりしている」という違いが ある。

 時代をリードする新商品を次々と投入することで他社との差別化を図ってき たエレコムが、商品に必要以上の変化を求めない市場でどのように力を発揮す るのか。ednetAGとの関係を含めて、今後、日本メーカーの欧州進出の試金石 として関心が高まっている。

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