無人ロボットによるカーレース「Urban Challenge」--米スタンフォード大、車両公開 - (page 2)

文:Stefanie Olsen(CNET News.com) 翻訳校正:編集部 2007年02月20日 11時58分

 そのためJunior号は、世界を360度「見る」ことができ、可能な限りリアルタイムに近いスピードでデータを処理できる一段と洗練されたセンサを用意する必要がある。たとえば、Junior号の試作車は、新型のVelodyne製高品位ライダー式検知システムを搭載しており、これが回転してロボットに全方位の視覚情報を提供する。さらに、「Point Grey Ladybug 2」ビデオシステムも搭載し、6台のビデオカメラを使ってHD品質に近い全方位のビデオ情報を取得する。

 時間の経過に沿って周囲の3Dモデルを構築していったStanley号とは対照的に、Junior号はその非常に洗練されたセンサを利用し、リアルタイムでの画像作成を試みる。市街地では、その反応速度がきわめて重大となる。

 Junior号のソフトウェアには、Stanley号にはなかった新しい意志決定および予測機能も搭載する必要がある。まず1つとして、Junior号は、オブジェクトを特定し、その情報に基づいて判断を下せなくてはならない。たとえば、縁石に近づいた場合はハンドルを切って衝突を避けなくてならない。だが、別のロボット車両を追い越すときは、追い越し禁止のラインをまたいでまでハンドルを切りたくない。交通違反になるからだ。

 このような理由から、Junior号には認識と意志決定を行うための新しいソフトウェアコンポーネントが搭載されている。AIラボが開発したアルゴリズムの1つは、オブジェクトトラッキング用のもので、自転車、車、縁石、路面標識など、さまざまな動くものを見たときのロボットの理解を支援する。このアルゴリズムは、「時速10マイルで移動中の自動車」などというようにオブジェクトを分類し、これを計画ツールに渡してデータと走行ルールの適合を行い、次の動作を決めるための判断を行う。

  Montemerlo氏によると、スタンフォードのチームは、これらのアルゴリズムを仮想世界でテストするシミュレーションソフトウェアも開発したという。ロボットによる市街地走行用の新しいソフトウェアを試すには、この方がはるかに危険性が低い。たとえば、同じソフトウェアを搭載した20台の車が2方向に一時停止標識のある8の字の道路で走行するシミュレーションでは、最終的にはロボットが判断に行き詰まってしまった。「20台のロボット操縦車両をテストすることはできないが、シミュレーションを使うとソフトウェアのことがかなり分かるようになる」と同氏は語っている。

 2007年式モデルには、Stanley号のような油圧システムではなく、電子制御式のパワーステアリングも装備されている。これにより、都市部の環境で細かいコントロールが可能になる。たとえば、電子式のステアリング補助装置を採用したことで、スタンフォードのエンジニアは車がステアリングに伝えるトルクを細かくコントロールできるようになる。混雑した市街地ではこれが何よりも必要になる。

 コンテストや助成金によって軍用車両向けのロボット技術を進歩させることがDARPAの使命だが、スタンフォードのチームは民間車両用のAIを進歩させることに大きな重点を置いている。4万人以上が毎年交通事故で亡くなっており、自動車用の有効な自立コントロールシステムを構築できればその数は大幅に減らせると、Thrun氏のチームでは考えている。

 スタンフォードが2005年のGrand Challengeで優勝したため、DARPA主催のレースは一段と脚光を浴びるようになった。その結果、2007年は参加者のレベルが上がっている。新たな参加者のなかには、複数の防衛関連請負業者やAI関連学部で有名なMITなどの大学も含まれている。また、AIに強いカリフォルニア大学バークリー校、ジョージア工科大学、カーネギーメロン大学も参加する。

 また、スタンフォードが2005年にVolkswagenと組んだように、このレースのために自動車メーカーとチームを組んで参加する大学も増えた。たとえば、カーネギーメロンはGeneral Motorsと提携している。

 Montemerlo氏は、「競争が毎年厳しくなっていることは間違いない」と語っている。

この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。 海外CNET Networksの記事へ

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