そうしたMicrosoftのパートナー企業になれれば、プロダクトを(1)設計する、(2)テストをする、(3)開発する、(4)実際に市場に流通させる、(5)メンテナンスする――という5つの点でMicrosoftから全面的にサポートされるという。
では、Microsoftのパートナーになる際には、どのようにアプローチすればいいのか。同社では「Microsoft Startup Zone」というサイトを公開している。このサイトは、同社が重要と考えている技術分野ごとにポートフォリオマネジャーがいて、そのポートフォリオマネジャーの審査を通過すれば、ポートフォリオマネジャーが、VCと近い形で企業を支援することになるという。
Hummelstad氏によれば、Microsoftでは(1)パートナーのリクルーティング、(2)パートナーの成長を支援、(3)パートナーを推薦する――という大きく分けて3つのステージで支援を展開しているという。そのステージの最終段階にまで成長した「パートナー企業は、自社のライセンスをMicrosoftにライセンスする、あるいはMicrosoftに買収されることもある」(同氏)という。
そうした同社では2006年中に24社を買収しているが、これについてHummelstad氏は「現在Microsoftでは7万社のパートナーが存在し、既存のパートナーとの取引に重点を置いている」と説明し、このような同社のパートナーに対する制度の根幹にあるのは、「パートナーがどうやって成長して、商品のローンチまでいけるかを支援すること。そして、それぞれのパートナーが自国の外に展開していくのを支援すること」だとしている。
GoogleやMicrosoftとはまた違った姿勢、形態でベンチャー企業との活動を深めているのが、米IBMだ。同社本社の戦略立案の一部門として活動しているのが、IBM Venture Capital Groupである。
現在IBMでは、全社的に「イノベーション」を掲げている。それは、同部門で唯一の日本人である勝屋久氏によれば「IBMがイノベーションを実現できる企業になることはもちろんですが、お客様がイノベーションを通じて成功していただくことをご支援する、最も信頼できるパートナーになることを目指している」ということだ。
そして、IBMは、「新しい技術や市場を読み解く力を内部だけでなく、ベンチャーの生態系などの外部にも積極的に探す」(同氏)。そうした理由からIBMではVC、VCが投資しているベンチャー企業にグローバル戦略としてフォーカスしているという。
勝屋氏は、同部門の目的について「エマージングな市場を洞察すること、新しいソリューションを持つ、若い優れたベンチャー企業と早い段階からリレーションを構築し、協業を始めること、IBMの持つソリューションとのギャップを埋めるソリューションを探すこと」にあると説明する。
そうした目的で活動している同部門は、純然たる小額出資のようなベンチャー投資は行っていない。VCと強い関係を作ることで、VCが投資している優れたベンチャー企業を探すという形態を取っている。そうした勝屋氏の仕事を同氏は、「VC様と強いリレーションを構築しながら、彼らの投資先である優れたISVベンチャー企業などのリクルーティングをしている。世界的にもIT業界でとてもユニークなコーポレートベンチャリングのアプローチである」と語る。ここ数年リアルコムやウイングアーク テクノロジーズなどのベンチャー企業との協業で成功がみられてきたという。
「リアルコムとの協業では、IBMの側にも関連ビジネスとして数億円のビジネスにつながるようになっており、IBM内部でも注目されるようになっている。ウイングアークとはIBM大和研究所を絡めた、新しい協業のスタイルを構築しつつある」(同氏)
このほかのベンチャー企業との協業では、市場に対する適切な商流を作ったり、共同でキャンペーンを展開したりしている。あるいは、個別に顧客企業に対する販売活動支援をしたり、当該ベンチャー企業のブランディング活動支援をしたりすることもあるという。
同部門のVCとの関係について同氏は「“Triple Win”の関係」と説明する。VCからベンチャー企業を紹介してもらい、IBMが必要とするソリューション技術であるかどうかを見極めたうえで、当該ベンチャー企業と協業を決めてゆく。そして協業が始まり、IBMとベンチャー企業双方で販売実績が徐々に上がり、販売実績(売り上げ)が上がったベンチャー企業は、企業価値が向上することになり、企業価値が向上すれば、ベンチャー企業への投資の“出口(EXIT)”が早まることになり、VCはキャピタルゲインをより早く獲得できるようになる。これが、勝屋氏の話す“Triple Win”の関係である。
こうした活動のなかから、同氏が協業したいとするベンチャー企業としては、(1)対象の市場やユーザー企業をよく理解している、(2)市場に対して具体的なソリューションを持ってユーザー企業を満足させていると証明できる、(3)経営陣が素晴らしい企業――という3つの条件を掲げている。
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