IBMが総額1億ドルの新事業案を、現実世界と仮想世界で同時発表

文:Phineas Lambert(CNET News.com) 翻訳校正:佐藤卓、小林理子2006年11月14日 22時07分

 IBMの最高経営責任者(CEO)であるSam Palmisano氏が、新事業育成に1億ドルの出資を決定する。Palmisano氏はこの発表を、現実世界と仮想世界の両方で行う予定だ。

 Palmisano氏は現地時間11月14日、中国の北京で「タウンホール」ミーティングを開き、今後2年間にわたって実施されるこの投資についてIBM従業員に話す予定だ。同時に、仮想世界の「Second Life」でも同じミーティングで発表されることになっている。

 今回の事業投資は、IBMの「InnovationJam」と呼ばれる、オンラインでのブレーンストーミングセッションから生まれたものだ。IBMによれば、2回実施された72時間ずつのセッションに、15万人以上が参加したという。

 その目的は、大規模なコラボレーションを通して新しい事業アイデアを生み出すことにある。

 IBMは、オンラインによる社内のブレーンストーミングセッションを2001年から実施してきたが、7月に実施されたInnovationJamのセッションで初めて、提携先企業、顧客、それに従業員の家族にも参加を呼びかけた。

 その結果集まったおよそ5万件のアイデアは、最新の分析ソフトウェアも使用してふるいに掛けられた。IBMは、新たにセッションを開催して、ふるいに掛けたアイデアへの投票を求め、さらに練りあげ、最終的に10件にまで絞り込んだ。この10件すべてに出資される。

 「(集まったアイデアの)数そのものが明確に物語っている。新しい形のコラボレーションを作り、新しいタイプのソリューションとチャンスを生み出す態勢が、世界にとって、とくに当社にとって、現実のものとなっているのだ」と、IBMのイノベーションプログラム担当バイスプレジテントのDavid Yaun氏は言う。

 Palmisano氏は、InnovationJamから生まれた10件の事業プランの詳細を北京で発表することにしている。これは、IBMが中国とのかかわりを強めようとしていることの現れでもある。

 一方、IBMと中国政府がSecond Lifeの仮想世界に設けた「Forbidden City」では、Palmisano氏のアバターが、今回の発表について論じることになっているとIBMの関係者が語った。

 IBMの従業員は、Second Life内で開始されるInnovationJamの出資対象事業に参加することもできる。IBMはここ数カ月、Second Lifeで実験的な試みを続けている。

 Palmisano氏のアバターは、Second Lifeの世界でIBMのプレゼンスを高める業務に取り組んでいるチームの発案で作成されたものだとYaun氏は言う。

 「Sam(Palmisano)氏は、自分のアバターが作られたという話を聞きつけて、カジュアルタイプのアバターを自分で作った。スーツ姿のビジネスタイプのアバターが正式にデビューするのはもうすぐ(新事業の発表のとき)だ」とYaun氏は語った。

IBMが資金を投じる新事業

 Yaun氏によると、提案された事業プランには、短期的、中期的、および長期的なスパンでビジネスチャンスを作り出すものがあるが、1つのプランの中に複数のタイムスパンが含まれることはないという。

 Yaun氏によれば、2007年ごろには目に見える成果を生み出すと思われる短期プロジェクトは、送電線の監視と管理をリアルタイムで行う方法を探る「インテリジェント電力ネットワーク」(Intelligent Utility Networks)と、主要言語を網羅する「リアルタイム翻訳サービス」(Real-time Translation Services)、それにIBM製ブレードサーバを利用してWeb 2.0サービスのパッケージを提供する「簡易ビジネスエンジン」(Simplified Business Engines)だ。

 中期のプロジェクトには、スマートカードで医療請求処理を行う「医療費支払いスマートシステム」(Smart Healthcare Payment Systems)、および公共交通システムの情報をリアルタイムに取得する「統合公共交通情報システム」(Integrated Mass Transit Information Systems)がある。

 長期のプロジェクトは、「電子健康記録」(Electronic Health Records)と「『ビッググリーン』イノベーション」("Big Green" Innovations)だ。後者は、ナノテクノロジを利用して水をろ過するといった、先端環境ビジネスでのビジネスチャンスを追及する新部門を作るものだ。

 ほかには、「支店のない万民のための銀行」(Branchless Banking for the Masses)「3次元インターネット」(3D Internet)、オンラインの簡易ストーレジサービス「デジタル・ミー」(Digital Me)がある。

 IBMは、それぞれのアイデアを個別に立ち上げるだけでなく、こういった各分野に出資し、いずれは提携先を探して商品化を図ることも考えているとYaun氏は言う。

 事業プランを作成したチームのメンバーは10日ほど前にすでに任命を受けており、45日ほどで事業計画を提出することになっている。

 こういった資金投入を推進する背景にある考え方は、既存のプロダクト部門とは別のところで新事業を育成するための機構を組織することだ。

 「Sam(Palmisano)氏は、『普段どおりのビジネス』など決して求めていないという姿勢を100%明白に表明している。彼が求めているのはまったく新しいアイデアだ。IBMの正規のプロセスから生まれた事業アイデアを発展させることによって、何かを一から作りあげる開放感をみなが感じている」とYaun氏は語った。

この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ

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