ナノ素材、環境と健康へのリスクは未知数--専門家が警告 - (page 3)

文:Martin LaMonica(CNET News.com) 翻訳校正:吉武稔夫、矢倉美登里、長谷睦2006年10月20日 23時08分

企業の自主規制が頼り?

 Lux ResearchのHolman氏は、米国に限らず、どの国の規制当局にも厳密なガイドラインなどがない現状では、各企業が自発的に情報を共有するほか、従業員の安全を確保する適切な規則や不注意によるナノ素材の流出を防ぐ設備など「できる限り最善の施策」を導入することが望ましいと述べた。

 「規制の行き過ぎよりも、緩すぎる規制の方が危険だ」とHolman氏は述べ、一例として殺虫剤のDDTを挙げた。規制がなかったために乱用を招いた結果、いくつかの国ではDDTが使用禁止になったが、適切な監視下であればDDTの安全な使用が可能な状況もありえたはずだと、Holman氏は語った。

 Holman氏は同時に、ナノ素材に反対する声が活動家の間で高まってる点にも言及した。例えば2005年には、フランスで行われたナノテクノロジに関するカンファレンスを反対活動家が妨害する事件が起きている。同氏はこのような問題を、ナノ素材が現実に引き起こす安全性の問題と区別して「認識に関する問題」と呼んだ。

 企業は開発中のナノ素材に関する情報を隠そうとするのではなく、むしろ積極的に公開すべきだというのが、Holman氏の見解だ。

 Holman氏は、化粧品会社のEstee Lauderが自社のウェブサイトから「nano」という言葉を含む記述をすべて削除した例を挙げた。対照的に、化学大手のBASFは自社が開発したナノ素材の毒性試験に関する情報を公開している。BASFは、エネルギー効率の向上や他の毒性物質の使用量の削減など、ナノテクノロジの利点を強調することも忘れていない。

 「業界が情報を隠そうとしていると思えば、人々は一層の恐れを感じる。業界が自分たちの意見に耳を貸す気がないと思ったら、その恐れはさらに大きくなる」とHolman氏は語った。

 化学大手のDuPontでは、業務を安全に行うための業界標準を策定するプログラムに着手した。同社のEnvironment and Sustainable Growth Centerで規制問題を担当するグローバルディレクターTerry Medley氏によると、政府の規制がナノ素材が健康や環境に与える影響にまで及んでいないこともその一因だという。

この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ

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