「世界最強企業と戦う秘訣」--サイボウズ青野社長が語る成功術 - (page 2)

減収減益をバネに、新たな事業展開を推進

 「サイボウズ」の由来は、サイバーと坊主(子供)。サイバーな子供達という意味が込められている。おほえやすく、一度聞くと忘れにくいことを意識して名づけられた。アピールのチャンスはネーミングから始まっていると青野氏は語る。

 「サイボウズの企業理念は、情報サービスを通して世界の豊かな社会生活を実現すること。日本だけでなく、一部の優秀な人だけでもでなく、世界の人達をターゲットにし、安くて簡単なソフトをたくさんの人に使ってほしい。情報サービスを大衆化していくことを目的としています」

 そのためにさまざまな工夫をしてきたが、1年後、減収減益に陥ってしまう。新規の顧客が一巡してしまったのが原因だった。起業してからライセンス販売に頼っていたが、新規が減ると売上が下がってしまった。これを契機として、サイボウズ Office以外の商品を開発し、事業の幅を広げていくことで販路の拡大を図った。

 「ダウンロードで買ってくれる人は一部。ほとんどはシステムインテグレーターからの提案でサポートを受けながら買うことが多いのです。サイボウズでも、一部門向けの規模から中小企業、大企業でも利用できる『ガルーン』などのソフトを新たに開発し、販売代行制度を作りました。現在は売上の6割が販売パートナー経由になってきています」

日本の「和」を武器に世界最強企業と戦う

 現在、国内のグループウェアのシェアは、1位が日本IBMのLotus Notes。2位がサイボウズとなっている。サイボウズが世界の最強企業とトップを争えるのか、その理由は文化の差にあると青野氏は読んでいる。

 「日本代表として、なぜサイボウズががんばれるのか。それは日本人には和の文化があるためです。グループウェアは情報共有のソフトです。サイボウズは情報を共有しあうという考えに沿って作っていますが、欧米は個人主義に沿って作っている。そのため、欧米のツールはスケジュールの共有ができないという点があります。グループウェアは共有してこそ便利なツールになると思います。より便利な環境を作っていくためには、和の文化を広げていくことが必要だというのが僕の持論です」

 「和」の文化についての持論は、M&Aという形でも取り入れられている。青野氏にとってM&Aは、仲間を増やしていくことを意味している。前期から積極的にM&Aを行い、ビジネス拡大を図っている。

 サイボウズは過去に、2000年の英語版ソフトの販売からスタートし、2001年現地法人を米国に置くという挑戦を行った。しかし、黒字を出すことができず、2005年に清算。日本のビジネスソフトは世界に通用しないのかという疑問の中、青野氏はメジャーリーグにたとえて否定した。

 「『メジャーリーグで日本人が通用しない』と言われた時代がありました。野茂選手の登場でそれが覆されると、今度は『バッターは無理』だという。しかし、イチロー選手が大リーグの記録を更新しました。無理だと言われたことを日本人はすべて覆してきています。よく日本人はハードは得意だが、発想力が乏しくてソフトは苦手だといわれますが、アニメやゲームが輸出産業になりました。十分通用しているのです。現在、ビジネスソフトが進出できないといわれています。ぜひ、これを覆していきたい。志を同じにできる人は、ぜひ仲間になって一緒に挑戦してほしいです」

 青野氏は、お客さんも自分も楽しむことが重要だと説いた。オリジナルで作成したという「サイボウズのテーマソング」を流して会場を沸かせながら、自身が伝えたいことよりも、参加者が欲することを明確に伝えていった。これはサイボウズのビジネス理念に通じており、60分間の講演の中で、この理念がいかに人を引き付けられるかを証明していた。

 最後に、自分の理念、哲学に沿ってビジネスを行えば、バブルに左右されない強い普遍の商売は可能だと結び、講演を終えた。

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