巨大グラフィックスチップメーカー誕生--AMDのATI買収、背景と影響 - (page 2)

文:Michael Kanellos(CNET News.com) 翻訳校正:河部恭紀(編集部)2006年07月25日 12時13分

 しかし、通常は既存のチップをメインプロセッサに統合する場合が多い。初期のPCには数値演算コプロセッサと呼ばれるものが搭載されていたが、これは数年前にプロセッサに吸収された。最初の「Pentium II」の512Kキャッシュは、プロセッサの隣に別のメモリチップとして搭載され、単体で20ドルのコストがかかっていた。一方、現行のCore Duoチップには8倍の容量を持つキャッシュが搭載されているが、こちらはチップに集積されており、全体の製造コストも下がっている。

 チップセットには既にグラフィックス機能を統合したものもあるが、業界にはグラフィックス機能を統合したプロセッサの増加を待ち望む声が多い。

 Crosslink CapitalのパートナーDave Epstein氏は、「グラフィックスチップがプロセッサに統合されるという意見はこれまでもあった」と述べている。Epstein氏はRaycer Graphicsを創業し、1999年に同社をApple Computerに売却している。

 グラフィックス機能を統合する対象と手法は市場によって決まると、Epstein氏は付け加えている。チップセットにグラフィックスを統合すればプロセッサデザインを簡素化できるが、メーカーは市場のセグメントごとにチップセットを製造しなくてはならなくなる。

 統合される部品は単体チップよりパフォーマンスが劣るのが一般的だが、その差は数年もすればほとんどなくなる。Intelは1998年、単体のグラフィックスチップ販売を決定し、グラフィックスチップ企業各社を震撼させたことがある。

 だが、そのチップの販売は悲惨な結果に終わり、Intelは2007年にこの事業から撤退した。しかし同社は、グラフィックスチップを統合したチップセットの製造は継続した。そして数四半期後、Intelは世界最大のグラフィックスチップセットベンダーとなり、今もその地位を維持している。

 他社も、過去に同様の組み合わせを試みてきた。Cyrixは、コントローラとグラフィックス機能を統合した「MediaGX」を投入した。Intelも、グラフィックス機能とメモリコントローラを統合した「Timna」を1999年に設計したが、これがリリースされることはなかった。

 いずれの製品も成功しなかったが、統合というアイデア自体が原因ではない。Nationalに買収されたCyrixは、顧客にデザインを受け入れられることがほとんどなく、プロセッサのパフォーマンスで後れを取ることも多かった。

 Timnaが消滅したのは、統合メモリコントローラがRambusの設計によるメモリとの接続に対応していたためだった。このメモリはPCメモリの標準になるはずだったが、製造や高価格などの各種問題から身動きがとれなくなった。

 「皮肉にも、AMDの製品はTimnaに非常に似通ったものになる」(McCarron氏)

 さらに、その良し悪しは不明だが、AMDはグラフィックスチップメーカーにもなる。数年前から、グラフィックスチップはチップ業界で最も利益を得ることが難しい市場となっている。McCarron氏などによると、チップメーカー各社はほぼ6カ月ごとに全く新しい世代の製品を用意する必要があるが、この間隔はプロセッサメーカーより狭いという。

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