「1980円手法を米国でも」--上場を狙うソースネクストの次の手

永井美智子(編集部)2006年01月16日 12時21分

 ソースネクストは、1月5日から8日まで米国ラスベガスで開催されたデジタル家電の総合展示会「2006 International CES」に同社として初めて出展した。その狙いと今後の同社の事業戦略について、同社代表取締役社長の松田憲幸氏に聞いた。

--今回、CESに出展した目的は。

 大きく2つあります。1つはソースネクストが販売するソフトウェアの開発ベンダーを見つけること、もう1つが自社のオリジナルソフトを米国で販売するための調査です。

 日本市場は米国の半分近くの大きさを誇る巨大な市場であるにもかかわらず、海外のソフト企業の参入はまだまだ少ない。これにはいくつか理由があって、土地代が高いであるとか、ソフトの販売網が複雑であるとかといったことがです。しかしそれよりも大きいのは、2バイト言語である日本語に対応する工程が非常に手間がかかるというネガティブなイメージです。確かに10年ほど前までは日本語化は非常に大変でしたが、いまはC++やVisual Basicなども日本語対応が進んでおり、日本語化に大きな問題はありません。

 米国では十分なマーケティングコストがかけられないがために埋もれているソフトや技術が多い。そういったものを引っ張り出したいと考えています。

ソースネクストのブースは今年新設された「Sands Expo」会場の一角にあった。すでに2007年には倍の広さのブースを出展することが決まっているという

 例えば、これは日本の事例ですが、PDFを読み取ってWordやExcelなどの書類として出力する「いきなりPDF to Data」という製品があります。類似ソフトがほとんどないこともあって、非常に人気のある製品ですが、技術は松下電器産業の子会社であるパナソニック ソリューションテクノロジーのものなんです。このように、大きな会社でも埋もれてしまっているいい技術というのはたくさんあります。特に米国はソフトの数が多いので、埋もれているソフトも多いと見ています。

 また、機能を削ぎ落とすことで売れるソフトもあります。技術者はどうしても技術的に凝ったものを売りたいと思ってしまいますが、そのためにユーザーに伝わっていないソフトも多い。逆に、本当に簡単なソフトのほうが売れるんです。

 プレゼンテーションソフト「超五感プレゼン」はその一例です。マイクロソフトのOffice PowerPointは2万円以上しますが、超五感プレゼンはPowerPointと互換性があり、しかも値段が1980円ということで非常によく売れています。実は、プレゼンテーションソフトのほかに文書作成ソフトや表計算ソフトも入ったサン・マイクロシステムズ製のStarSuiteという製品も販売しています。しかし、超五感プレゼンのほうが数倍売れているんです。

 初日からいくつもの商談が来ており、1〜2年で50タイトルほど新しいタイトルを出せそうな手ごたえを感じています。

--米国ではどのような展開を考えていますか。

 2006年度中に自社のオリジナルソフトを販売したいと思っています。現在、自社で開発しているソフトには携帯電話メモリ編集ソフトの「携快電話」やタイピングソフトの「特打」などがあります。100タイトルほど揃うのが理想ですが、まずは数本から始めます。日本の1980円シリーズと同じようにワンプライスで展開する予定です。

--日本で展開している他社製のソフトについてはどうですか。

 われわれが日本での販売権しか持っていないものもありますし、そのまま米国で展開して売れるものが現時点では少ない。まずは自社製のソフトを販売していきます。

--今後の事業目標は。

 現在の売上高は100億円ほどですが、5年以内にこれを300〜500億円にする計画です。コンビニエンスストアや書店などでの販売をさらに強化し、海外展開が軌道に乗ればこの数字は十分達成可能だと見ています。2010年には海外の比率を20%程度にまで高める計画です。なかでも米国はソフトに対する目が厳しく、成功するのは難しい。しかし、だからこそ米国市場が重要だと見ています。米国で成功すれば他の国にも進出しやすくなります。

--事業拡大のため、ソフト開発ベンダーの買収なども考えていますか。

 それはあまり考えていません。ソフト開発は自社でやるよりも、アウトソースすることを考えています。必ずしも市場のニーズと社内の技術レベルが合うとは限らないので、自社で大きな開発部隊を抱えることはリスクが高いと判断しています。

 われわれが重視しているのは、ユーザーが求めるソフトをどこよりも早く提供するということです。たとえばわれわれがもし「いきなりPDF」を市場に出していなかったら、今でも数万円もするPDF変換ソフトしか市場にはなかったかもしれない。自社開発にこだわるよりもスピードを重視しています。

--今後の上場の予定は。

 現在準備中です。詳細についてはお答えできません。

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