創設60周年--IBMリサーチ部門の「過去・現在・未来」 - (page 2)

Michael Kanellos(CNET News.com)2005年10月12日 21時06分

 その1つの理由として、今や米国では科学的研究は昔ほど集中的に行われていないという事情がある。実際、米国以外で書かれた学術論文やそれらの論文からの引用文の数は急増している。

 「世界中の研究成果を利用している」と語るのはIBMのナノスケール素材担当マネジャー、Chris Murrayだ。同氏はさらに、「教育への投資が現在のような(低い)水準にある米国が、技術革新の今後の方向性を支配したり、強い影響力を及ぼしたりする立場にあるとは思えない」と続けた。

 IBMの研究所における取り組みの方向性も徐々に変化しつつある。同社は昔、主にハードウェアの未開拓分野の研究に集中した。その結果、1947年に開発され世界で初めて製品化された電子計算機となった「IBM 603 Electronic Multiplier」や1962年に開発された「Sabre」予約システムなど、数々の機器が生まれた。

 IBMは現在もナノテクノロジ研究の中心的存在である。しかし、サービスやソフトウェアの開発を推し進める同社は、より多くの研究所で、サプライチェーンマネジメント、アプリケーション統合、取引の非効率性といったビジネスプロセスに関する様々な問題の解決方法の研究を進めてきた。

 究極の問題は、「既存のネットワーク上の人々がいかに事業運営を行うか」(Horn)である。「われわれの予想では、ビジネスプロセス取引サービスは向こう数年間に5000億ドル市場に成長する可能性がある。IT業界全体の市場規模はわずか1兆2000億ドルにすぎない」とHornは語る。

 現在、基本的課題の1つとして、これらの問題を研究するための枠組み作りが行われている。Hornによると「(その枠組みは)社会科学にもビジネスにも経済にも関連している」という。ソフトプログラミングやゲーム理論も重要なアプリケーションだ。

 IBMは数年前、この分野の専門家を増やすための初期段階として、様々な大学でサプライチェーンマネジメントのカリキュラムを開設し始めた。現在同社はノースカロライナ州と共同で、いわゆるSSME(social science and management engineering:社会科学と管理工学)のカリキュラムの開発に取り組んでいる。

 「サービス科学」と言うと柔らかい響きに聞こえるかもしれないが、新しい専門分野は全てそのように聞こえる、とHornは主張する。

 Hornは「昔は、人々はコンピュータ科学に科学など存在しないと考えていた。もしIBM Academyの会員だったら、ハードウェアの研究に没頭していただろう。ソフトウェアに知的な奥深さなどなかった」と述べた上で、「今や人々はサービスについて同じことを言う」と付け加えた。

この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ

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