ソフトバンク、ADSL事業が四半期で初利益--今期は5期ぶりに通期黒字化

別井貴志(編集部)2005年05月10日 23時40分

確実に赤字額が減少

 ソフトバンクは5月10日、2005年3月期の通期連結決算を発表した。代表取締役社長の孫正義は冒頭に「今回の決算を総括すると、ついにさまざまな先行投資が山場を超えて着実に収益を見込めるようになってきた。各事業で顧客基盤を構築できて事業間の相乗効果も出てきた」と語り、今期は5期ぶりに黒字化できるという自信を一段と示した。

 固定通信事業の日本テレコムが新規に連結対象に加わったことから、売上高は前期比61.7%増の8370億1800万円と大幅増加した。しかし、営業利益は「おとくライン」の初期投資費用が足を引っ張り253億5900万円と4期連続の赤字となった。ただし、赤字額は前期の548億9300万円から295億3400万円減少している。

 営業赤字額が減少したのは、これまで先行投資がかさんできたBB事業(ADSL)の収益が大きく改善したためだ。四半期で見ると、第4四半期(2005年1〜3月)のBB事業の売上高は529億円、営業利益が19億円と、ADSL事業を開始して以来初めて黒字化を達成した。そのため、孫氏が「公約したとおりの結果になった」と言うように、通期決算で、おとくラインを除いた営業利益は前期の548億円の赤字から710億円改善して161億円の黒字化を達成している。

 また、経常利益は452億4800万円の赤字だが前期に比べて赤字額は266億5300万円減少した。持分法による投資利益があったものの、有利子負債の増加による支払利息が109億円増加して229億円計上した。さらに、前期に差益を計上した為替が対ドル、対ユーロともに円安に推移したことで為替差損が40億円発生した。

 純利益も598億7100万円の赤字だが、前期に比べて赤字額は472億2300万円減少した。BBコールやイー・トレード証券などの株式売却益などが貢献した。

 このように赤字額は大きく減少し、今期の黒字化を見込んでいるため、1株あたり7円の配当金は継続する。

3つのナンバーワン戦略

 今後の戦略について孫氏は「インターネットとテレビ、電話がIPという1つネットワーク回線で提供できる時代が到来した中で、『3つのナンバーワン戦略』を掲げる」とした。3つとはインフラ、ポータル、コンテンツを指し、街にたとえて「線路にあたるインフラではYahoo! BBやおとくライン、駅にあたるポータルではヤフー、駅ビルや駅近くの商店街にあたるコンテンツ(サービス)では、オンラインゲームやBBTVによる放送やオンラインレンタルビデオなどを持ち、すでにナンバーワンの分野も多いが、この3分野で圧倒的なナンバーワンを目指す」というわけだ。

 こうした戦略の中、これまで足を引っ張ってきたBB事業の収益化が見えてきた代わりに、新たに負担となってきたおとくラインの先行投資コストが気になるところだ。これについて孫氏は「インフラ事業として初めて経験したADSLも3年で収益の回収期に入った。ゼロからのスタートだったが、顧客データベースの構築方法などすでにノウハウは膨大にあるので、この経験を生かせばADSLよりも早くおとくラインの収益化は達成できる」と述べ、おとくラインの今年度中の月間黒字化を予想した。おとくラインは2005年4月末現在で44万件が開通(申し込んでもさまざまな理由で開通できなかった件数は1万1000件)しており、Yahoo! BBは480万回線利用されているが、9月までにYahoo! BBとおとくラインを合わせて650万の加入を目標にしている。

 また、投資負担という意味ではまだある。携帯電話事業への参入と光ファイバー接続サービスだ。携帯電話について孫氏は「訴訟にまで発展した800MHzの周波数帯の認可が下りなかったのは非常に残念だが、いつまでも引きずっていてもしょうがないので、2005年4月28日付けで1.7GHz帯の実験局本免許を総務省から取得した。これに集中して、かならず商用サービスを行う」と意気込んだが、実験計画や詳細については「免許も持っていない立場であれこれ細かく話すのは時期尚早だし、意味もないし、できるだけベールに包まれているほうがよろしい」として、多くを語ろうとはしなかった。

 さらに、Yahoo! BB 光については「現状でどうしても光接続でなければならないという利用は考えられないので、5年から10年という中長期タームでADSLからの完全移行を促していきたい」と語った。

 これには、コンテンツや利用法のニーズの他にも、提供価格がどうしても割高になってしまうという背景もあるようだ。特に「個人向けの光ファイバーの工事は地域ごとに集中的に行わないと赤字がかさむことになるので、どうしてもある地域で一定の人数を集めてからでないとサービスを展開できない」という理由から、「将来的には『Yahoo! BB光化地域』などを順次指定していき、ユーザーを長い目で増やしていくことで徐々にADSLとの価格差も縮まっていくだろう」とし、現在は工事費用や端末の性能チェックなどあくまでもテストマーケティング的な展開であることを強調した。Yahoo! BB 光の申し込み件数は5万ユーザーで、実際に開通した加入者数は現在約2万ユーザーいる。

 以上のように投資コストを総合的に考えても利益について孫氏は、「今期は営業利益、経常利益、純利益の各段階ですべて通期で黒字化することを予想している。また、その後5〜6年は携帯電話や光ファイバーの投資などを考慮しても通期での利益は継続して生み出せる」と見通しを示した。

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