グリーンスパンFRB議長、保護主義の高まりに警鐘

 米連邦準備制度理事会(FRB)のAlan Greenspan議長が米国時間12日、海外への業務移転の拡大を食い止める取り組みは、米国の労働者を助ける代わりに、米国経済にダメージを与えるものだ、と語った。

 Greenspan議長は、ボストン大学主催のFinance Conference 2004に出席し、政治的な盛り上がりを見せているこの話題に関して自らの見解を詳細に述べ、米国労働者保護法案(The Workers Protection Act)のような対策は有害無益ではないかと語った。なお議長はこの日同校から名誉学位を授与された、

 「海外への業務移転が引き起こすこれらの緊張や混乱を受けて、新たな保護措置の提案が行われている。これらの真偽の疑わしい解決策は、百害あって一利なしだろう。こうした保護策は雇用の創出にはほとんど役立たず、外国が報復に出れば確実に職がなくなる」(Greenspan議長)

 Christopher Dodd上院議員(民主党、コネチカット州選出)が提出した労働者保護法案は、政府業務の民営化、官公庁による商品やサービスの購買、そして連邦政府資金を使った州政府の購買という、官公庁の3つの分野の仕事について海外への業務移転禁止を目指している。同上院議員は、米国は「憂慮すべき」速度で雇用を失いつつあると主張し、2001年以来、米国は製造業で270万人分の雇用を失い、また今後15年間に最大330万人分の雇用が海外に流出することになるとしている。

 他の議員のなかには、海外への業務移転が明らかになった米国企業に対して、罰金を科す法案の作成を公けに話し合っているものもいる。

 Greenspan議長は、仕事の海外流出について、米国の消費者が比較ショッピングや生産性の飛躍的改善を通じた価格低下を求めていることなど、多数の要因があると語った。

 同氏はさらに、企業が業務を海外に移転する最近の傾向を、日本やメキシコなどの外国の経済力が米国の雇用確保にとって脅威だとされていた1950年代、1960年代、1990年代の各状況と比較した。

 Greenspan議長は、このような背景から保護政策は失速し、長期的には雇用の成長につながらない可能性があると警告を発した。

 「我々は、外国貿易を阻止する障壁を築いたり、あるいは雇用をなくすような技術革新に歯止めをかけることもできる。そうなれが、競争のペースは確実に落ちるだろし、緊張も緩和されるように見えるかもしれないが、しかしそれも長くは続かない。結果として、生活水準はすぐに沈滞しはじめ、おそらくは低下さえすることになるだろう」(Greenspan議長)

 「新たなレベルの繁栄を求めようとせず、今のぬるま湯につかっていようとする姿勢が停滞につながるのは、人類の歴史上繰り返し起こってきたことだ」とGreenspan議長は語った。

この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向け に編集したものです。

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