多様化するAndroid対応のCPUアーキテクチャ--その未来とは

 MIPSプロセッサを搭載した初のAndroidタブレットとして話題を呼んだ「NOVO 7 Paladin」を紹介した。今回は、多様化するスマートフォンやタブレットといったモバイル機器のCPUにスポットを当てて見ていく。

 スマートフォンは、AndroidもiPhoneもWindows Phoneも、現在出回っているほぼすべてがARM CPUによって動いている。

 PCユーザーにとってARMというCPUはなじみが薄いかもしれないが、組み込み向けCPUでは大変大きな実績を持ち、とてもメジャーな存在である。また、スマートフォン関連のニュースで近年聞かれるようになった単語として「SoC」というものがあるが、これはSystem on a chipの略だ。CPUが1つのチップでメインの演算処理を行うのに特化しているのに対し、SoCは1つのチップ上にCPUはもちろん、グラフィック機能やオーディオ機能等を盛り込み、より組み込み用途で使いやすくしたものである。基本的にSoCという単語が出た場合にはCPUと読み替えてもさほど問題はない。ちなみに現在出回っているスマートフォン向けSoCは、ほぼ100%ARMベースである。

 そのような中、2011年9月13日にGoogleとIntelから共同発表があった。次のバージョンのAndroidから、IntelのAtom CPUに積極的に対応するという内容だ。

 次バージョンのAndroidとは日本でもNTTドコモより発売された「Galaxy Nexus」に初搭載されたAndroid 4.0 Ice Cream Sandwitch(以下ICS)のことである。これは、ネットブックブームが下火になったIntelにとって望ましいものであるし、GoogleにとってもIntelの支援が受けられることは大きな意味を持つ。まさに相思相愛の幸せな結婚と言えるだろう。

 IntelとAndroidに関する動きは2012年になって一気に加速している。1月10日、IntelとMotorolaはAndroid製品においてIntel CPUを使用するというパートナーシップ締結を共同発表した。さらに早くもCES2012にてIntel Atom CPUを搭載したレノボ社製Androidスマートフォン「Lenovo K800」が登場した。

 その一方、長い片思いの例もあった。2010年3月5日にMIPS CPUを開発、販売するMIPS Technologiesは、Android向け開発ツールを発表し、今日まで積極的に開発者を支援している。それにもかかわらずMIPS CPUを採用するAndroid端末は一向に現れなかったのである。

 それが2011年末に驚きの展開を迎えた。MIPS CPUのライセンスを受けた中国企業Ingenic Semiconductor社が、ICS搭載のタブレットを2011年12月6日に発売したのだ。SamsungでもMotorolaでもHTCでもなく、世界的にほとんど知られていない中国企業の手によって、世界初のICS搭載タブレットが発売されてしまったのだ。しかも価格はなんと100ドル以下(!)である。

 MIPS Technologiesによると、これに対しGoogleモバイル部門担当シニア・バイスプレジデントで、Androidの父としても知られるAndy Rubin氏が「MIPSベースのAndroid 4.0タブレットを市場に投入することができ感激しています。低コストで高性能なタブレットは、モバイル消費者を大いに獲得することができます。また、Androidのオープン性は、 世界中の消費者に利益をもたらすための技術革新と競争を生み出していることを表しています」と賛辞を贈ったと言うではないか。

 これで、ARMプロセッサでしか信頼のおける製品が存在しなかったAndroidが、現在主要な組み込み向けCPUなら大抵動くということになった。Wintel連合の崩壊は今回の件以外でも予想の範囲内だったが、AndroidがMIPSまでカバーするとなるとこれは想定外だ。実際、Androidの開発動向を見ていると、2011年末よりさまざまな機能が各種プロセッサに最適化される動きが加速している。まさにオープンソースの強みと言ったところだろう。

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