アップルの特許訴訟--HTCが標的になった理由 - (page 2)

文:Marguerite Reardon(CNET News) 翻訳校正:川村インターナショナル2010年03月09日 07時30分

 Nokia、Qualcomm、Texas Instrumentsといった多くのテクノロジ企業が、自社のテクノロジをライセンス供与する企業から利益を引き出すため、特許をめぐる争いを起こしてきた。実際、2009年末にNokiaがAppleに対して訴訟を起こしたのもそれが理由だ。Appleが侵害したとNokiaが非難する特許は、主にセルラーとWi-Fiテクノロジにかかわるものだ。Nokiaは多くの企業にこのテクノロジをライセンス供与しており、それらの特許からかなりの利益が継続して生み出されている。

 しかしAppleは、テクノロジのライセンス供与によって金銭を生み出すことには関心がない。実際、Cook氏がそのことを、先日の同社の株主総会で明確にしている。同氏は、Appleが開発したが実際には販売していないテクノロジのライセンス供与を考慮するかと尋ねられ、Appleは「アイデアのライセンス供与は業務としていない」と答えている。

 Schultz氏はこう言う。「ほかの多くの特許訴訟は、金銭についてのものだ。しかしAppleの場合は、そうではないようだ。一般的に、Appleが開発したテクノロジは、Appleの製品でしか提供されない」

 Appleは確かに、金銭を必要としていない。そして、長い法廷闘争の費用を払うだけの豊富な現金を持っている。2009年12月末の時点で、同社は現金と短期投資で約250億ドルを所有している。同社の株主総会で、この多額の軍資金について聞かれたJobs氏は、Appleは「大きく大胆な」リスクをとるためにこの金銭を保持していると述べた。市場におけるiPhoneの独自の地位を維持するために、費用のかかる特許戦争をしかけることも、確かに「大きく大胆な」リスクだと考えることもできる。

なぜHTCなのか

 AppleがHTCを標的に選んだのには、おそらくいくつかの理由がある。1つには、HTCは、携帯電話機の競合メーカー数社と比べれば、相対的に小さく歴史の浅い企業であり、長期間の法廷闘争のための資金をそれほど持っていない。そして、Appleに対する逆提訴に利用できる特許も少ないだろう。もしAppleが力ずくでHTCのデザインを変えさせ、あるいは法廷戦争に勝利することができれば、Appleはそれを、Motorolaやサムスン、Sony Ericssonといったほかの携帯電話機メーカーに対する有利な手段として利用できるだろう。

 これらのメーカーは、自ら同様のiPhoneテクノロジを使うのをやめるかもしれないし、あるいはAppleが勝利を利用して、さらなる特許争いにおける立場を強化するかもしれない。

 「Appleは、勝てると思う戦いに挑みたいのではないだろうか。こういった訴訟では、よりリソースが少なく、所有する特許が少ない相手を選ぶことが賢明だ。そうすることで、勝利を経験して、続いてほかの企業を追求するのがはるかに容易になる」(Schultz氏)

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