モバイルビジネス環境の根幹に変化を--総務省が競争評価を進める深意 - (page 2)

別井貴志(編集部)2007年11月16日 21時44分

 いまの携帯電話事業やそのビジネスモデルというのは、すべてのプラットフォームを一括して担ってきたというわけだ。そして、プラットフォームの中には、たとえば認証(ユーザーID)での課金という機能もある。この機能というのはこれからコンテンツとネットワーク側を結ぶブリッジになる非常に重要な機能だろうと谷脇氏は考え、これをいかに有機的に連携させて新しいビジネスモデルを作っていけるかということを議論していきたいわけで、そのベースとなるたたき台を作るためのパブリックコメントなのだ。

総務省総合通信基盤局 電気通信事業部 事業政策課長の谷脇康彦氏 「ネットワークが持っているポテンシャリティを最大限発揮できるようにするのはどうすればいいか、みんなで考えるべき時期に来ていると感じている」と谷脇氏

 オープン型のモバイルビジネス環境とは、「携帯電話事業者1者でいろいろなレイヤーにまたがるビジネスを一手に引き受けるという現在のかたち、ワンストップ型のビジネスモデルといってもいいが、これは、非常に利用者の利便性が高いため今まで通りあっていいと思う。しかし、これだけではなくて、オルタナティブなものとして、いろいろな各分野を得意とする経営資源を持ちよって、ビルドアップすることによってビジネスモデルを作っていくかたちがあってもいいということ。つまり、水平的に分業されたものが組み合わさって、1つの垂直的なモデルが作られていくことによって、ビジネスモデルの多様化が生まれ、ユーザーのニーズにより応えられるかたちになっていくのではないか」(谷脇氏)と言う。

 では、そもそもここで言うプラットフォームとは何か。谷脇氏は「エンドユーザーがいて、エンドユーザーにもっとも近いユーザーインターフェースが端末。端末と情報の間にあって、情報を加工したり、コントロールしたりする機能はすべてプラットフォームだ」と考えている。これ以外の部分は、すべて伝送するだけの機能で、これを通信サービスだと定義している。情報を加工したり修正したり、付加価値を付けたりということなので、ここに新しいビジネスが生まれる可能性があり、その担い手というのは、限定された人、事業者ではなく、より多くの人が担うことによってよりポテンシャリティがさらに高まることになるのではないかというわけだ。

 もう少し具体的に考えてみよう。たとえば、プラットフォームの機能というのは、いままで通信キャリアが中心に担ってきた部分がある。例を挙げるとユーザーIDがこれにあたる。このユーザーIDを通信キャリア以外の人も使うことによって、いろいろな情報をひもづけてユーザーを認識しながら収益をあげていくというモデルを作ることができれば、ビジネス機会をより多くの人が担えるようにできるのだ。これによって、マーケット全体が広がり、活性化され、付加価値の高いサービスが生まれる余地が出てくる。

 パブリックコメントに対する期待として谷脇氏は「従来にない視点がぜひほしい。通信のコミュニティ、あるいは従来のネットワーク、サービスに閉じた考え方ではなくて、こういったプラットフォームを使って、どういう新しいビジネスが生まれるかという提案をしてほしい。またどういう連携が生まれ、効果が期待されるのか、という点をぜひお寄せいただきたい」としている。

 パブリックコメントを募集した後は、2007年年内にそれを踏まえて、プラットフォーム市場の現状についてとりまとめた中間的なレポートを出す。これを議論のたたき台にしながら、2008年年明けに研究会を新設し、2008年中にまとめる。さらに、モバイル研究会と同様に具体的にやるべき施策が見えてくれば、これを新競争促進プログラム2010の改訂版(10月23日に発表)にフィードバックして、それを2009年から実行していく。

 新設される研究会は、モバイル研究会のときと同様に核となるメンバーは学識経験者となるが、当然幅広い分野に関係してくるので、その人たちにオブザーバーというかたちで参画してもらう目論見だ。その中には、従来の通信事業者あるいはメーカーの人はもとより、可能であれば金融系や物流系の方がなどにも入ってもらいたいかまえだ。つまり、「プラットフォームを構築するする人、使う人に広く参画いただく。もちろん、ユーザーの皆さん(消費者団体)にも参画いただく必要があるだろう」(谷脇氏)という。

 さらに、谷脇氏は「ネットワークが持っているポテンシャリティを最大限発揮できるようにするのはどうすればいいか、みんなで考えるべき時期に来ていると感じている。なにか強制的に実行するということを前提に考えるのではなく、難しいかもしれないが、みんなでまずアイデアを出してみる。そして、そもそもプラットフォームというものを議論する上での分析の枠組みを明確にして、関係者が同じ共通認識、言葉でしゃべれるようにすることが重要だと考えている。共通の言葉、共通の分析の枠組みを作るということができるだけでもそれだけで非常に意味がある」との発言で深意を締めくくった。

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