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データが創る最良のUX

テクノロジでエクスペリエンスは創れるのか--「Spikes Asia 2015」視察レポVol.2

2016/03/10 08:00
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 2015年のSpikes Asiaでは、「データとテクノロジを活用することで、人々に嫌われない広告を創ることはできるのか」という点について、さまざまなディスカッションが行われた。今回は、いくつかのセッションについて、その内容を紹介しながら、クリエイティビティとデータのカンケイについて考えてみたい。

 中国初というデジタルエージェンシー、Hylink Digital SolutionのCassumbhoy氏は、「最適な情報やコンテンツをリコメンドするアルゴリズムが発達した今日、エージェンシーやマーケターの仕事はプログラマーに奪われるのか?」という問いに対して、

 “データからストーリーや仮説を紡ぐことは人間にしかできない。”

 と強調する。

Hylink Digital SolutionのCassumbhoy氏
Hylink Digital SolutionのCassumbhoy氏

 確かに、データにもとづいて、サイトやサービスの利用者や閲覧者の興味・関心を予測し、パーソナライズされた情報やコンテンツ、あるいは商品を先回りして見せることができれば、より良いユーザーエクスペリエンスを提供する上で、大きな力となるだろう。

 だが、たとえCRMとCookieデータが統合され、人々の行動や興味・関心が多面的に捕捉して収集できるようになったとしても、個々のデータが示すパターンや変化の裏側にある人々の気持ちや気分を正しく読み取れなければ、その上にどんなプログラムを組んだところで、心地よく、快適なエクスペリエンスを創り出すことは難しい。ゴミのようなインプットからは、クズのようなアウトプットしか産み出せないという、GIGO(ガーベージイン・ガーベージアウト)言葉の通りになってしまう訳だ。

 一方で、ディープラーニングや機械学習などのテクノロジを駆使し、これまで人間にしかできないと思われていた「ストーリーテリング」にチャレンジしようという動きも出てきている。

 Spikes Asiaの会場でもちょっと異彩を放っていた“Tech Talks”というコーナーでは、米国のデジタルエージェンシーであるR/GAのスタッフが、“Computational Storytelling” (コンピューターによるストーリーテリング)というテーマで、彼らが開発中のソリューションについてデモを行っていた。

R/GAによるデモの様子
R/GAによるデモの様子

 デモでは、村上春樹の小説『海辺のカフカ』から「ある場合には運命っていうのは、絶えまなく進行方向を変える局地的な砂嵐に似ている。(”Sometimes fate is like a small sandstorm that keeps changing directions.”)」という一節を例に、テキストから映像や音楽を自動で作るアルゴリズムを紹介した。

 アルゴリズム自体は、文章の中から「運命(fate)」「砂嵐(sandstorm)」「進行方向(directions)」という3つの名詞を抽出し、それにあわせた音楽や映像を見せるというシンプルなもので、見せられたデモは、正直、まだまだ発展途上という感は否めない出来映えだった。

 しかし、将来的には、IoTも活用し、利用者の表情や心拍数・血圧といったデータから、気分や感情も読み取り、リアルタイムで、利用者や閲覧者の期待に応えるストーリー創りを目指しているとのこと。もしかすると、あと数年後には、家に帰ると、その時の気分にあわせた音楽や映像が勝手に流れてくる時代が来るのかもしれない。そんな未来を予感させるプレゼンテーションであった。

 クリエイティビティとデータのカンケイは、まだまだ色々な変化や曲折を経ながら発展を続けていくと思われるが、Havas Creative GroupのGlobal CEOであるAndrew Benett氏は、自身の講演で次のように語った。

 “これからのクリエイティビティとは、消費者のブランドに対する期待を正しく理解し、最適なエクスペリエンスを提供するために発揮されるべきである。”

Havas Creative GroupのBenett氏
Havas Creative GroupのBenett氏

 「今あるブランドが消えたところで、74%の人は気にもかけない」。Benett氏は、このような数字を引き合いに出し、「これからは、消費者に愛され、信頼されるブランドになることが求められている。そのためには、データやテクノロジを活用し、消費者との間で、有意義な関係を、よりスマートな方法で構築することが不可欠だ」と強調する。

 データやテクノロジを、賢く取り込み、活用するという人間の知恵があってこそ、人々の期待に沿うようなエクスペリエンスが提供できる。

 2015年のSpikes Asiaからは、そのようなメッセージを感じ取ることできた。

泉 浩人

慶應義塾大学経済学部卒、米国ジョージタウン大学MBA修了。三井銀行、フォード自動車等を経て、オーバーチュア(現ヤフー)の日本進出に参画。2006年にルグランを設立。デジタルマーケティング戦略に関するコンサルティングサービスを提供する傍ら、アドテック東京やCNET等のイベントでも講演。ビッグデータを活用したAKB48選抜総選挙予測が注目を浴び、2014年日本広告学会クリエイティブフォーラムで最優秀賞を受賞。

2008年12月、Yahoo! Googleの検索連動型広告を最大限に活かす『SEM 成功の法則』を上梓。2009年10月にはビル・タンサー著『クリック!「指先」が引き寄せるメガ・チャンス』 を監訳。また、日経ストラテジーをはじめ、寄稿記事多数。

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