「EC売上アップ」のコツ

動画1つで年間売上600%増--Apple製品を粉砕するブレンダーメーカー

尼口友厚(ネットコンシェルジェ CEO)2015年09月01日 08時00分

 凍らせた果物や野菜をブレンドして作る「スムージー」は、食欲が落ちる蒸し暑い季節には特に美味しい飲みものだ。ビタミンやミネラル、食物繊維を手軽に摂取できるというメリットもあり、日本でもすっかり人気が定着した。

 米国では、スムージーブームのおかげで売り上げが急増した商品が2つある。1つはスムージーの材料となる冷凍果実、もう1つはスムージーを作るのに必要なブレンダーである。マーケットリサーチ会社のEuromonitor Internationalによれば、米国でのブレンダーの売り上げは、2009年の5億7190万ドル(約686億2800万円)から、2014年には11億6000万ドル(約1392億円)に増加したという。

 このブームに便乗してシェアを伸ばそうと、米国市場ではいくつものブレンダーメーカーがマーケティングに力を入れている。たとえば、SharkNinjaはテレビCMを大々的に打っている。Vitamaxはコストコなどの大型実店舗で定期的に実演販売をしている。どちらもキッチン用電化製品のマーケティング手法としては定石と言えるだろう。


「Blendtec」

 一方、低予算で作成した“型破りなYouTube動画シリーズ”で勝負をかけ、見事な成果を上げたブレンダーメーカーがユタ州に存在する。その名は「Blendtec」。

 一般にはほとんど存在を知られていない企業だったが、動画を使ったマーケティングによって、同社の家庭用ブレンダーは実店舗での売り上げが10倍、ECサイトでの売り上げは6倍、年間売り上げは600%も伸びたという。

価格より「価値」を優先した品揃え

 Blendtecは、1975年にオーナーであるトム・ディクソン氏が創設した家族経営の企業である。当初はディクソン氏が開発した小麦や大豆などを製粉する機器を専門とし、「ウィリアムズソノマ」などの高級小売店に卸していた。

 やがてディクソン氏は製粉機の開発と改良で培った技術を応用し、ブレンダーを開発。1975年に最初のモデルを発売して以来、ブレンダーがBlendtecの主力商品となった。現在は以下の10種類のブレンダーを販売している。


Blendtecのブレンダー

 どのモデルも耐久性抜群、高品質、高性能であること、米国国内で設計して生産していることがセールスポイントになっている。保証期間も8年と長い。しかし、その分価格も高めだ。一番安いモデルで279.95ドル(約3万3600円)、最も高い商用モデルになると1034.95ドル(約12万4200円)もする。

 Amazonでは、次のような60ドル(7200円)以下のブレンダーがよく売れていて、評価も上々だ。


Amazonで販売されているブレンダー

 Blendtecの製品がいくら高性能であっても、これだけ価格に差があると、一般の消費者の購買意欲を誘うのは容易ではない。

 そのためECサイトを開いた後も、Blendtecの顧客は一般消費者ではなく、レストランのシェフやスポーツチーム専属の栄養士など、仕事の場でブレンダーを多用する人たちが大半だった。同社のマーケティングもトレードショーでの実演販売に大きく依存していた。

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