スマホ×TV「ダブルスクリーン施策」の新潮流(前編)

新野文健(カケザン)2014年08月11日 07時00分

 この連載では、企業でのアプリのプロモーション活用から、スマートフォン広告で重要な位置を占めるテクニカルな運用型広告、メディアやアプリ・マーケットなどの市場環境を含め、“デジタルマーケティングの今”をお伝えする。

 今回と次回はバスキュールのプロデューサー古川裕子氏を迎え、スマートフォンを活用したダブルスクリーンなどをテーマとした対談をお送りする。


カケザン Chief planner/クリエイティブ・プランナー新野文健と、バスキュール プロデューサー古川裕子氏

生番組の投票にスマートフォンで参加

新野:カケザンはD2Cグループの中でもモバイルマーケティング戦略に特化している会社です。世界的に見れば、ご存じのように、スマートフォンをハブとした統合マーケティングへの注目度が高まっています。しかし、日本は世界の中ではまだまだテレビの力が強い国。そこで今注目されているのが、スマートフォンなどスマートデバイスとテレビを同時に活用するダブルスクリーン、あるいはセカンドスクリーンというコミュニケーション手法でしょう。

古川:バスキュールは、もともと広告プロモーションに関するデジタルコンテンツの制作をメインに行ってきました。2012年夏頃から、テレビ番組とスマートデバイスやPCを連動させたダブルスクリーン、セカンドスクリーンの企画のご相談をいただくようになり、今では、その関連の仕事が非常に多くなってきました。

  • 古川裕子氏

 たとえば、フジテレビの映像クリエーター発掘プロジェクト「THE LAST AWARD」では、第1弾「フジテレビの1日の最後に流す1分の映像」、第2弾「ペプシ NEXT ZEROが飲みたくなるようなショート・フィルム」のテーマで映像作品を募集し、有名クリエーターと視聴者が一緒になって作品を審査する番組を実施しました。

 視聴者がテレビで作品を見ながらスマートフォンで点数を入力するシステムを提供することで、審査員と視聴者が同時に審査できる仕組みを作りました。

 結果はリアルタイムで集計して発表されるので、集計が終わるまでどの作品がグランプリに選ばれるのかわからないこともあり、テレビの前の視聴者と同じように、私達スタッフもドキドキしながら集計結果を待ちました(笑)。

新野:ドラマと連携した企画もありましたよね。

古川:TBSで2013年のクリスマスイブにオンエアされた「マッチング・ラブ」ですね。テレビを見ながら自分と同じ恋愛観の“運命の相手”を見つけられるという、視聴者参加型の恋愛マッチング番組です。

 視聴者は番組で流れる恋愛ドラマを観ながら、スマートフォンやPCで公式サイトにアクセスし、主人公と同じタイミングで、恋愛に関する15の質問に回答していきます。たとえば、「はじめてのデートで行くなら……安くて美味しい居酒屋? 話題のオシャレなレストラン?」といった恋愛の価値観を問う質問。最後まで同じ選択肢を選び続けた異性がいたら、晴れて“マッチング”成立となり、手元の画面にその運命の相手の顔写真が表示される仕組みです。深夜の放送にもかかわらず、60万人以上の方々にご参加いただきました。

新野:60万人とは結構な人数だと思いますが、そこにソーシャル的なCtoCの要素を取り込んだわけですね。ゲーム性を取り込んだ企画などはいかがでしょうか。

古川:「ゲーム性」という点で一番評価をいただいているのは「BLOODY TUBE」ですね。昨年の6月にBSジャパンで放映された番組で、カンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバルのモバイル部門でゴールドを受賞しています。


「BLOODY TUBE」

 セミヌードの壇蜜さんの身体に、3Dプロジェクションマッピングで「血管」に見立てたコースを投影し、血液型対抗レースを行いました。参加者はスマートフォンで公式サイトにアクセスして、ニックネーム、性別、血液型を入力した後、レースに参加します。番組の進行に合わせてスマートフォンの画面が自動で切り替わり、テレビ画面上に流れてくる4色のブロックを、手元のスマートフォンで正確にタッチするとポイントが与えられるという仕組みです。単純なゲームだったのですが、リアルタイム性のある斬新な演出が、今までに体験したことのない新しいエンターテインメントとして評価をいただきました。

 番組の最後には、参加者のニックネームをランキング表示したり、優勝チームの成績上位者には、賞品として「100万Pontaポイント」を山分けする取り組みも行っています。

  • 新野文健

新野:昔からテレビとの連動企画として電話を使うものがありましたが、やっぱりスマートフォンが普及したことで、まさにセカンドスクリーンという、手元のスクリーンの中がリアルタイムで変わっていくといった体験が提供できるわけですね。番組終了後に番組からメッセージを配信するなどもできるんでしょうか。

古川:できます。今までお話しした番組は、すべて弊社で独自に開発した視聴者参加型番組用のプラットフォームシステム「M.I.E.S.」を使用しています。M.I.E.Sは、パーソナライズ機能を搭載しており、番組に参加するときにニックネームや年齢、性別などを登録すると、そのセグメントや特定の方の端末に対し、リアルタイムで情報を表示できます。先ほどの「BLOODY TUBE」の場合は、「この血液型の人にはこのメッセージを出す」といった演出を実施したところ、とても好評でした。

新野:デジタルによって“いつでも、どこでも”コンテンツが楽しめるようになったわけですが、リアルタイムで、みんな一緒に楽しむといった体験の価値もありますよね。昔で言えば、ボードゲームをやる楽しさといったものはあるし、ネット上でもソーシャルゲームをリアルタイムで協力してやるといった楽しみもありますしね。

古川:ダブルスクリーンによってテレビ番組に付加価値を付けることで、視聴率を高める施策としても評価されてきていると感じます。ライブなどでもスマートフォンを連携させる事例は出てきていると思いますが、結局は、みんなで一緒に体験する楽しみといったものが、人は好きなんだと思います。

新野:検索のクエリでも、テレビの放送と連動してホットワードやタレントの名前などが、必ず上位にきます。やはり、テレビのリーチや影響力は強力だと改めて感じますね。

古川:もともと、このようなことは、ユーザーが掲示板やTwitterのハッシュタグを使ったりして、自発的にやっていたことなんですよね。そこを、今は放送局などのサプライヤーサイドが場を提供したり、仕掛けを提供するようになってきたわけです。

【次回に続く】

(執筆:カケザン Chief planner/クリエイティブ・プランナー 新野文健)

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