朝日インタラクティブは12月7日、先進的なマーケティング戦略を実践している担当者とマーケティング戦略を経営に活かして実績をあげている企業を表彰し、またデジタルマーケティングの最新事例を紹介する「CNET Japan CMO Award & CNET Japan Conference 2016」を開催した。
「顧客の動きで見えてきた、今やるべきマーケティング」と題した講演では、日本オラクル マーケティング・クラウド本部ビジネスディベロップメントのディレクターである渋谷由貴氏が、企業のマーケティングコミュニケーションが目指す理想像として、“ユーザーエンゲージメントの3原則”を紹介した。
企業と顧客の関係は、ファーストコンタクトから始まり、エンゲージメントを育み、コンバージョンが生まれ、ロイヤリティを醸成して関係を深めていく。長い時間を掛けて成長させていく必要がある。
この点について渋谷氏は、「オラクルでは、マーケティングの負うべき責任範囲は広い。新規獲得だけでなく、クロスセル、アップセル、リテンションなどビジネスの拡張すべての要になっているのが、マーケティングによるエンゲージメントの構築だ」と語る。加えて、「マーケティングにおけるエンゲージメントは、“おもてなし”だ」と語り、このおもてなしを実現することが企業のマーケティングコミュニケーションが目指すべき理想であると指摘した。
では、この“おもてなし”を実現するマーケティングコミュニケーションはどのように実現するのだろうか。渋谷氏はこれを“エンゲージメント3原則”にまとめて紹介した。つまり、顧客ひとり1人に対して、(1)最適なメッセージを、(2)最適なタイミングで、(3)最適なチャネルで届けることが不可欠だという。この3つのステートメントは、マーケティング担当者であれば誰もが知っている“当たり前のこと”だ。しかし、あえてここで渋谷氏が提言したのは、その“当たり前”が実践できていないことに他ならない。
「この3つの原則を全て満たしてマーケティングコミュニケーションを実践できている企業はどれくらいいるだろうか。さまざまなテクノロジや手法が生まれているものの、この3つの原則を実現できていると自信を持って言える企業はいないのではないか」と渋谷氏は語る。では、なぜこの“当たり前”が実践できていないのか。渋谷氏はデータをもとにマーケティングコミュニケーションの現実を紹介した。
米国の調査会社のリサーチによれば、自分の興味関心や関係が薄いメッセージが送られてきたことで、送付元の企業とのコミュニケーションを断ったという人は、96%にも達するのだという。また別の調査では、適切なターゲティングによって顧客にコンタクトができていると自信をもって言えるという企業は、わずか11%に留まるという結果もあった。つまり、ほとんどの企業のマーケターは、適切なターゲティングをしてユーザーにメッセージを送信しているという確信が持てないまま、マーケティングコミュニケーションを行っていることになるのだ。
「この要因としては、ユーザーが複数のデバイスを活用していることやオフライン・オンラインの混在が激しく、顧客管理の一元化が難しくなっているという状況が挙げられるのではないか」(渋谷氏)。
加えて、“マイクロモーメント”と呼ばれるように、人々は毎日膨大な量の情報を処理する中で生まれたインスピレーション(商品への興味関心)を元に、ちょっとしたスキマ時間でも調べものを行い、商品購入の検討やアクションを行う。
渋谷氏は、「こうした環境で企業は、ユーザーが興味関心を持ったタイミングを狙い、その瞬間に生まれたニーズに合った新鮮な情報を、最適な手段で提供することが、マーケティングの成否を分けることになる」と指摘する。マイクロモーメントにおける顧客とのコミュニケーションで競合他社にどのようなアドバンテージを生み出せるかが、ビジネスの勝敗を分けることになるのだ。
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